勇者⑥
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『死の聖騎士』
そのアンデットは数多いアンデットの中でも最上位に位置するおそるべきアンデットの一つである。
『死の聖騎士』は、別に非業の死を遂げた聖騎士がアンデット化したわけではない。
その戦闘力が他のアンデットより飛び抜けているため名付けられた。剣、槍などを操る戦闘技術に加え、アンデットにかかわらず神聖魔術を使いこなすという理不尽なアンデットだった。
普通、アンデットにとって神聖魔術は弱点だ。だが『死の聖騎士』はその神聖魔術を使いこなす。そのため、アンデットに有効なはずの神聖魔術がほとんど効果がなかった。
神聖魔術は、防御に特化した魔術だ。神聖魔術によって強化されれば、防御力は飛躍的に跳ね上がる。そして、神聖魔術によって強化された防御力は物理的な攻撃だけでなく魔術的な攻撃も防ぐことができるのだ。
神聖魔術を使いこなすだけで、その相手の強さは二段も三段も跳ね上がるといって良かった。
また、『死の聖騎士』は剣、槍などの戦闘技術もすさまじく、アンデットである以上、恐怖に囚われる事はないし、疲労を感じることはないので、これ以上ない恐ろしい相手だ。
そお『死の聖騎士』とジェスベル一行は出会ってしまった。四人は逃亡を考えるが、すぐにその考えに却下の裁定を下す。
逃亡しても逃げられる可能性は低く、背後から襲われれば全滅の可能性は一気に高まるのだ。
となると、戦って『死の聖騎士』とデスナイトを斃すしかなかったのだ。
「やるしかない!!ドロシー、ロフ!!まだ距離がある少しでも削ってくれ!!」
「分かった!!」
「了解!!」
「カルス・・・俺がデスナイトを片付けるまでなんとか持ちこたえてくれ!!」
「分かった。まかせろ!!」
デスナイトも強敵だったが、『死の聖騎士』に比べれば、まだマシだった。
ジェスベルは、自分がデスナイトを斃してから、『死の聖騎士』にチーム一丸となって対応するつもりだったのだ。そして、この戦法は決して誤りとはいえない。
戦力的に劣る者をまず叩くというのは常識だったのだ。人によっては強者をまず叩くべしという考えもあるが、これは強者を斃すことで、残った弱者の動揺を誘うのが主な目的だ。アンデットに恐怖、動揺はありえないので、強者をまず斃そうというのは悪手と言える。
「いくよ!!」
ドロシーが弓を構え、矢を立て続けに放つ。先程のデスナイトと同じ戦法だ。四人い向けて駆け出すデスナイトと死の聖騎士に矢が降り注ぐ。
ドロシーが放った矢は五本、命中したのはそのうち三本だ。デスナイトの右目、右胸、カイトシールドに三本の矢が突き刺さった。
死の聖騎士に向かった矢は死の聖騎士の右手の剣により払い落とされたのだ。
ドロシーは矢に込められた【爆発】を解放する。爆発が立て続けに起こる。
ドゴォォォォォ!!ドゴォ!!ドゴォォォォォォォォォォ!!
爆発の余韻が冷める前にドロシーはさらに立て続けに矢を放つ。今度は舞い上がる砂塵の中に矢が入ると【爆発】を解放する。
ドゴォォォォォ!!ドゴォ!!ドゴォォォォォォォォォォ!!
再び、爆発音が響き渡った。
だが、これでドロシーは矢をすべて使い果たしてしまった。
次にロフは【火矢、【電撃】の二重詠唱を行い。魔法をデスナイト、死の聖騎士へ放つ。
ヒュゥゥゥゥ!!
ビシィィィィィ!!
