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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第1章 土鬼族の村編
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第7話 妖精族来襲(3)

魔導士の頼みを受けてから5分間。

ボクはヒスイ達、土鬼族と防戦を続けた。

戦いの中では極力戦えない土鬼族の村人に被害が無いように努めたが、それでも無傷という訳には行かなかった。

「ヒスイ! 右だ!」

「ク…!?」

ヒスイの腕を敵兵の剣がかすめた。


まだか?


向こうではまた一人、村人がやられた様だ。

あまり長く持ちそうにない。


そう考えながら妖精族(エルフ)に相対し一人を切り伏せた、その時だった。



…ゾク!



背筋に寒気が走った。

後ろを見ると、魔導士がこちらに向けて杖をかざしていた。



「全員伏せろ! …神の電撃魔法(ディバインズボルト)!!」



魔導士がそう叫ぶと、空から無数の雷が落ちて来た。



「い、いい!?」

ボクは声にならない声を上げると、近くにいたヒスイに覆いかぶさりながら身をかがめた。

土鬼族の面々も、何とかその場に身を伏せることが出来た様だ。


虚を突かれたのは妖精族(エルフ)軍である。

雷が直撃した者は文字通り、消し炭と化した。

それを免れた者も強大な電撃を至近距離に受けその場に倒れていった。

先程の指揮官の男などの高位の者は高い魔力を活かした魔法障壁を展開し身を守っているようだが、目の前で繰り広げられる惨事に、その表情は呆然としたものだった。



…酷い魔法だ。

何故あの魔導士が神級魔法を扱えるのかは謎だが、ここまでくると相手方に同情する。

300名程いたであろう妖精族(エルフ)軍は9割が死亡あるいは重傷を負い戦闘不能になったであろう。

生き残っているのは指揮官クラスもしくは運良く雷を防ぐことが出来た者だけだ。



「こんな…、馬鹿な…」

妖精族(エルフ)の指揮官の男は表情を歪めた。

眼前で起こった事象が理解出来ない、そういう顔である。

「に、逃げましょう。これは、もう駄目です!」

傍らでは副官が狼狽えた様子で進言した。

「わ、分かった。退却だ!」

指揮官の男が震えながら号令した。



ボクはその様子を見逃さなかった。

妖精族(エルフ)達に大打撃を与えたのは間違いないが、それ以上に灸を据えておく必要がある。

「ヒスイ、奴等は退却する様だ。君は怪我人の救助を頼む。」

ボクはヒスイの頭をポンと叩くと、両足に力を込めた。


ドン!

ボクは敵に向け駆け出した。

妖精族(エルフ)達の逃げていくスピードも中々速いが、部分的獣化で加速したボクが追いつけない訳がない。

ボクは見る見るうちに距離を詰め、礼の指揮官の男の背後に迫った。


「やぁ。挨拶も無しにお帰りかい?」

ボクは指揮官の耳元で囁いた。

「ヒ…!?」

指揮官は驚きのあまり躓き、その場に倒れた。

ボクは指揮官の服の首元を掴んで引き起こした。


「き、貴様は…!」

指揮官はボクから逃れようとした。

だが逃れられない。

「し、指揮官殿!」

妖精族(エルフ)が数名振り向いた。


「おっと、動くなよ。…さて、妖精族(エルフ)の指揮官殿とやら。」

ボクは軽く指揮官の服を引っ張り、首元を絞めた。

「グ…、貴様。妖精族将軍(エルフジェネラル)の私に、こ、この様な事をして、ただで済むと…」

指揮官は苦しそうに言葉を絞り出した。

「ほう、お前、結構階級が高いんだな。」

ボクは一端襟元から手を放し、今度は首を掴んだ。

魔力を込め爪を鋭利なモノに変えたため、爪が指揮官の首に食い込んだ。

「お前達は身勝手な理由を振りかざし、土鬼族を滅ぼさんとした。先程起きた厄災はその報いだ。」

指揮官は尚も逃れようと必死の抵抗を見せた。

しかし部分的獣化状態のボクの手を振りほどける訳が無い。

妖精族(エルフ)の兵達は遠巻きに眺めているだけだ。

「お前は今置かれている状況が分かっていないようだな? ボクがもう少し力を込めれば、お前の首は簡単に折れてしまうだろう。それにお前の部下達が束になって掛かって来たとしても…」

ボクは目を金色にさせ、指揮官を睨んだ。


これは見た目だけで、魔眼は発動させていない。

実は魔眼と部分的獣化は両立できないのだ。


「土鬼族を守りながら戦う状況でなければ、楽に一蹴できる自信はあるんだよ。」

「ひ、ひい…!?」

指揮官はあからさまに震え始めた。

「や、やめてくれ。助けてくれ!!」

それを見た兵達もその場に膝をついた。

観念したのだろう。

「良いだろう。ボクはそこまで鬼では無いからな。速やかに武器を捨て、里に帰るが良い。そして、お前達の上役にこう伝えるんだな。」


ボクはおほんと咳払いした。

こう言うのは出来るだけ悪そうに言うに限る。


「我が名はリディ・ベルナデット・ウイユヴェール。かつての魔王、ウイユヴェールに連なる者である。もしまた土鬼族を蔑ろにするならば、我が力全てを持ってして相手になろう。覚悟するが良い。」


勿論ハッタリである。

昔の魔王の血は引いているが、化け物じみた力を持っているつもりは無い。

しかしプライドをズタズタにされた妖精族(エルフ)達を脅かすには、『魔王の連なる者』というフレーズは効果てきめんだ。

まさに会心の一撃である。


「わ、分かった! 必ず伝える! だから助けてくれ!」

指揮官が懇願した。

部下達も武器を捨て、その場にひれ伏した。


それを受け、ボクは指揮官の体を投げ捨てた。

そして悠然と妖精族(エルフ)達を見下ろした。

妖精族(エルフ)達は、まさに一目散に逃げだしていった。



こうして、妖精族(エルフ)来襲事件は幕を閉じたである。


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