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魔族Ⅱ⑤

 予定の半分も進みませんでした・・・


 どうしてこうなってるのか

 ヘルケンが倒れたことにより、アレン達とネシュア達の戦力差はもはや覆せないところまで来ている。


 しかし、ゼリアスはまったく動じていない。どうやらアレン達複数を相手にしても自分の勝利をまったく疑っていない。


 アレンはゼリアスの態度に揺らぎが全く見られないことから、まだ、ゼリアスが勝負をなげていないと察する。


「子爵を殺させるわけにはいかんな」


 ゼリアスはそう呟くと、大剣を地面に突き刺す。それと同時に魔法陣が展開される。魔法陣は数秒で消滅する。

 消滅した後に、10体の魔物が現れている。先程の魔法陣は召喚の術式だったらしい。召喚された魔物は人型の魔物で黒装束に身を包み、腰に通常の剣よりも15㎝ほど短い剣を刺している。


 装い、武器から裏稼業、しかも暗殺などに携わっているような魔物達だ。


「行け!!」


 ザリアスが一声発すると同時に、10体の魔物はネシュアの元にはせ参じるように動き出す。その動きには一切の無駄が無く足音が一切しない。それだけでもこの10体の魔物の技量の高さが分かるというものだ。



 ネシュアの元に駆けつける10体の魔物に立ちはだかったのは、フィアーネとレミアである。


 10体の魔物は、ニヤリと嗤う。たかが人間(フィアーネは見た目は人間と変わらない)、しかも女だ、一息で命を絶とうと残酷な笑みを浮かべる。


 この10体の魔物は殺しが大好きだった。特にひ弱な人間が命乞いをし、這いつくばっているところを殺すのはたまらない。

 自分たちの鍛えた技を振るい、他者の命を刈ることは自分が強者である事を実感させたのだ。


 この女達もそれなりにはやるのだろう。だが、自分たちには通じないはずという自惚れ、いや、人間を見下す気持ちがフィアーネとレミアの実力を測り損ねたのだ。


 先頭を走る魔物が腰に差した剣を抜こうとしたときに、フィアーネの手刀が容赦なく魔物の腕を叩く。


 ベギィィィ!!


 異様な音がして、魔物の腕が砕ける。腕を砕かれた魔物は自分の腕が砕かれたことを痛みが発することで気づいた。あまりの苦痛に叫び声を上げようとしたところに、フィアーネの左掌抵が魔物の左側頭部に決まる。

 見た目はただの掌打にすぎなかったが、魔物は左に大きく吹っ飛ばされる。そして、仲間の男にぶつかり、両者とも倒れてしまう。

 巻き添えを食って倒れた魔物が立ち上がるよりも先に、レミアが魔物の首に剣を突き立てる。喉を貫かれた魔物は恨みがましい光を両目に光らせレミアを睨んだが、すぐに光を失った。

 フィアーネが吹っ飛ばした魔物はすでに絶命している。目、耳、鼻、口から血が流れ出ているのを見れば、魔物の頭の中がすでに目茶苦茶に崩壊しているのは明らかであった。 フィアーネは掌に魔力の塊をのせ放ったのだ。その魔力は魔物の頭部の中を破壊し一瞬で絶命させた。衝撃を内部に伝える技などフィアーネにとって当たり前に使える技だった。


 魔物は仲間が二人あっさりとやられた事に驚愕したが、その事を二人に悟らせることはしなかった。

 残りの5体がフィアーネとレミアの相手をし、残りの3体がネシュアの救援に向かう事をアイコンタクトで決めた魔物達は、5体がフィアーネ、レミアを囲む。舐めて掛かるとあっさりと命を失う相手である事をすでに悟っているからだろう。5体の魔物はうかつに攻め込まない。


