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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第1章 土鬼族の村編
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第4話 土鬼の村(3)

ボク達が土鬼の村に来て数日。

この日、村の広場には土鬼の村人が集まり賑わいを見せていた。


「ウ、ウマイ!」

「コレガ、イツモオレタチガタベテイルキノミナノカ?」


村人たちは喜びの声を上げていた。


「おうよ! これが料理ってやつだぜ!」

村人たちの中心には船員の一人が自慢げに笑っていた。

「モ、モットクレ!!」

「おう! たくさんあるからな! どんどん食べてくれ!」

村人達の求めに応じて船員は料理をふるまう。

『食事会』は賑わいを見せていた。




『食事会』の2日前、その船員は小屋の中でこう語っていた。

小鬼(ゴブリン)達には料理と言う概念が無ぇ! それが続く限り俺達は美味いメシを食うことは出来ないぜ!」

どうもこの船員は船の料理人を務めていたらしい。

今後、彼の事は料理人と呼称することとしよう。

料理人である彼は、料理が出来ない事が気に入らなかったようだ。

「でもどうするんだ? 小鬼(ゴブリン)は木の実や果実等をくれるが、あんなので料理が作れるのか?」

魔導士が口を挟んだ。

「でもよ、貰える食材でも出来そうなものはあるんだ。問題は調味料だな。調味料になりそうなものを探し出せれば、どうにでも出来る自信はあるぜ。」


ボクは魔族だが、料理はそれなりにやっていた。

料理人の言う通り、美味しいものを食べられればそれに越したことは無い。


そう考えていると、料理人はこっちを見た。

「そこでだ。リディさんに頼みたいんだが、ここの族長に村の周りを探索して、食材や調味料になるものを探す許可を得たいんだ。」

「え、何でボクが…?」

「ここの村人は、まだ俺達人間を信用してないだろ? アンタなら話せると思ってな。」

「それはそうだけど…」

ボクは考え込んだ。

勝手に村の周りを探索するのは信義に反するだろう。

それに料理が、もしかしたら人間と土鬼族を結びつける切っ掛けになるかもしれないな。

「分かった。それなら一緒に許可を得に行こう。」

「お、おう! 頼んだぜ!」


この後、この料理人と二人で族長の許可を得に行った。

族長は知識として料理と言うものは知っていた様だが、もし実際にそれを見せてくれるのならと、思いのほか簡単に周辺探索の許可を出してくれた。



翌日、ボクと料理人は村周辺の探索に出掛けた。

案内役として、ヒスイが同行することになった。

「オマエタチガサガシタイノハ、ナンナンダ?」

「そうだな。俺としては油を取り出せるもの、辛かったり、甘かったりするものとかが欲しいな。あとはしょっぱいものもな。」

「アブラ? アブラッテナンダ?」

「油っていうのはな…」

料理の概念が無い土鬼族には一から教えなければならない。

「ナルホド。ソウイウノナラ、コノサキニアルカモシレナイ。」

ヒスイはボク達を案内してくれた。


「おお、こいつは油菜だぜ! これからは植物油が取れるな!」

料理人は嬉しそうな声を上げた。

「アトカライショクブツナラムコウニ…」


その日は夕方まで村の周辺を探索して回った。

ボクは収穫されたものを背負った籠に入れて歩いた。

何で女の子のボクが荷物持ちをしなければならないんだ、とも思うが、役目上仕方ないのかもしれない。



日が落ちる前にボク達は村へ戻った。

「よし、俺は採れたもので料理を考えてくる。明日振舞える様にバッチリ準備するから、アンタは族長様に伝えといてくれ!」

「ワカッタ。ツタエテコヨウ。」

ヒスイはそういうと村の中央に向かって歩いて行った。

「リディさん、アンタもありがとうな。」

「本当だよ。荷物持ちしてあげたんだから、美味しいものが出来なかったら許さないからね!」

「おう! 期待してくれ!」

料理人は腕を組みながら答えた。




そして『食事会』の当日、それは前述の通り盛況なものになったのである。

「ホウ、コレガ料理カネ?」

「これは族長様! どうぞ食べてみてください。」

料理人は恐縮したような表情で料理を差し出した。

「フム、イタダコウ。」

長は料理を口に運んだ。

「・・・」

長は無言で料理を噛みしめた。

「い、いかがで…?」

料理人はごくりとつばを飲み込んだ。

「コレハ美味イ…。儂ラニハ料理ト言ウモノハナイガ、人間ヤソレ以外ノ種族デソレヲヤルモノガイルトハ知ッテイタ。ダガ、コンナニ美味イモノダッタトハナ…」

「これは勿体ないお言葉で…」

料理人はペコペコと頭を下げた。

「料理人殿。モシ良カッタラ、ソノ技ヲワガ村人ニ教エテイタダケンカネ? ワガ村人ガソノ技ヲ出来ル様ニナレバ、我ガ一族モ発展スルコトニナロウ。」

「そ、それは…」

「出来ナイカネ?」

料理人は族長の手を取った。

「喜んでやらせて頂きます。必ずや、村人の皆さんが美味しいものを作れる様に教えてみせましょう!」

「ソウカネ!? ヨロシク頼ム。」

長は嬉しそうに頷いた。



ふむふむ、これは人間と土鬼族の友好の切っ掛けに間違いなくなりそうだ。


ボクは別の場所に視線を移すと、ヒスイがニコニコとしながら料理をほお張るのが見えた。

少年らしいその笑顔は、実に微笑ましいものに見えた。

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