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勇者⑤

 今回は戦闘描写はほとんどありません。


 戦闘描写を望まれている方は明日は期待に添えると思います(質はともかく・・・)

 ドゴォォォォォ!!ドゴォ!!ドゴォォォォォォォォォォ!!


 ジェスベル達の戦う音が響き渡る。その音を聞き、アレン達は素直な感想を漏らす。


「派手にやってるな」

「ええ、あんなに派手に戦う必要あるのかしら?」


 ものすごく人事のような両者の感想である。


 現在、アレンとレミアは墓地の出入り口のところに置いてあるベンチに腰掛けている。


 このベンチはアレンが置いたもので、墓地見回りが終わった時などで一休みしたいときのためのものだ。

 一人で見回りをしていた時はわりかし利用していたのだが、フィアーネ、レミア、フィリシアなどと見回りをするようになり、肉体的にも精神的にも余裕が生まれたことで最近はほとんど使用していない。


 いくらアレンが超人的な戦闘力を持っていたとしても、やはり墓地管理では気を張っているのだ。そのため、精神的の消耗をしていた。何だかんだ言って、フィアーネ達の存在はアレンにとって非常に重要だったわけである。


 今夜は、アレン達の代わりに四人の臨時職員(あくまでアレン達の主観)ががんばってくれているのは、有り難かった。


「今夜は結構、瘴気が濃いな・・・」

「確かに、今夜はいつもより瘴気が濃いわ。ひょっとして、あの四人に瘴気が引っ張られているのかしら?」

「う~ん、それは分かんないけど、今夜のアンデット駆除は大変だろうな」

「そうね、ひょっとしたら私が見たこともないアンデットが発生するかもしれないわね」

「あり得るな。臨時職員には頑張ってもらいたいな」

「そうね・・・ところでアレン」

「何?」


 レミアが真剣な表情でアレンに問いかけた。アレンもその様子を察し、何事かと身構える。


「アレンってさ・・・その・・・将来について何か考えてる?」

「将来?」

「そう・・・その・・・結婚とか・・・」


 結婚という単語にアレンはドキリとする。ここ最近、アレンの周りで結婚を意識せざるをえない出来事が多々あったからだ。

 アレンにとってレミアもまた、その結婚という言葉に深く関わっている。


 フィアーネ、レミア、フィリシア、そしてアディラ・・・。


 四人とこのまま、いけば結婚する流れなのは分かっている。


 でもそれで良いのか?という思いがアレンにはあった。四人に不満はないというよりもものすごく惹かれていた。


 フィアーネは何だかんだ言ってアレンのために行動してくれる。戦闘でも頼りになるし、あの前向きな姿勢に何度助けられたかわからない。残念系美少女とレッテルを貼ってはいるが、フィアーネとのやりとりを楽しんでいるのは事実であった。

 レミアはアレンが背中を託すに相応しい実力の持ち主であるし、そして普段、凜としているレミアが時折見せる女の子らしい仕草などは、アレンの心をつかみ始めている。

 フィリシアの優しげな雰囲気にアレンは癒やされている。心が刺々しくなっている時にフィリシアの雰囲気に癒やされることで心が落ち着き、穏やかな気分になることができる。

 アディラも王女という身分にありながら常に努力を怠らない姿勢は素晴らしいと思う。また純粋な好意を向けてくれるアディラに対し、最近は女性として見ている。


 また、アレンは『自分は四人の中で誰を愛しているのだろうか?』と考えた時に、フィアーネ、レミア、フィリシア、アディラの四人それぞれに、自分以外の男と夫婦になるシーンを想像してみたのだが、アレンは、フィアーネ、レミア、フィリシア、アディラそれぞれ『許せない』『面白くない』『嫌だ』という感情が巻き起こった。

 

 この想像の結果、どうやら自分は四人に同時に惹かれている事を自覚してしまったわけだ。同時に『俺は・・・鬼畜・・・?』という自己嫌悪に陥ってしまった。

 

「うん、結婚したい相手はいるよ」


 アレンは『レミア・・・お前もその一人だ』と心に思いながら返答する。


「・・・そう、その人って誰?私の知っている人?」


 レミアは少し緊張の面持ちでアレンに尋ねる。


「ああ・・・レミアも知っている」

「そう・・・私も知ってるのね」

「ああ、絶対な」


 アレンの返答にレミアはやはり緊張の面持ちを崩さない。


「それじゃあ、アレン・・・まだ聞きたいことがあるの」

「何?」

「アレンは貴族様じゃない・・・貴族は一夫多妻制が認められてるわよね?」

「ああ」

「アレンは複数の妻を持つことに対して抵抗はある?そして平民の妻を持つことに抵抗はある?」

「まず、平民の妻についてだけど、そんなものは一切関係ない。俺は気にしないな」

「良かった」


 アレンの返答はレミアにとって最高に嬉しいものがだった。自分がアレンの妻になる可能性が潰えた訳ではなかったからだ。


「そして、もう一つの件だけど、正直、複数の妻を持つことは今まで考えた事はなかったんだ。でも最近はその事について考え始めているんだ」

「複数の妻を持つことを考え始めているというわけ?」

「ああ、だがまだ自分の中で結論が出ていない。というよりも決心がついていない」

「決心?」

「そう、俺が複数の妻を持った場合に、果たして同じように愛情を注いで、しかも、それが相手に伝わるだろうかという不安がある。そして現実的な面で言えば複数の妻を持った場合にちゃんと妻達を養っていけるだろうかという二つの不安があるために結論を出せないんだ」


 アレンの言葉はレミアにとって嬉しい言葉だった。まずは自分達の目的である四人でアレンの妻になるという目的がアレンに否定されていないこと。もう一つはアレンが真剣に自分達の事を考えてくれていることが理解できたからだ。

 アレンが言った『複数の妻』候補者は自分達四人以外にあり得ない。もし自分達以外の者が対象だったとしても自分達四人も候補者に確実に入っていることだろう。アレンが自分達に接する態度に含まれる好意に気付かないような同志はいない。


 その事に気付いたレミアは、アレンに対し優しげに微笑む。


「そう、じゃあ結論が出たら私達に教えてね」

「ああ、それまでもうちょっと待っててくれ」

「うん」


 アレンとレミアが話を締めくくり、話題を変えようとした矢先に再び爆発音が響き渡る。


 ドゴォォォォォ!!ドゴォ!!ドゴォォォォォォォォォォ!!


 明らかに四人の発した爆発音だった。



---------------------

 ジェスベルがデスナイトの首を再び切り落とし、カルスが両手斧の一撃でデスナイトの心臓の位置にある核を打ち砕いた後、デスナイトは消滅する。


「ふぅ~」


 デスナイトにとどめを刺したカルスはデスナイトが消滅すると息を吐き出す。


「お疲れ」

「お疲れ様」


 ロフとドロシーがジェスベルとカルスを労う。


「あ・・・あれ・・・」

「そ・・・そんな・・・」


 ジェスベルとカルスに駆け寄ろうとしたロフとドロシーの顔が凍り付き、震える声でジェスベルとカルスの後ろ指さす。

ジェスベルとカルスは二人の指さす方向へと顔を向ける。そこには2体のアンデットが

いた。


 一体は先程、斃したアンデット同じデスナイト、もう一体は『死の聖騎士デスパラディン』であった。  

2016年8月1日に100万PVを突破しました。


読んでくれている皆様方本当にありがとうございます。


よろしければこれからもよろしくお願いします

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