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今回は魔族Ⅱの後始末会ですので、話に起伏はありません

「よくやった」


 アレンはジュラス王からお褒めの言葉をいただき、正直、自分の耳を疑った。ジュラス王が報告に対して何の指導も入れずに褒めるなどというのは初めてだったからだ。


「ふむ、確かに適格な報告文書ですな」


 王国宰相エルマイン公もジュラス王に賛意をしめす。これまた、何の指導を入れないのは初めてである。


「アインベルク卿の判断は適格だった」


 軍務卿レオルディア侯も指導がなかった。


 アレンは三人の厳しすぎる指導が今日は一切無かったことに拍子抜けてしまった。


「あ・・・あの・・・」

「何かね?」

「今回の報告文書は問題なかったのですか?」

「ああ、何の問題も無い」


 エルマイン公はあっさりとアレンの不安を否定する。


「アインベルク卿、君が手に入れた魔族のアイテムをこちらに譲ってくれないか?」

「勿論です。記録のオーブは魔導院に、魔族のアイテムは技術院に提出します」

「そうしてくれると助かる」


 レオルディア侯は満足げに頷く。


「まぁその後なんですが、魔族がなぜ瘴気を集めているかを教えていただきたいのです。おそらく、これからも魔族は墓地に来るでしょうから知りたいのです」

「勿論だ。おそらくこれからも魔族が墓地に来ることだろう。その時に君が情報を持っていないと思わぬ不覚を取るかも知れんからな」


 どうやら、きちんと情報を回してくれるらしい。


「それでは、今回の報告は以上だね。アレン」

「は、はい、以上です」

「そうか、それなら今日は下がっていいよ」

「分かりました。失礼します」

「ああ、そうそうアレン」

「はい?」

「アディラが会いたがっていた。会ってやってくれ」

「はい。分かりました」

「何なら、泊まっていっても構わんぞ?」


 ジュラス王はイタズラ小僧のようにニヤリとアレンに笑いかける。


「な!!何を言われるのです!!」


 アレンは真っ赤になってついどもってしまう。エルマイン公、レオルディア侯もアレンの反応に若者の初々しさを好ましく思っている様が半分、ジュラス王の際どすぎる冗談を責める視線が半分である。


「し、失礼します!!」


 アレンは執務室からあわてて退出する。執務室から慌てて退出したアレンを見て、エルマイン公がジュラス王に困った方だという視線を向ける。


「陛下、あまり若者をからかわないでください」

「将来の義理の息子だからな。これぐらいは許されるだろう」

「まぁ、今回のアインベルク卿の功績を考えると何が何でもアディラ王女にはがんばってもらいたいものですな」


 エルマイン公はアレンとアディラの婚姻が成立することを心から望んでいる。そうすればローエンシアにアインベルク家をつなぎとめる事が出来るのだ。


 何と言っても、アレンの戦闘力をみすみす逃す手はない。爵位持ちの魔族一行をたった4人で破るのは戦闘力が異常に高いのだ。そんなアレンを逃すのは国家の損失といえる。



「それに、フィアーネ嬢、レミア嬢、フィリシア嬢の三人の実力を考えるとアインベルク卿の重要さはさらに増したわけですな」


 レオルディア侯がいうのも当然だ。フィアーネ、レミア、フィリシアはアレンと共に戦うのを望んでいるのだ。だからこそ、ローエンシア王国のために働いているのだ。アレンがいなければ三人はローエンシアの国に仕えることは決してないだろう。


「確かに、アレンの重要さはここ数ヶ月で一気に増したな」

「はい、アインベルク卿自身の戦闘力、フィアーネ嬢は戦闘力に加えジャスベイン家とのつながり、レミア嬢、フィリシア嬢の戦闘力、我が国への功績は現段階で計り知れませんな」

「そうだな、普通に考えて公爵位を授けるに値するな」

「ええ、本来であればそれで済むのですが、相手はアインベルク家ですからね」

「地位では決してつなぎ止められんからな」


 三者はふぅ~とため息をつく。何が何でもアディラにアレンをつなぎ止めて欲しいところだった。



--------------


 アレンが、執務室を出て、アディラに会いに行く。


 正直、『王女殿下に会いに行って本当にいいのか?』という感じであるが、国王陛下自ら『会ってやってくれ』と言われれば無下には出来ない。


 しかし、どうやってアディラにお会えば良いのか?


 普通に会おうとしても、アディラの私室にいくわけにはいかない。


 さて、どうするか・・・と考えていたところに、向こうからアディラが駆けてくるのが見えた。


「アレン様~♪」

「王女殿下・・・」


 王女ともあろう者が町娘のように駆けてくるのはちょっとマズイのではないかと思ったが、アディラにとりあえず挨拶をする。


「王女殿下、ご機嫌麗しゅう」

「も~アレン様、また王女殿下なんて!!と言いたいところですが、ここでは仕方がありませんね」

「分かっていただければ・・・」

「さて、アレン様、サロンで私とお茶の相手をしていただけますか?」


 アディラが上目遣いでアレンにお願いする。この上目遣いを躱せる男などいるはずもなくアレンはあさりと陥落する。


「良かった~♪さ、アレン様行きましょう♪」


 アディラに伴われ、アレンは王室のサロンに案内される。


 アディラの本当に幸せそうな顔がその光景を見る者を釘付けにする。同時にそのアディラの笑顔を向けられているアレンに対し、嫉妬のこもった目で睨みつける男が続出していた。


 またアレンは敵を順調に増やすことになったのだ。



読んでくれてありがとうございます。


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