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勇者②

少しずつ、誤字、脱字を修正しています。

読み返してみると、結構な誤字、脱字でして反省します

 夜になり、アレンは墓地の見回りにいつものように出かける。今夜はフィリシアは休みの日、そしてフィアーネは実家の方で何かしら用事があるとの事なので、レミアと二人で墓地の見回りを行う事になっている。


 ちなみにレミアとフィリシアは、ネシュア達の襲撃に備えてアインベルク邸に滞在していたのだが、襲撃を退けた後もアインベルク邸に滞在している。その方が何かと都合が良いし、部屋代も節約できるからだ。

 ロム、キャサリンもこの事に賛意を示し、アインベルク邸には新しい同居人が誕生した。


 アインベルク邸から国営墓地までは500メートル程の距離だ。その距離をアレンとレミアはテクテクと歩いて行く。


「レミア、誰だろうな?」


 アレンが世間話をしているかのような気軽さでレミアに語りかける。そのアレンの語りにレミアも気軽に返答する。


「う~ん・・・。気配の絶ち方からして素人でないのは確実ね」

「レミアに惚れた男が俺を亡き者にしようとしているとか」

「それはないんじゃない?フィアーネやフィリシアならあり得るだろうけど」


 さりげなくレミアは否定する。自分が決して醜悪な容姿をしているとは思ってはいないが、フィアーネの人間離れした美貌(実際人間ではないのだが)やフィリシアの儚げな美少女然とした雰囲気(実際は結構、過激な一面がある)を持っていないので、自分は女としても魅力が欠落していると本人は思っているのである。


 それはとんでもない誤解だった。レミアは確かにフィアーネ、フィリシアのように深窓の令嬢風な雰囲気を持ってはいない(あくまで遠目で見た場合)が、十分すぎるほど美少女にカテゴライズされるべき容姿をしており、フィアーネ、フィリシアとは違うタイプの美少女なのだ。


「いや、レミア、お前もう少し自分の容姿に自覚を持て、多分、フィアーネもフィリシアもお前の事を美少女と思っているぞ」

「アレンはどうなの?」

「勿論、俺もお前の事を美人と思っているぞ」

「えへへ、ありがと」


 レミアの嬉しそうな笑顔を見てアレンはドキリと旨が高鳴るのを感じる。やはり、レミアは美人だと思わざるを得ない。


「それで、アレン。本当のところ、つけている方々の目的は何だと思う?」

「レミアが目的で無ければ、確実に俺だろうな」

「アレン、誰か殺したの?」

「レミア・・・お前俺をどんな風にみてんだよ・・・」


 アレンの声がさびしげにレミアの耳に伝わる。だが、レミアはニコニコと笑いアレンに返答する。


「冗談よ、冗談♪」


 嫌な冗談だ・・・とアレンは思ったが、レミアが思いの外、楽しそうなので、反論は控えた。



 いずれにせよ、気配を隠しながら、自分達をつけている人数は4人いるが、今のところ接触してこないので、そのまま墓地の見回りをする事にする。

 もし、そこまで入ってくるのなら、退去を求めるまでと考えている。だが、当然ながら気配を絶って、つけてくる者がそんな退去命令に従うわけわく、結局は戦闘になるのだろう、という思いが消えることは無かった。


 アレンとレミアは墓地に入り、いつものように見回りを開始する。やはり、気配を絶ってアレン達をつけている4人は墓地に侵入してきた。


「やっぱり入ってきたな」

「そうね、どうする?」

「そうだな、ちょっとダッシュして、そいつらを撒こうか」

「分かったわ、そして逆に相手をおどかすとしましょう」

「よし、じゃあ、いくぞ」

「うん」


 アレンとレミアは予備動作無しで突然走り出す。あっという間にアレンとレミアは走り去ってしまった。


 不意をつかれた四人は呆然とアレンとレミアを見ていたが、数瞬後の自失の後、メンバーの一人が駆け出そうとしたのを他のメンバーが引き留める。


「待て、ジェスベル」


 引き留められた男は20代前半だった。身長は180半ば、短い髪に精悍そうな顔立ちと女性の支持を集めそうな青年だ。

 彼の名前をジェスベル。ローエンシア王国の隣国であるドルゴート王国において勇者の称号を持つ男である。正義感あふれる人物だが、少々、思い込みの強い性格をしている。


「なぜ止めるんだ。カルス」


 引き留めたメンバーのうち、カルスと呼ばれた男は30代半ばほどの年齢の男のようだった。筋骨逞しい体躯に左頬に一本の切り傷が走っており、いかにも歴戦の戦士のような風貌である。

 背中に巨大な斧を背負っており、いかにも力がありそうである。


「カルスの言うとおりだ。落ち着け」


 カルスに同意したのは、メンバーのロフ、メガネをかけたインテリ風の男だ。杖を持っているところから、どうやら魔術師であることが推測できる。


「二人の言う通りよ、ジェスベル」


 最後にジェスベルに声をかけたのは、20歳になるかならないかの女性だ。名前はドロシー、髪を短く刈り一見すると少年のようだ。だが、少年ではないことは慎ましいながらも自己主張をする胸と腰のラインから十分に分かる。腰に普通の剣よりも刃渡りの短い剣とナイフをさし、弓矢を背負っている。


