プロローグ
自分が異常な人間だと気付いたのはいつ頃だったか。
もう忘れてしまった過去の記憶。
自分は何でもできてしまった。
スポーツであろうが、料理であろうが、勉強であろうが、喧嘩であろうが、
何をしなくとも「普通」いや「特別」以上の結果が残せてしまう。
故に私は独りだった。友達もできずに、家族さえ私を忌み嫌った。
だがそんなことはどうでもよかった。私も家族なんてどうでもよかったからだ。
私には家族などいないに等しかった。いないものから嫌われたところで私は何も感じない。
そういう人間。どこかが欠陥している人間。
だから私は彼女に見初められたのだろう。
だが私は彼女を拒絶した。
誰も愛せない人間が、誰かに愛してもらおうとするなどひどく烏滸がましい。
私は彼女のもとから逃げてしまったのだ。
私が唯一人を愛せる機会を私自ら奪ってしまったのだ。
この時の私はなんて愚かだったのだろう。
彼女の気持ちを考えることなどしていなかった。
彼女がどれだけ悲しんでいたのかさえ考えていなかったのだ。
だからこそ私は今こんな目にあっているのだろう。
寒い。眠い。
自分にはもう歩く気力さえ残っていない。
少しの間眠りにつこう。
そして私は永い眠りについた。