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勇者①

 ちょっと短いですが、導入部分ですのでご容赦ください。


 あと誤字、脱字のご指摘があり、本当に助かりました。少々時間が掛かりますが、少しずつ直していていきたいと思いますので、長い目でみていただけると助かります

 『今日は寒いですね』という朝の挨拶が『今日も寒いですね』という挨拶に変わった頃、ローエンシア王国の王都フェルネルに一つの噂があった。


 隣国のドルゴート王国で『勇者』の称号を得た若者が旅だったというものだ。


 『勇者』とは、人類の守護者として、人類の脅威と戦う者の中でも特に、武芸、魔法、知識、人格において最も優れた者に対して与えられる称号だ。

 近隣諸国では、ほとんどこの勇者の称号を受けている者がいるが、ローエンシア王国には勇者の称号を受けた者はいなかった。


 それというのも代々の国王が『勇者などという英雄にすべてを押しつけるのは為政者としてあるべき姿でない』という考えに基づき勇者の称号を持つ者は、何年も現れていない。


 しかし、他国にその考えを押しつける事はしないため、例えローエンシアに勇者がいなくても他国の勇者が来れば特別扱いはしないものの冷遇することも無かった。要するに、一般の外国人と同じ扱いだったのだ。


 その事から、他国の勇者は滅多にローエンシア王国に訪れる者はなかった。どの国に行ってもそれなりに遇されるのに、わざわざローエンシア王国に行こうと思うものはそれほど多くなかったのだ。


 そんな勇者の存在に関心のないローエンシア王国の民達が、勇者の噂をしている理由はドルゴート王国を旅立った勇者の目的地がローエンシア王国であるからだった。


 一体、何のために勇者様がこの国に来るのか?という噂が立っていたわけだ。正直、『ありがたい』という噂よりも『何しに来るんだ?』という困惑が噂になっているのだ。



 ドルゴート王国からローエンシア王国まで徒歩で3週間、馬車なら12日ほど、噂が流れ始めた時期から考えて、本当に勇者がローエンシア王国に向かっているのなら、そろそろ王都フェルネルに現れてもおかしくなかった。もちろん、勇者の目的がフェルネルだとしたらである。



----------------


 ローエンシア王国の王都フェルネルの冒険者ギルドに4人の男女が現れる。


 男性3人と女性1人の構成のそのグループは、男性の一人は20代前半、後の二人は30代半ばから後半と言ったところだろう。女性は少女と呼ぶか女性と呼ぶか判断の分かれる10代後半といった所だろう。


 その四人のグループは、冒険者ギルドの受付嬢に尋ねる。


 20代前半の男性に尋ねられたギルドの受付嬢は、男性の優れた容姿に目を奪われたようだ。受付嬢の声に仕事以上の何かが宿っている。


「この王都にアンデットに関わる一族があると聞いたのだが、ギルドはその情報を掴んでいるかい?」

「アンデットに関わる一族と言えば・・・アインベルク家ですね」

「そうか・・・アンデットに関わる一族はアインベルク家で間違いないわけだな」

「はい、この王都でアンデットに関わると言えばアインベルク家です」

「そのアインベルク家の当主の名前は分かるかい?」

「はい、アレンティスという17~8歳の男の子です」

「アレンティス=アインベルクか・・・」


 男の声にわずかながら嫌悪感がやどる。その声に受付嬢は困惑し男達に言葉をかける。


「あの・・・アインベルク男爵は、別に悪事を働いているわけではありませんよ?」


 受付嬢の言葉に男は静かに微笑み受付嬢に返答する。先程の嫌悪感を含んだ声とはまっったく違う、優しい声ではあったが、逆に受付嬢にはそれが不安を掻き立てる。


「何も、その男の子を害しようというわけではないよ」


 それだけ告げると、仲間達を伴ってギルドを後にする。


 四人が出て行った後に、冒険者達が口々にさっきの男達について話し始める。


「おい、ひょっとしてやつらアインベルク家に恨みのある奴らか?」

「アインベルク家に手を出すなんて・・・命知らずだな」

「まずいんじゃないか?あれ、外国人だろ?」

「なぁ・・・サリーナ、あいつらに情報教えて良かったのか?」

「大丈夫でしょう。別にこの王都なら誰でも知っていることですし」

「確かにな、でもあの様子だとアインベルク家に喧嘩売るつもりじゃないのか?」


 この王都を拠点とする冒険者達は国営墓地には近づかない。答えは簡単で、命がいくつあっても足りないからだ。

 国営墓地のアンデットは他の地域のアンデット達よりはるかに強い。それが際限なく湧き出てくるのだ。しかもリッチ、デスナイト、デスバーサーカーなどの軍の出動が要請されるようなアンデットも当たり前の様に出没するのだから尚更、近づくことは無かった。

 だが、地方から出てきたばかりの冒険者や名を上げたい冒険者、外国の冒険者ギルドを拠点としている冒険者などは、そんなことは知らずに勝手に墓地に侵入し、多くの冒険者達が命を散らしていた。

 その国営墓地の管理を一手に引き受けるアレンは、毎晩、当たり前のように国営墓地の見回りを行っているのだ。その事を知っている冒険者達は見たことはないが、アレンの実力の高さを伺わせるには十分だったのだ。


 アインベルク家の者は王都の冒険者の中では『触れ得ざる者』と呼ばれているのだ。


 冒険者達は、あの男達がアインベルク家にどのような態度をとるのか分からなかったが、あんまり無茶な事をしなければ良いのになと思わざるを得なかった。

いつも読んでくれてありがとうございます。


ブックマークの数が700を超えました。ブックマークしてくれた皆様、ありがとうございます。はげみになります。

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