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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第4章 侵入、エルヴェシウス教国
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番外編 “異世界”ハッピーハロウィーン

この番外編には前作『俺・プリンセス』の登場人物が出てきます。

そちらをお読みになりますと話をよりご理解いただけるかと思います。


よろしくお願いいたします。


“異世界”と言えば通常ファンタジーな世界に飛び込む、と言うものである。

だがここで言う“異世界”と言うのはそう言うものでは無い。

そう、これはボクが見た夢だ。

これは最初で最後の、かつての仲間との邂逅であった。




アンピプテラとの戦いの後、ボクは3日間に渡って眠り込んでいたらしい。

その間、ボクはずっと夢を見ていた。

いや、あれは夢だったのだろうか?

ある意味、魂だけの“異世界転生”だったのかもしれない。




「ん…」

“目が覚めると”、ボクはベンチに座っていた。

周りは全く見慣れない風景だった。

多くの家々が建っているのだがその建築様式は全く見た事が無い。

ここはいったいどこなのだろう?


ボクはよろよろと立ち上がって歩き始めた。

石造りの様な道を歩くと、そこには驚きの光景が待っていた。



「な、何だあれは…??」

ボクは呆然とした。

何と、広い道を鉄の車が走っていたのだ。

その車は馬が引いている訳でも無いのに、それも見たことの無いスピードで…。

あれに当たったらヤバそうだ。

道の端っこを歩こう…。



暫く歩くと、人が沢山いるところまでやってきた。

どうやらこの町は人族が支配するところのようだ。

魔族のボクが歩き回っても大丈夫だろうか?

町を歩く人は時折変わった目で見るような者もいたが、特に騒ぎ立てられることも無かった。

あとで知ったのだが、この町ちょうどは「ハロウィーン」と言う時期だったらしい。

ボクの恰好はその仮装の様に見えたのだろう。


この町を行きかう人々は、ボクが全く知らない言語を話しているようだ。

だが何故か頭の中に彼等の“言葉の意味”が流れ込んできた。


『な、なあ! あの顔が青白くて、仮装している子可愛くね?』

『お、おう。一人みたいだし声掛けるか?』

どうやらこの男二人組はそのような事を言っているようだ。


「・・・」

ボクは顔をしかめた。

どこにでもこの様な人はいるものだ。

ボクは二人組を無視し、更に歩を進めた。



暫く進むと飲食店が数件立ち並ぶような所までやってきた。


『今日もいたな。あの赤い髪の子。』

『ああ、あの子可愛いよな。』

若い人族の男達の会話が聞こえてきた。


赤い髪の子??


『ただちょっと胸は小さいけどな。』

『でも笑顔が可愛いし、話してて楽しいからいんじゃね?』


この町の男どもはどうも…。

でも赤い髪で胸の小さい女の子ってまさか…!?

言葉が通じれば話し掛けても良いのだが…。


この男達は視線の先にある飲食店から出てきたようだ。

その赤い髪の女の子はここにいたのだろうか。

よし、ちょっと入ってみようか。

ボクはお店の扉を開けた。



ピンポーン…!