火矢と雷撃が間髪開かずにデスナイト、死の聖騎士を襲う。ドロシーの攻撃に加え、ロフの魔術によりデスナイト、死の聖騎士の周囲に巻き上げられた砂塵はすさまじいものだった。
砂塵がおさまる前に、こちらに駆けてくるアンデットを四人の目は捉えている。もちろん、そのアンデットは死の聖騎士だ。
「くそ!!全然ダメージを受けてやらがらねえ!!」
「ロフ!!魔法を!!」
「くっ!!」
再びロフは詠唱を始める。唱えたのは【火矢】だ。放たれた火矢
は6本だ。6本の火矢は狙いを外すことなく、死の聖騎士へ殺到する。 だが、放たれた火矢は、死の聖騎士に命中したが、何のダメージを与えることはできなかった。構わず突っ込んでくる。
「カルス!!頼むぞ!!」
ジェスベルは、そうカルスに頼むとデスナイトへ向け突進する。砂塵が晴れた後にデスナイトが体の半分以上を崩壊させていたのが確認できたため、ジェスベルはデスナイトにとどめを刺すために動いたのだ。
死の聖騎士は、向かってくるジェスベルに対し、剣を横にはらった。その剣をかろうじてジェスベルは躱すと死の聖騎士をすり抜けて、デスナイトへ向かっていった。
死の聖騎士はジェスベルに第二撃を見舞おうとしたが、それはカルスによって阻まれる。
「お前の相手は俺だよ!!」
カルスは死の聖騎士に宣戦布告すると、両手斧による斬撃を見舞う。死の聖騎士はその必殺の一撃を余裕を持って剣で受け流すと、そのままの流れでカルスの右腕を斬りつける。
カルスは攻撃の流れにより躱そうとするが到底間に合わない。カルスの腕に死の聖騎士の剣が触れる。
そして・・・
ガギィィィン!!
死の聖騎士の剣はカルスの付けているガントレットに防がれた。カルスの小手はミスリル製であり、死の聖騎士の剣でもミスリルのガントレットを切り裂けなかったのだ。
もし、カルスの小手が普通の鋼鉄製のものであったら、カルスの右腕は転がっていたことだろう。その事を理解しているカルスの頬に冷たい汗が流れ落ちる。
カルスは再び斬撃を死の聖騎士に見舞う。
ガギィ!!ギキィ!!キィン!!
目まぐるしくカルスと死の聖騎士の攻守が入れ替わる。そこにドロシーが参戦する。
ドロシーは使い切った弓を捨て、腰にさしたショートソードを構えると、死の聖騎士に躍りかかる。ドロシーのショートソードはミスリル製であり、普通の武器とは明らかに一線を画している。
参戦したドロシーに死の聖騎士は容赦ない斬撃を見舞う。ドロシーはその斬撃をヒラリと躱し、攻撃に転じた。死の聖騎士はその一撃を躱す。
ドロシーの一撃を躱した死の聖騎士に今度はカルスが一撃を見舞った。
ガギィィィン!!
死の聖騎士は自らの剣でカルスの両手斧の一撃を受け止める。カルスは、両手斧の刃の部分に死の聖騎士の剣を引っかけ力任せに引っ張った。
押しつぶそうとした力の方向から突然、力の方向が自分の前の方に変われば対処は出来ない。そのためにカルスは死の聖騎士の剣を奪えると思ったのだ。
だが・・・
死の聖騎士は急激な力の方向転換に見事に対処する。死の聖騎士の剣とカルスの両手斧の力の均衡が生まれ、お互いに動けなくなる。
これが、一対一であればこの均衡がしばらく続いていただろう。だが、これは4対2の戦いなのだ。
すぐにドロシーが死の聖騎士の右腕を切り捨てるための斬撃を見舞う。しかし、ドロシーの剣は死の聖騎士に傷を付けることができない。神聖魔術により防御力が強化されていたことで、ドロシーの剣は死の聖騎士を傷つける事が出来なかったのだ。
「く!!攻撃が通らない!!」
ドロシーの声に悔しさが滲む。
自分では死の聖騎士にダメージを与えることが出来ないことが証明されてしまったのだ。だが、この攻撃で力の均衡が崩れ、カルスト死の聖騎士はお互いに離れた。
「ドロシー!!攻撃は俺に任せろ!!」
カルスはそう怒鳴り、死の聖騎士に再び、斬撃を見舞った。死の聖騎士はその斬撃を左手で受け止める。
ガギィィ!!ィィィィ!!
カルスの斬撃は死の聖騎士の左腕を切り落とすことが出来なかったのだ。神聖魔術によって強化された死の聖騎士にはカルスの攻撃すら通じなかったのだ。
「な・・・」
カルスに驚愕の表情が浮かぶ。ポツリと漏れた声はカルスの恐怖に他ならない。そして次の瞬間、死の聖騎士の刺突がカルスを襲う。
ズシュ・・・
「ぐぅ!!」
死の聖騎士の剣がカルスの右肩に突き刺さった。カルスの口から苦痛のうめき声が上がる。
死の聖騎士は右肩に突き刺した剣を引き抜き。
次の剣撃を見舞った。それをカルスはかろうじて躱した。右肩から流れ出す血を押さえ斧を構えるが旗色が悪いのは確実だった。
そこに、待ち望んでいた男の声がかけられる。
「カルス、ロフ、ドロシー、良く耐えてくれた。これから反撃開始だ!!」
それは、デスナイトを屠ったジェスベルだった。
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