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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第1章 土鬼族の村編
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第8話 事件後~再建へ

妖精族(エルフ)襲来から一夜。

土鬼族は漸く落ち着きを取り戻し始めた。

しかしその被害は小さくなかった。

150名程の村人の内、34名が死亡、40名が負傷した。

ほぼ半数が死傷したのである。

家々も大部分が破壊され、生活が元に戻るのにはかなり時間が掛かるように思えた。


「リディ殿ガ来テクレタオ陰デ、コノ程度デ済ンダノダ。感謝サセテ頂コウ。」

それでも土鬼族の長は礼を言ってくれた。

ただ所々に傷を負っている姿は痛々しい。


「ソレト、人族ノ皆サンモ我ガ村ノ為ニ働イテクレタ。アリガトウ。」

長が魔導士達に頭を下げた。

「頭を下げるのはやめてください。俺達は貴方達に世話になってるんだ、当り前の事をしただけです。」

「だが被害は大きいよな…。生活再建は大変だぜ…」


「それなら僕に提案があるのですが…」

一同が声がした方を振り向いた。

それは船が難破した時に重傷を負っていた男だった。

彼は杖を突けば歩くことのできる程度には回復していた。

「提案トハ?」

「はい、実は…」


彼が言うには…


妖精族(エルフ)が攻めて来た時かつて人間が住んでいた町の跡に避難したが、修復すれば住めそうな建物があったとの事。

自分は建築の知識があるから、人手さえ借りられれば役に立てるだろう


要約するとこのような感じだった。


なるほど。

土鬼族の家は非常に粗末なものだったし、もしこれから生活を再建し一族の発展を目指すのなら、本格的な街づくりを目指しても良いのかもしれない。

「ホウ! ソレハ興味深イ。ドノミチ村ヲ再建スル必要ガアッタノダ。ヨシ、手ハ何トカシヨウ。ソナタニ指示ヲ任セテモ良イカ?」

「勿論です。喜んでやらせて頂きます。」

彼の事は“建築家”とでも呼ぶとするか。

建築家は長とがっちりと握手しながら答えた。

その日から土鬼族は協力して復興に向けて動き始めた。




数日後、ボクは長に呼ばれ教会跡の建物を訪れた。

この建物はさほど壊れておらず、長はここを村の役場兼自らの住居と定めた様だ。

「オオ、リディ殿。」

長は笑顔で出迎えてくれた。

動ける男衆は復興作業に出掛けていたためここにいたのは長とその妻、そしてヒスイだけだった。

「ボクをお呼びとは、いったいどのようなご用向きですか?」

「ウム、マァソコニ掛ケテクレ。」

「はぁ…」

長に促され、ボクは近くの椅子に腰掛けた。

「リディ殿、儂ハ一族ヲ代表シテ頼ミガアッテナ。」

「頼み…ですか?」

「ウム。コノ度ハリディ殿ヤ人族ノオ陰デ、妖精族(エルフ)ノ侵略ヲ撃退スルコトガ出来タ。」

長はそこまで言うと腕を組んだ。

「ダガ我ラハ人鬼(ホブゴブリン)トハ言エ、妖精族(エルフ)ヤ他ノ種族ニ比ベレバ矮小ナ種族ニ過ギヌ。」


…まぁそれはそうだろう。

例えば彼らの実力は、妖精族(エルフ)1人に対して5人で掛かって何とか倒せるかどうかという感じだ。

この前の侵略は妖精族(エルフ)が“遊んでいた”からボクが間に合った過ぎない。

「ヒスイハ人鬼(ホブゴブリン)トシテハ高イ実力ヲ持ツガ、ソレハ我ラニ敵対シナカッタ人間ニ剣技ヲ教ワッタカラデナ…」

「え、剣技!? その人木こりじゃなかったの?」

「アア、ソノ人間ハ剣デ木ヲ斬ッテオッテナ。自分ノコトヲ木コリト言ッテイタ。」


ボクは目を丸くした。

えっと、それは木こりとは呼ばないような…。

剣を使う木こり、とはいったい…。


「話ヲ戻ソウ。ソレデリディ殿ヘノ頼ミナノダガ…」


ああ、そうだ。

頼みとは何だろう?


「リディ殿、我々一族ノ守護者ニナッテ貰エナイダロウカ?」

「え、え? 守護者ってどういうことですか?」

「強イ魔族ハ、例エバ魔王ノヨウナ者ハ、多クノ魔ノ者ヲ従エルト聞ク。魔ノ契約ヲ用イ隷属サセルガ、従ウ方モ、主ノ魔力ニヨリ強化サレル。我ラガ一度、妖精族(エルフ)ヲ頼ッタノハソノタメダ。」


なるほど。

土鬼族は妖精族(エルフ)と何らかの契約を行い、小鬼(ゴブリン)から人鬼(ホブゴブリン)に進化したのだ。

だが高潔な妖精族(エルフ)は彼らから見たら下賤の者である土鬼族を、麾下とは見なさない中途半端な契約を結んだのだろうな。


「だけど族長様。ボクは魔族ですが魔王なんかじゃありませんし、隷属の契約なんて知りませんよ…」

これは嘘ではない。

確かに幽霊(ゴースト)と“共生”の契約を結んでいる。

その幽霊(ゴースト)はボクの体と同一化して、体の中に存在しているのだ。

「それにボクは誰かを従えると言うのは好きじゃありません。確かに敵を脅かすときはありますけど…。ボクや人間たちに救いの手を差し伸べてくれた土鬼族は友人だとは思っていますが、下に見る事なんてしたくありません。」


「だったら、アンタは土鬼族と“友人の契約”を結んじまえばいいんじゃねえか?」

入口の方から声がした。魔導士だった。

「っと、急に口を挟んで失礼をしました。族長殿に工事の進捗の報告に来たのですが、何やら込み入った話をしてたもんでつい…」

魔導士が頭を掻きながら言った。


“友人の契約”か、そんなものは聞いたことが無い。

まぁでも共生の契約の術式を少し変更すれば、もしかしたら出来るかも知れないな。


「分かりました。それならやってみるのもいいかもしれません。」

「オオ、本当カ? ヨロシク頼ム。」


友人となるには本来契約なんて必要が無いものだ。

だからそれをやることでどんな効果が得られるかなんて分からない。


「おっと、リディさん。それは俺達人間も入れといてくれよ? 俺達もグーンと進化しちまったりしてな。はっはっは!」

魔導士が笑いながら言った。

「いや、君みたいなのはお断りだよ。進化は自分の力でどうにかしてくれ。」

「はっはっは。連れねえなァ、アンタは。それじゃ、工事の報告はまた後にしておくぜ。じゃあな。」

魔導士は手を上げると建物を出て行った。




こうしてボクは土鬼族と“友人の契約”をすることになった。

うーん、こう書くとボクは友人が少ないみたいに思われるような気がする…。




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