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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第1章 土鬼族の村編
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番外編 僕はココロの鍵を開ける(1)

僕は転生者だ。

僕はある特質系能力を持つ。

それはあらゆる鍵を開けることのできる能力(チカラ)

名付けて、「最後の(ファン)(クレ)

この物語は、自分のとは違う世界に転生したところから始まる。




その日、僕はナイザール王国の都であるバイゼル城に来ていた。

ナイザール王国はエレノオール大陸にある大国である。

その都バイゼル城はナイザール王国政治・経済の中心であり、本来であれば繁栄した都市のハズだった。

しかし街並みの所々に破壊が見られ、“戦乱”が影を落としていたのだ。

“戦乱”についての説明は後世の歴史書に譲るとして、何故転生者である僕がここにいるのかについて述べよう。



転生(それ)は1か月前、突然起こった。

転生前、僕は監禁されていた。

育児放棄(ネグレクト)というやつだ。

ある日、僕の両親は離婚した。

それから僕の母は男を連れ込むようになった。

母は僕の存在が邪魔になったのだろう。

僕を部屋の一室に閉じ込めるようになった。

部屋の外から鍵をかけて。

閉め切られほとんど光の差すことのない薄暗い部屋。

与えられるのは水と、1日1回の粗末な食事のみ。

外の世界との接点は食事が与えられる時と、母が連れてきた男に殴られる時だけ。


僕は何故こんなところにいるのだろう?

母は何故こんなことをするのだろう?

そして、


僕 は 一 体 何 者 な ん だ ろ う ?


最初は色々な事を考えた。

どうすれば母は僕を解き放ってくれるのかを考えた。

どうすれば母が連れてきた男が殴るのをやめてくれるかを考えた。

そして、


ど う す れ ば そ の 答 え が 得 ら れ る の だ ろ う ?


僕は色々な事を考えた。

しばらくして考えるのをやめた。


与えられる食事は機械的に取ればいい。

殴られない為には気配を殺し、あいつらを無視すればいい。


僕は考えることをしなくなったが、一つだけ思考が残された。

それはまだ幸せな家庭だったころ父が買ってくれたゲーム。

その中に出てきた、あらゆる扉を開けることのできる鍵。

それが僕の手の中にあればよかったのに。


監禁されてから数年、僕の思考は完全に停止した。

僕は“この世”から完全に消滅するハズだった。


次に目が覚めると、やはり僕は薄暗い空間にいた。

しかしどうも具合が違う。

無機質な事には変わりないが、今いるこの空間は石造りの暗室のようだ。

体を起こすと、石の隙間から光が少しだけ差し込んでいるのが見えた。

僕はフラフラと立ち上がりそこへ向かった。


どうこれは石扉のようだ。

隙間から南京錠のような錠前がついた鎖が見える。

辛うじて手を出し、錠前に触れることは出来た。


ここも外から施錠されてるのか…


僕はため息をついた。

ここは自宅では無い様だが、ここでも僕は外に出られない。

僕はまた思考を止めようとした。

思考を止めたら、僕は自宅とは違うところに来た。

次は外に出られるところで目が覚めるかもしれない。


しかし僕は“自宅にいた時”とは何かが違う。

そう、僕はこの鍵を開けられそうな気がする。


僕はもう一度錠前に触れた。

すると僕の頭の中がスーッとしたような感じになり、この錠前の“構造のイメージ”が組み立てられていった。

そして何気なく念じると、僕の中の何かが“構造”に干渉し…


ガチン!


鈍い音がして、その錠前が外れたのだった。


数年ぶりの外の世界。

実際に何年経過したのかは分からない。

だが僕は外に出ることができたのだ。


「ここは…、どこなんだ?」


外の世界は、僕が知っている“世界”とは違うようだ。

とにかく、ここがどこなのか確かめなければならない。

僕は人里を目指した。

程なくして僕は人里に着くことができ、迷い人のふりをして情報を集めた。


そしてそこで得た情報と合わせ、自分が置かれた状況を整理してみた。


・ここは“僕がいた世界”とは完全に違う。

・どうやら、ここはエレノオール大陸という処の南方らしい。

・文明の程度は“僕がいた世界”における中世程度。

・この世界では魔法やその他にも不思議な能力(スキル)が存在するらしい。


これらを総合すると先程僕が錠前を開けた能力(スキル)は、魔法に類する特殊能力なのかもしれない。

それでは僕のこの能力(スキル)はどの程度の鍵を開けることが出来るのだろうか?

さっきの錠前などピッキングで開けられるようなものだろう。

“あのゲーム”で言ってしまえば、“盗賊の鍵”である。


試してみたい。


僕はそんな好奇心に駆られた。

ついでに言えば、僕はこの世界では無一文だ。

粗末な食事さえ、与えてくれるような親類はいない。

生きていくためには、必要なものは手に入れなくてはならないのだ。


無論、他人を不幸にする気は無い。

僕のような持たぬ者から、モノを奪う気にはなれない。

ならば、持っている者から必要な分だけ手に入れればいい。

義賊を騙る気は無いが、他人から奪うのであれば信念だけは持っておきたい。


僕はとある町で悪徳商人がいるという話を聞きつけ、自分の能力(スキル)を試してみることにした。

結論から言うと、それは簡単に成功した。

悪徳商人の屋敷の金庫室はそれなりに厳重な施錠が施されていた。

だが僕の能力(スキル)はそれを易々と開けることが出来た。

いわば、魔法の鍵である。

それともう一つ、僕は能力(スキル)を持っているようだ。


それは気配を消す能力(スキル)である。

姿を消すようなものでは無い様だが、気配を認識の外に持っていくことが出来るらしい。

完全に姿を見られさえしなければ、見つかることがない様だ。

いや、見られたとしてもこちらから気を引く行動をしなければ風景のようにしか見えないらしい。


僕はその屋敷でまずは自分自身に必要な分を手に入れた。

そしてそれ以外はその街にあった貧民街にばら撒いた。

偽善かもしれないが、それで助かる人が少しでもいればそれで良いだろう。


僕は得た金で服を揃え、その街を後にした。

目指すはエレノオール大陸でも有数の大国である、ナイザール王国だ。

それなりに警備厳重な館の鍵は開けることが出来た。

大国ならばより厳重な鍵があるだろう。

僕の興味はそこに移った。

それに、大国なら相応の闇もあるかもしれない。

馬車に揺られながら、今まで止めていた分を取り返すように僕の頭は色々な事を思考した。

数日後、僕にとって思いもよらぬ大きな出会いがあることなど知らずに。



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