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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第1章 土鬼族の村編
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第5話 妖精族来襲(1)

『食事会』以来、土鬼族の村では人間と村人の交流が進んだ。

村人達は積極的に話しかける様になり、船員達もそれに応えて色々な事を教えた。

それにより“魔物”であった筈の彼等、土鬼族の中に文化が芽生えていったのであった。



しかし、その日は突然やって来た。



その日、ボクは村の外に出ていた。

「この向こうに薬草が生えているの?」

「アア。オレタチガケガヲシタトキニ、スリツブリテヌルクサガアル。」

ボクはヒスイの案内で薬草を集めに来ていた。

船員の内の一人のケガは少しずつ快方には向かっていたが、より早く治癒させるためには良い薬が必要だと判断したのだ。

かつてノワールコンティナンからの船で旅していたころ、同じく船に乗っていた冒険者から少しだけ薬学について教わったことがある。


「ココダ。ソノクサガ、オレタチガケガヲナオスノニツカウ。」

「うーん…」

ボクはその草を手に取った。

これはオトギリソウに似ているようだ。

オトギリソウであれば煎じた液を傷薬にすることが出来る。

「よし、これを持っていこう。」

フェルディナンがいればすぐに判断できるんだろうけどな。

そう考えていたその時である。



遠くで何やら音が響いた気がした。



ボクは音のした方を振り向いた。

村の方向だ。

魔族であるボクの聴覚は、人のそれより優れている。

「ヒスイ、村の方で何か起こっているようだ。」

「ナンダッテ!?」

ヒスイには聞こえていなかったようだ。

「いち早く戻る必要がある…、ボクの背中につかまって!」

「ア、アア…!」

ヒスイがつかまったことを確認すると、ボクは目を瞑った。

…脚部に力を集中させる。



部分的獣化!



獣化は獣人固有の能力(スキル)である。

本来であれば使えるものでは無いがボクの大切な人であった獣人(カール)が死んだ時、

その遺髪を、ボクが使役していた幽霊(ゴースト)に取り込ませた。

そしてその幽霊(ゴースト)と共生契約を結んだことにより、獣化能力の一部を手に入れたのである。

もちろん、一部であるから獣人(カール)のそれよりも身体能力の上昇は大きくない。

だが魔族の血を引いていたのが幸いしたのか、元々持っていた潜在能力を発揮するには十分なものだった。


ボクはヒスイを背に乗せ、村に向かって駆けた。

「ハ、ハヤイ!?」

ヒスイは振り落とされまいと、必死にボクの背中にしがみ付いていた。



10分程で村まで戻ってくることが出来た。

「こ、これは…!?」

村の所々には火の手が上がっていた。

何者かが襲撃してきたのだろう。



「リディさん!? 戻って来たのか!」

料理人が声を掛けて来た。

「一体何が起きてるんだ!?」

ボクはヒスイを下ろし、料理人の肩を掴んで問いただした。

妖精族(エルフ)の奴等が襲撃してきたんだ! 怪我人はもう森の方に運んだ。今は村の女子供を逃がしている最中だ!」

「エルフガセメテキタダッテ!? ドウイウコトナンダ!!?」

ヒスイが震えながら叫んだ。

「分からねえ。今は魔導士や族長様、そして村の男衆が食い止めているが…。奴等数が多いぜ。」

料理人が苦渋に満ちた表情で言った。



妖精族(エルフ)が攻めて来た理由、そんなものは今はどうでも良い。

今はこの村を守るために行動することが先決だ。

「ヒスイ! ボク達も行こう。君は戦えるだろう!?」

ヒスイはボクの“後ろ”を取った程の腕前だ。

戦力と見ても良いだろう。

「アタリマエダ。オレハタタカウチカラヲモッテイル。エルフノヤツラノスキニハサセナイ。」

「よし。…料理人、ボク達は行くよ。君は引き続き、戦えない者達を逃がしてくれ!」

「ああ、任せておけ!」

料理人と別れ、ボクとヒスイは戦いが繰り広げられている場を目指した。

道中に目を遣ると、決して綺麗だとは言えないが見慣れていたはずの家々が破壊されているのが見えた。



妖精族(エルフ)は何故突如襲撃してきたのだろう?

いや、前述の通り理由などどうでも良い。



ボク達に親切にしてくれた土鬼族の村を襲撃してきた彼等(エルフ)を許すわけにはいかない。



目の前には土鬼族を攻撃する妖精族(エルフ)の兵が見えて来た。

その様子は手を抜いて攻撃しているように見えた。

土鬼族も必死で防戦をしているが、まるで弄ぶような攻撃の仕方だ。

本気を出せばあっという間に決着が着くのだろうが、土鬼族を苦しめるためにわざとそうしている感じだ。


その中、一方後ろの位置で勝ち誇ったような表情の男が一人。

他の兵よりも明らかに位が高そうだ。

恐らくこの男が妖精族(エルフ)の指揮官なのだろう。



まずは妖精族(エルフ)の攻撃を遮らなければならない。

ボクは左手を剣に掛け、ぐっと力を込めた。

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