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茶会②

今回もちょっと短いです。

 アディラの変態親父モードに兄であるアルフィスとその婚約者であるクリスティナの引きつる顔があった。


「アディラ・・・お前、なんて残念な・・・」


 アルフィスの妹に対する声は、可哀想な女の子への憐憫の情に満ちている。その空気を察したのだろうアディラは明らかに不機嫌になる。


「残念ってなによ・・・お兄様、いくら何でも失礼ですわ」


 動揺のせいだろうが、アディラの言葉遣いがちょっとおかしい。アレンはその事に気付いていたが処世術として華麗にスルーする。


「アルフィス様、クリスティナ様、ご機嫌うるわしゅう」


 アレンは立ち上がって二人に完璧な礼儀作法に則り、一礼する。


「アレン、なんでそんな他人行儀なんだよ。ここは王族の私的な場所だぞ」


 アルフィスはアレンにいつものように振る舞うことを要求する。アレンはすかさずそれに応える。


「ああ、勿論嫌がらせのためだ。ここ座るか?それともクリスティナ様と二人きりの方がいいか?」

「いや、ご一緒させてもらうわ。クリスそれでいいか?勝手に決めちゃったが」

「私は構いませんわ。それからアレン、私もいつものようにクリスティナで」

「了解、クリスティナ。アディラの作ったクッキーは本当に美味いぞ」


 アルフィスとクリスティナは、アレン達と同席することになった。それを見てアディラは少し不満げな表情を浮かべるが、アルフィスとクリスティナが隣り合って席に着くことを提案したため、必然的にアレンとアディラは隣り合う形となり、アディラの不機嫌さは一気に解消される。それどころか二人に感謝の表情を浮かべていた。


「アルフィスもクリスティナもまだ学園は休みなのか?」

「ああ、あと4日だな」

「ふ~ん、あと4日したら、試験結果が張り出されるわけか」

「まぁな、今回はちょっと自信がないな。クリスに負けたかも知れん」

「ふふ、アルは数学を間違えたって言ってましたからね」


 クリスティナは静かに微笑んでアルフィスに視線を向ける。アルフィスはその視線を受けてまた微笑む。双方の視線には愛しさが満ちている。

 この二人の婚約は、政略によるものではなく恋愛によるものである。しかし、人目があるときはあまり甘い雰囲気を醸し出さないので、かなり誤解される。アレンは勿論、二人が恋人同士である事も知っているし、だからといって節度を破ることは決してしない付き合いをしていることも知っている。

 だが、あまりアレンの前で甘い雰囲気を出すのは正直止めて欲しい。正直、短時間でも胸焼けを起こしてしまう。


「アレンお兄ちゃん・・・お兄様とクリスティナ様のこの雰囲気・・・同席はつらいです」

「ああ、俺が在学していたときよりもさらに甘さが増してるな・・・」


 アレンとアディラのつぶやきに、アルフィスとクリスティナは、顔を赤くする。アレンが在学中にこの雰囲気を出してアレンにからかわれたことなど枚挙に暇がない。


「ああ、すまないな」


 アルフィスは照れながらアレンに答える。


「それよりもアディラ様、このクッキーはアディラ様が作られたのですか?」


 クリスティナも恥ずかしかったのだろう、やや強引に話題を変える。


「は、はい!!アレンお兄ちゃんに食べてもらうために頑張りました♪しかも、美味しいって褒めてもらったんです♪」


 アディラは幸せそうに微笑む。その表情を見て、アルフィスとクリスティナは生暖かい視線をアレンにおくる。先程まで自分達がからかわれたため、反撃に出たのだ。


「ほ~アディラ、アレンはなんて言って褒めてくれたんだ?」

「アレンお兄ちゃんは『俺のために作ってくれて嬉しい』って、きゃ~~❤」


 アルフィスとクリスティナの視線の温度はさらに生暖かさを増す。その視線に今度はアレンの居心地が悪くなった。ひたすら恥ずかしい。


「まぁアレンたら意外と甘い言葉もささやくのね」

「そうなんです!!クリスティナ様、アレンお兄ちゃんは決して朴念仁なんかじゃないんです!!」

「まぁ、アレンもやるわね♪」


(もう勘弁して!!許して!!)


 アレンは頭を抱える。普通にクッキーを褒めただけなのに、アディラに愛を囁いた事になっている。

 アルフィスもクリスティナもニヤニヤしている。


「まぁアレンをからかうのはここまでにするか」

「そうですね。これ以上はアレンが耐えられませんわね」


 アルフィスとクリスティナはアレンへ向き合う。その表情は緩やかだが、先程のからかう感じは一切無い。

 どうやら本題が始まるようだ。




2016年7月24日に70000PV到達しました。読んでくれてありがとうございます。


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