緋夏・秋名との出会い
これは、俺がまだ小学校に入る前の話だ。当時は……確か四歳だったと記憶している。
物心がようやく付いてきた頃、俺はとなりに引っ越してきた家族と顔を合わせていた。
「――」
「――」
俺の両親と引っ越して来たというご夫妻が、遙か頭上でにこやかに談笑している。当時の俺には、その会話は高すぎて、難解すぎて、よくはわからなかった。
「……」
だから、というわけでもないが、俺は夫妻の背中に隠れている女の子二人に視線を向けた。
「――ん、ああ、紹介するよ。娘の緋夏と秋名だ」
優しそうなお父さんが、俺に目線を合わせて、二人の娘を少し前に。
一人は小さく髪を結んだ女の子。値踏みするように、俺をじっと見つめている。
もう一人は興味なさげにうつむいて、こちらに向き直る気はないようだった。
俺をじっと見つめている娘が緋夏。うつむいている方が秋名。これから長い付き合いになる少女たちだ。
「キミのお名前は?」
二人の父親が俺に優しく問いかける。今も昔もこの人は変わらない。
「……はるや、です」
「春弥くんだね。娘たちはキミと同い年でね。もしよかったら、仲良くしてやってくれ」
「ん……わかり、ました」
まだ不慣れな敬語を必死に使って、俺は答えていた覚えがある。
「ええと……はるやだ。よろしく」
「よろしく。ひなつよ。仲よくしましょ」
「……あきな。……よろしく」