 この四人こそ、ドルゴート王国の勇者チームである。この四人はドルゴート王国における最強戦力だった。この四人はドルゴート王国の一個旅団との模擬戦で勝利を収めたこともある。

 

 近隣諸国の勇者達の中でも上位に入る勇者チームといって良かった。



「お前らまで、アインベルクが逃げてしまったぞ」


 ジェスベルがいきり立つ。他の三人は困った奴だといわんばかりの態度だ。


「ここは、奴の庭だと言うことを忘れるな」

「カルスの言うとおりだ。ここは敵地だ。どんな罠があるかわからんぞ」

「俺達がそんな卑劣な罠なんかに屈すると思うのか?」

「私達が卑劣な罠に引っかかるわけないでしょ。でも相手は命をもてあそぶアインベルク家よ。用心に越したことは無いわ」


 ジェスベルは三人の言葉に不満があったが、一方で正しさも認めていた。ここは敵地なのだ。どんな卑劣な罠があるかわからないのだから・・・。

 その時、カルスが短く叫んだ。


「みんな・・・アンデットだ!!」


 カルスの指さした先には、アンデットが数体いた。スケルトンが4体、グールが5体の

計9体のアンデットだ。


 アンデット達は、ジェスベル達に狙いを定めたのだろう。


 こちらに向かってくる。


 余計な戦闘は避けたいところではあるが、たかだかスケルトンとグールだ。さっさと斃してしまおうと、全員武器を構える。


 ジェスベル、カルスが前衛、ドロシーは遊撃、ロフが後衛で三人を支援、若しくは敵を魔術で攻撃というのが、彼らチームの基本戦法であった。


 殺到するアンデット達にドロシーは弓を引き絞り、狙いを定めて矢を放つ。


 殺到するグールの一体の腹に見事に突き刺さる。軽く70メートル以上の距離、しかも相手は動いている。にもかかわらず一発で命中させたのだ。これだけでもドロシーの腕が非凡である事の証明である。

 

 だが、ドロシーの放った矢はグールの核を貫いたわけではない。グールは腹に矢が刺さった状態で構わず突進してくる。


 グールに矢が刺さった10秒後・・・。


 ドゴォォォォォ!!


 爆発音が響き、矢の刺さったグールは爆発した。ドロシーの放った矢の鏃には、【爆発エクスプロージョン】の魔術が込められており、ドロシーが任意に爆発させることが出来る。


 ドロシーの射たグールはアンデット達のほぼ中央に位置しており、爆発の効果がほぼすべてのアンデット達に打撃を与える。特に至近距離にいたグールとアンデットは粉々に吹き飛んでいる。


 比較的に距離のあった残りのアンデットはスケルトン2体、グール2体となっている。


 生き残ったアンデット達がこちらに向け突進を再開すると、今度はロフが【火矢ファイヤーアロー】を放つ。

 ロフから放たれた【火矢ファイヤーアロー】の数は6本、その六本の火矢は凄まじい速度でアンデット達を襲う。火矢はグール一体の頭、胸を吹き飛ばしもう一体のグールの右足を吹き飛ばした。

 いくらアンデットいえども足が吹っ飛ばされれば動くことはできない。足を吹き飛ばされたグールは地面を這いずってこちらに向かってくることを止めようとはしなかった。


 ジェスベルとカルスはそれぞれ武器を構え、残りのスケルトンを迎え撃つ。ジェスベルは長剣、カルスは両手斧だ。

 ジェスベルはニヤリと笑い、スケルトンと切り結ぶことなく、胴体を両断する。上半身と下半身を切り離されたスケルトンの核をカルスの両手斧が粉砕し、スケルトンを構成する骨が自然の摂理に支配され崩壊する。

 カルスがスケルトンの核を粉砕している間に、ジェスベルは残りのスケルトンの胸にある核を貫く。スケルトンは核を失いガラガラと崩壊する。


「ふん、他愛のない奴らだ」

「ああ、下級アンデット如きが」

「まぁ、こんなもんでしょうね」


 三人のメンバーがアンデットとの戦いを終え、余裕の表情で軽口を叩く。


 その中で、ドロシーだけが首をかしげている。


 先程のグールに打ち込んだ【爆発エクスプロージョン】ですべてのアンデットを倒せなかったのが納得いかなかったのだ。

 あのタイミング、周囲のアンデット達との距離、まとめて吹き飛ばす事が出来たはずなのだ。だが、結果は半分ほどを仕留め損なったのだ。


 それが妙にドロシーは気に掛かっていた。

いつも読んでくれてありがとうございます。


2016年の7月28日に60万PV達成しました。読んでくれている皆様、本当にありがとうございます。

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