お店の中に音が響いた。

どうやら人が入ると音が鳴る仕掛けになっているらしい。


『いらっしゃいませー、こんにちはー。』


「あ…!」

ボクは動きを止めた。


『お客様、何め…』

出迎えた子も動きを止めた。


それは赤い髪の女の子。

着ている服こそ違うが、間違いない。


これはアスカだ。


「リ、リディ…? どうして君が…」

“アスカ”がボクの名前を呼んだ。


「アスカ、アスカなんだね…?」

ボクは左手で“アスカ”の腕を掴んだ。


『どうしたんだ? アルエット。何名様だったんだ?』

奥から店員と思しき男が出てきた。


『1名様だよ。友達だから、僕が案内するから大丈夫。』

『そうか…。じゃあ頼むよ。』

そう言うと店員の男がまた中に戻って行った。


「リディ、僕、もう少しでバイトの時間が終わるからそこに座って待ってて。」

「う、うん…」

ボクは頷いた。

一人称が違うな…。

まぁボクも、アスカと一緒にいるときは“俺”だったから何とも言えないのだが。



30分程経っただろうか。

『上がりまーす! お疲れ様でした!』

店の奥から“アスカ”の声が聞こえてきた。

そして先程とは違う服に着替えた“アスカ”が出てきた。


「おまたせ、リディ。じゃ、帰ろっか。」

“アスカ”が可愛らしい笑顔で言った。


「え、帰るってどこへ…?」

「僕が今住んでるお家だよ。あ、ちょっと待って。ママに連絡しておくから。」

“アスカ”はカバンから見慣れないものを取り出した。


『あ、ママ? アルエットだよ。今から帰るんだけどお友達連れてって良い? うん。 ありがと。』

どうやらこれは離れた所と通信できるモノのようだ。


「OKだって。いこ!」

「あ、うん!」

ボクは“アスカ”と共に歩いた。


15分程で、“アスカ”のお家に到着した。

「ここが僕が住んでるマンションだよ。あの3階が、僕の部屋さ。」



『ただいまー!』

“アスカ”が部屋の扉を開けた。

『おかえりなさい。』

中から優しそうな女性が出迎えてくれた。

どうやらこの女性が、“ママ”らしい。


そしてもう一人。


『おかえりー…って!?』

栗毛の男の子。

見間違えるわけない、アルフレッドだ。


「リディ! リディなのか!?」

“アルフレッド”が駆け寄って来た。


「アルフレッド!?」

ボクは“アルフレッド”の名を呼んだ。


「あ、あー。そうだよな。アルフレッド、まだ俺達のこと説明してなかったのか?」

「あーうん。僕もさっき会ったばかりだからね。」

「これはまず説明しないといけないな。」


説明? 何を言っているのだろう。

ボクは首を傾げた。

どうもボクが知っている二人とは少し違うらしい。


「リディ、とりあえず中に入ってよ。」

『母さん、お茶出してもらっても良い?』



『良いわよ。 でもあなた達、たまに外国語っぽい言葉話すのね。』

“ママ”はニコニコしながら呟いた。



“アルフレッド”に案内され、ボクは食堂のような所の椅子に腰掛けた。

『おまたせ、お茶よ。お菓子も自由に食べてね。』

“ママ”がニコニコしながらお茶とお菓子を置いてくれた。


「ありがとうございます。」

ボクはペコっと頭を下げた。


『ありがとうだって、母さん。』

『そう? いい子ね。 ゆっくりしてってね。』

“ママ”はそう言うと部屋の奥に入って行った。



「じゃあ説明するよリディ。」

まずは“アルフレッド”が話し始めた。

「う、うん。」

ボクは頷いた。


「俺は“アルフレッド”だけど中身は“アスカ”で…」

「僕は“アスカ”だけど中身が“アルフレッド”なんだよ。」

続いて“アスカ”が話した。


ん、ん??

何だかややこしい。


「ややこしいね…」

ボクは左手で頬を掻いた。

ややこしくなるから“”を取ろう。

つまりアスカとアルフレッドは入れ替わっているという事だ。


「それよりもリディ。お前右腕が…」

栗毛の男の子=アスカがボクに言った。


「ああ、これは…」

ボクは事の顛末を話した。

カールが死んだこと、その戦いでボクの腕を食われたこと。


「そうだったんだ。苦労したんだね…。カールも…」

赤い髪の女の子=アルフレッドがボクの頭を撫でた。


「うん。でも今日、アスカ達に会えて良かった。でも何であなた達は入れ替わったの?」

「うーん、それは良く分からないんだけど…。アルエット姫が俺やアルフレッドをこっちの世界に転生させた時に入れ替えたとか言っていたけどね。」

「へぇ…。そうなんだ…」


何だか良く分からないが、何かの力が働いて入れ替わったようだ。


「でもまさか、こっちの世界でリディに会えるなんてね。」

「うん。ボクも嬉しいよ。」

ボクは笑顔で答えた。


「うーんでもちょっと見させてもらったけど、それも今日一日だけかも…」

アルフレッドが言った。


「ん、そう言う事だ? アルフレッド。」

「うん今ね。リディの頭を撫でた時、魔力の残滓を感じたんだ。でもこれはリディのものじゃなかった。おそらくその魔力の残滓は、リディをこちらに送り込んだものだろうね。」


ボクをこっちの世界の送り込んだ?

いったいどういう事なんだろう。


「そうか。アルエットが俺達を入れ替えて転生させたように、何者かが俺達に会うようにこちらの世界に送り込んだという事か。」

「たぶんね。でもその魔力の残滓が完全に無くなった時、リディは元の世界にも戻ってしまうんじゃないかと思うよ。」


それを聞いてボクは少し俯いた。

だがボクには“自分の世界”に新しい仲間がいる。

かつての仲間に会えたことは嬉しい事だが、ずっとこの世界にいるわけにはいかない。



『そろそろ夕飯の時間ね! えっとその子、リディちゃんだっけ? 一緒に夕飯食べるわよね。』

先程の“ママ”がエプロンを着けながらこちらにやってきた。


『あれ、母さん。何でリディの名前知ってるの?』

『ふふふ。あなた達が違う国の言葉をしゃべってても、名前は変わらないでしょ。腕によりをかけるから楽しみにしててね。』

“ママ”は鼻歌を歌いながら料理を始めた。

この人はあまり多くの事を気にしない人のようだ。


「ねえ、アスカ。その“ママ”さんはアスカのお母さん?」

「あ、ああ。俺の母さんだよ。アルフレッドも一緒に住んでいて、俺の母さんの事をママって呼んでるんだ。」


なるほど、つまりは既に親公認で付き合っていてラブラブと言う事だ。

何とも幸せそうでうらやましい事だ。


その後ボクはアスカ達と夕食と共にした。

“ママさん”も良くしてくれたし、とても楽しい食事だった。


その夜、ボクはアスカ達の部屋で寝る事となった。

三人で川の字になって横になった。


「ねえ、アスカ、アルフレッド。」


「なんだい?」

「どうかした?」


「ボク、多分これで寝たら元の世界に戻っちゃうと思う。」

「そうか、寂しくなるね。」


「でも今日は二人に会えて良かった。ママさんも優しくしてくれたし、ご飯も凄く美味しかったよ。ママさんにありがとうって言っておいてくれる?」

「ああ、言っておくよ。」


「ボク、元の世界に戻っても頑張るからね。アスカやアルフレッドの事は忘れないから。」

「俺も。」

「僕もだよ。」


「うん。二人はいつまでもラブラブでね…。それじゃお休み。」

「ああ、お休み。」

「お休みなさい。」




ボクは目を閉じた。

そしてボクは、元の世界で目覚めることとなる。





















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