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おんりめもり-only the momery-  作者: Ppoi
only the momery
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15/25

Only the memory 15~マザーのビデオ~

それは、いきなり始まった。

赤いランプが点滅しているのが画面上でわかる。追い詰められた女性の顔が赤いランプに交互に照らされる。ブーブーという耳障りな警報音が後ろで流れ続けている。


私のことは、マザーとでも呼んでください。

何かの物語で、暴走した人工知能の名前だったように記憶しています。今の私は、そのマザーよりも混乱しています。


きっとこれを見ている貴方は、私の子孫でしょう。


いつ償えるかわからない私の罪を償うことを押し付けることをお許しください。


唐突に始まる画面。

最初の言葉は、懺悔のようだった。


時間がない。完結に話す。


私の愛する夫は信頼していた友に後ろから撃たれ先ほど死んだ。


だから、二人で進めていた研究の成果を世界中にばらまこうと思う。


それは、私一人の意思で決めてなどいいことではない。


だが、許せない。夫が何をした。


偶然、忘れられる薬を開発しただけだったのだ。


それなのに、そのせいで夫は撃ち殺された。


命を奪われるほどの罪ではないはずだ。


私も愛する大事な人を奪われるような罪を犯したことはない。


彼女の目には赤黒い炎が宿っていた。


私がばら撒いた、忘れるウィルスの病原体が、貴方たちから記憶を奪い続けているころだろう。もう、ばら撒かれた後だから、私には、もう、どうすることもできない。

忘れれば、対策をとることができないだろう。世界中に広がり、今はもうどうしようもない状態になっているはずだ。


道を残そう。


貴方たちが選択できることは二つ。


一つはこのままの現状維持。

貴方たちにとっても楽だし、私はこれを望み続ける。


もう一つは、この忘却病に感染しない人が必ず出てくる。マウスを使った実験でも、罹患していないマウスが何億分の一で生まれていた。その人が現れたら、血液を用意してあるキットに血を一滴垂らしなさい。血清ができる。忘却病を克服することができる。ただし、これは、現段階での忘却病への対策にしか過ぎない。時間が過ぎれば過ぎるほど、ウィルスは成長し、進化する可能性がある。現段階では全て憶測だけど。その人の体質にも影響して、効くか効かないかはわからない。実証データがないから。効かないどころか、死に至る場合もあることを忘れないで。


私は、自分の信じる選択をした。後悔はない。

だが、それは、貴方たちにとっては、過去のこと。


貴方たちには未来を選択する権利がある。


これを見た貴方は、もしかして、覚えていられる人かもしれない。


であれば、私は貴方に謝らなければならない。


自分の感情だけで、貴方に未来の選択を委ねる狡い人間だから。


貴方はどう思った?


この世界はこのままがいい?

私の想像でしかないけれど、その世界は平和ではない?変える必要はある?


この世界は元に戻った方がいい?

元に戻り、人は裏切り、戦い、いがみ合い、領土や富を奪い合い殺し合い続ける状態に戻った方がいい?


選択は貴方に委ねる。

許してほしいとは言わない。私は悪でいい。

でも、現実は貴方の前に確実に選択を迫るはず。


幸運を。


画面はそこでブチっと切れた。めもりは、今みたビデオが衝撃で動けなかった。


「実際に、監視カメラの映像が残ってたけど、ばら撒いたのは、彼女じゃないかった。彼女の夫が友人に撃たれた際、病原体の原液が入った試験官を持ってた。撃たれたから、試験官は落ちて割れた。彼女は何もしてない。この映像を残しただけ。友に裏切られ夫を撃たれたことを受け入れられなかったのかも」


ビットは冷静にビデオをみていた。フォーカス家の誰かが必死で探したであろうその場面の監視カメラの映像をみていた。病原菌をばらまいたのがマザーではない、病原菌原液のの試験管が撃たれた際に割れた、撃った人物がスーパー・スプレッターであったのでは、という記述もある。


それ記述を読んだカレンは涙をこらえて言った。


「彼女は救世主だった。この血清を作るキットだって、彼女が研究していた。そして、忘却病にかかる前に希望を残してくれた。私は、先祖のしたことの責任をとらなければならない」


「メモリ、あなたはどうする?」


 カレンの瞳は強い光を宿していた。


「この世界を、マザーが生きていた頃に戻す?」


 めもりは狼狽していた。


「時間……時間をくれないか?」


「私は構わない。どうせ12時には忘れる。私をほおっておいて。貴方のことも、忘れさせたままでいて。貴方の意思が決まったら、さっきのビデオを見せて」


 ああ、今の世界はこういうことなのかと思った。


 辛くて悲しいことを次の日に持ち込まない。


 覚えていない、ということはどうしてこんなに便利なんだ。


 きっと、マザーは幸せなまま死んだに違いない。


 友に夫を撃たれた事実を忘れ、穏やかに息を引き取ったに違いない。


「俺には、何が正しいかわからない。俺が決めていいとは思えない」


 めもりの決断によって変わるのは忘却病にかかった人達の未来だ。それは、とてもたくさんの人の未来が変わるということだ。それは、めもりには抱えられるようなものではない。

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