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19時を過ぎた頃、
ガチャっと玄関の方から物音がした。
玄関が開いたと同時にチリンチリンと、
詩織の趣味でつけている、
金魚の風鈴が音を鳴らした。
雄輔が帰ってきた合図だ。
パタパタとスリッパの音を廊下に響かせながら、
食卓に一言、"ただいま"
と言って入ってきた。
「おかえりなさい。」
朝はなかなかゆっくりすることが
出来ない二人にとっては、
一緒に食卓を囲むことが出来る
という事が一番の嬉しいことなのだ。
「お疲れ様。ちゃんと温かいカレー、
用意しといたよ?
早く食べよ?」
そう言われると雄輔は、
着ていたスーツのジャケットを脱ぎ、
近くに置いてあるハンガーに掛け、
椅子に腰を掛けた。
「はい。どうぞ。」
「美味しそうなカレー。
いただきます。」
雄輔は手を合わせて挨拶をすると、
向かい側の席に詩織が腰を掛けた。
「疲れたでしょ?
カレー、食べたらお風呂に入ってね。」
とても気が利く子だ。
きっと、
優しく、気が利く性格に、
雄輔は惚れたのであろう。
「…いつもありがとう。」
「え?…急にどうしたの?気持ち悪いな。」
少しツンとしたところも、
詩織の魅力的なところである。