表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/602

魔族Ⅱ⑧

戦闘は今回で終了です

 アレン達の容赦ない攻撃の後は、闇姫達のこれまた容赦ない攻撃が交互にゼリアスに襲う。


 ゼリアスの技量は、魔族の中でも上位に入るのだろう。なぜなら、まだ戦闘続行が可能だったからだ。

 普通の、いや爵位持ちの上位魔族であってもここまで戦闘続行がかのうとは思えない。


 それほどの攻撃だったのだ。


 だが、ゼリアスはまだ諦めていなかった。ゼリアスは魔法陣を展開させる。アレン達は大事をとって間合いをとる。


 そこにゼリアスの魔術が発動する。発動した魔術によりゼリアスの四方に高さ5メートルほどの土の壁が形成される。その土の壁には魔力防御が施されており、闇姫達が放った瘴気弾で大きくえぐれたが、破壊までには至っていなかった。


 ゼリアスは壁の中でやっと一息をつくことができた。



 本当に一息だけだったが・・・



 ドゴ!!ドゴォ!!


 と立て続けに轟音が壁を揺らす。


 フィアーネが容赦ない破壊行為を土の壁に行った。簡単に言えば殴りつけたわけだが、ゼリアスはその行為に困惑する。


(破れるわけがない。この土の壁は殴るなんてそんな原始的な・・・え?)


 ゼリアスの視界に壁の内側に、拳が映ったのだ。その拳が引っ込むと次の瞬間にまた拳が視界に映し出される。


(バ・・・バカな・・・素手で破られるわけが・・・)


 ゼリアスが驚くのも無理は無い。自分の大剣を使ってもこの土の壁を破るのは容易ではない。それを素手で破るなんてあり得ないいや、そもそも想定していなかった事態だったのだ。


 

 この壁は長く持たないことを数瞬の自失から自分を取り戻すと、壁を破ってくる相手に備える。


 しかし、穴の開いた壁から入ってきたのは闇姫である。闇姫は形を変えスライムのようにフィアーネの空けた穴から入ってくる、穴の数は5つ。同時に闇姫が5つの穴から侵入し、すぐに闇姫の形になる。


 ゼリアスは剣を振るい闇姫を撃退しようとしたが、自身が形成した土の壁に阻まれ自由に剣を振るうことができない。今まで自分の敵を粉砕してきた大剣がこの狭い空間では自分の行動を阻む事になったのである。


 この段階で、ゼリアスは壁を崩すのを躊躇った。なぜなら解除してしまえば、こんどはアレン達の剣にさらされるのだ。となれば、この闇姫達をこの場で始末するしか無い。


 ゼリアスに瘴気を吸収する術は使えない。ネシュアなら使えたのだが、ゼリアスは習得してなかったのだ。それが災いした。それに習得していたとしても、あの術はかなりの集中力を要するため、今の精神状態でゼリアスが使えたかどうかは分からないのだ。


 となると、実力でこの危機を脱するしか無いのだ。


 闇姫は予備動作無しで、ゼリアスに殺到する。ゼリアスは大剣を構え、最初に突入する闇姫に大剣を突き刺す。


 闇姫の顔面にゼリアスの大剣は突き刺さったが、残念ながらそこに核はなく、闇姫は消滅しない。ゼリアスもこの闇姫が瘴気の塊であり、核を破壊すれば消滅するということを思っていたのだ。

 しかし、残念ながら核の場所までは現時点で分からない。顔に辺りをつけたが書けに破れたわけだ。しかし、ゼリアスは慌てること無く、そのまま剣を振り下ろし心臓の辺りまで切り裂いた。


 だが、これでも消滅しない。頭、心臓の一には核が存在していなかったのだ。闇姫はゼリアスに抱きつく。両手をゼリアスの首に回す様子は恋人同士の抱擁にも見えた。だが、 当然だが、ゼリアスにはその抱擁は少しも魅力的で無い。それどころか死の恐怖を十分に感じさせる抱擁であり『死の抱擁』と呼ぶに相応しいものだ。


「くっ!! 離せ!!」


 ゼリアスは短く叫ぶが、他4体の闇姫達も立て続けにゼリアスに抱きつく。ふりほどこうとしたが、闇姫達の力は想像以上に強く引き離すことはできない。いや、一対一、普段の精神状態であれば、ふりほどくことも可能だったかもしれないが、現在のゼリアスの状況ではそれは不可能だったのだ。


「くそがぁぁぁっぁ!!!!!」


 ゼリアスは引き離せない苛立ちを声に出して発散する。


 その時、ゼリアスに抱擁をしていた闇姫達の体が膨張する。美しい顔が、体が、内部からの膨張を始めたのだ。数瞬後、ゼリアスはその意味を理解した・・・。


 こいつらは自爆するのだと・・・



 その理解はまったく正しく、しかも数秒後に正解だったことが証明された。



 その爆発の威力はすさまじく、周囲の土の壁を吹き飛ばした。当然ながら、アレン達は自爆を仕掛けた以上、土の壁が崩壊することも想定していたため、爆発に巻き込まれるようなマヌケな結果にはならなかった。



 ゼリアスは生きていた。自身の鎧に命を救われたのだ。もし鎧を着けていなければまとめて吹き飛んでいたことだろう。だが、鎧のおかげでなんとか生き残ったのだ。だが、至近距離というよりもゼロ距離であの爆発に巻き込まれた以上、いくら鎧を身につけたといえども無傷ではいられない。


「く・・・くそ・・・が・・・」


 ゼリアスはなんとか立っていたが、ダメージは深刻であった。そんな状況であってもまだゼリアスは剣を構えアレン達に向かってくる。


 さっきまでの動きとは比べものにならないほどの緩慢な動き、もはやゼリアスは脅威を感じる相手ではない。


 だが、アレン達は油断しない。相手がどのような状態であれ、剣を構え、攻撃してくる以上は、適切な対処をする必要はある。


 アレンは、剣を構え、一瞬で間合いを詰めると、腹に突きを放つ。フィアーネの攻撃でヒビが入り、闇姫達の自爆によりさらに傷んだ鎧のヒビにアレンの剣が吸い込まれる。


 ズッ・・・キィン


 アレンの剣は鎧の隙間を抜けゼリアスの腹に突き刺さり、そのまま背中まで貫通する。しかし、鎧の背中にはヒビが入っていたため、そこで止まったのだ。


 腹部を貫かれたゼリアスだがまだ死んでいない。動きの止まったアレンの剣を左手で掴み、大剣をアレンに振り下ろす。


 アレンは振りかぶったゼリアスの右腕を左手で止め、魔力を込めた拳を鎧に覆われた心臓の位置に叩きつける。心臓を打った拳の威力は鎧を突き通し、ゼリアスの体の心臓を破壊する。


 フィアーネが使った、衝撃を内部に伝える技をアレンも使えたのだ。



 心臓に致命的な一撃を受けたゼリアスは膝から崩れ落ちる。その時に、アレンは剣を引き抜いた。剣を引き抜かれたゼリアスはそのまま前に倒れ込む。



 ドサッ・・・


 ゼリアスの目から光が消える。



 アレン達とネシュア一行はアレン達の完全勝利で終わったのだ。

読んでいただきありがとうございました。


よろしければ評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