 3体がネシュアの元に向かうが、フィアーネもレミアも魔物達から目を離すことはしなかった。


 3体の魔物はフィリシアに襲いかかる。フィリシアは魔物の剣を躱し、剣でいなして間合いをとる。


「子爵閣下、我らにお任せを!!」


 魔物達はネシュアの返答を聞かずにフィリシアに襲いかかった。しかし、フィリシアは慌てない。


 迫り来る魔物に対し、間合いを詰めると、剣を縦横無尽にふるう。三体の魔物達は攻撃を引き受ける役、隙をついて攻撃し弱らせる役、とどめを刺す役と役割分担している。男達の使用している剣は短く、軽いため小回りがきき、防御に徹するに向いていた。事実、主の達が防御に徹すると、余程の実力者で無ければその防御をすり抜けることは不可能だった。


 だが・・・


 フィリシアはそのよほどの実力者だったのだ。しかも、戦闘で磨き上げてきた実践的な剣術だ。騎士が使うような礼儀正しいものではない。

 ただ純粋に相手に打ち勝つための剣術、生き残るための剣術だ。


 正当な剣術に加え、実践で血肉とした技術は、魔物達を圧倒する。


 フィリシアはまず、防御に徹する魔物の足を狙う。まともに入った剣戟は、魔物の足を斬り飛ばした。


「ぎゃぁぁっぁ!!」


 足を切り落とされた魔物の叫び声が辺りに撒き散らされる。2体の魔物が足を切り落とされた魔物の叫び声に気をそらした。時間にして一秒にも満たない隙だった。だが、フィリシアには、それで十分だったのだ。フィリシアは投擲用のナイフをとどめを刺そうとしていた魔物に投げつける。肩と目にナイフが突き刺さる。


「ぎぃぃぃぃぃ!!くそが!!」


 新たな叫び声がまたも墓地に響き渡る。



「あ!!俺の・・・俺の足ぐぅ!!」


 足を斬り飛ばされた魔物の叫び声が中断される。中断させたのはフィリシアだ。フィリシアが地面に倒れ込む魔物の首をはね飛ばしたのだ。


「き・・・きさ」


 ただ一人無事な魔物が呪詛の声をフィリシアに叩きつけようとしたが、フィリシアは聞いていない。肩と目にナイフを受けた魔物に斬りかかったのだ。その事に気付いた魔物はフィリシアを目で追うが、数多くの修羅場をくぐった魔物であったが、あまりの速度に驚きを隠せない。


 フィリシアは振りかぶった剣を魔物に振り下ろす。魔物は自身の剣で受け止めようとしたのだが、フィリシアの剣は魔物の剣をあっさりと切り裂き、左肩から遮る者無く魔物を切り裂く。


 ぶしゃ!!という血が噴き出す音を周囲の者は確かに聞いた。


 残りの魔物に振り返り、静かにフィリシアは魔物につげる。


「あなた如きではね・・・」


 音として発生しなかったが、言語外の言葉を魔物は正確に把握していた。『無駄な死に方ですね』『結果は変わらないんですよ』という嘲り、いや憐憫の言葉を投げかけられたようで、魔物はあまりの屈辱に目が眩む思いである。


「しゃあああああ!!」


 フィリシアが魔物を切り捨てようとし踏み出そうとしたときに、ネシュアが斬りかかってくる。フィリシアはその動きに少々驚く。ネシュアがこの段階で魔物をかばうために動くとは思っていなかったためだ。


 ヒュン!!シュン!!ガキィ!!


 ネシュアの剣をフィリシアは受け止めて、ネシュアに冷たく言い放った。


「へぇ、てっきり、この魔物が殺されるまで動かないと思っていたのですが、少しはマシな状況判断ができたわけですね。まぁ、命の最終段階で成長しても次に活かせないのが哀れですがね」

「ふん、バカが!!死ぬのは貴様らだ!!」

「どこからその自信が来るんですか?」


 事実、フィリシアは疑問だった。戦況は刻一刻とネシュア達を追い詰めている。いや、もはや状況は詰んでいると言ってもいいだろう。ゼリアスが召喚した魔物の実力は、せいぜいヘルケンと同等だ。その程度で戦況をひっくり返すことは不可能である。ネシュア自身もフィリシアに主導権を握られている。この状況でどんな手を残しているのだろうか?


「はぁ!!」


 気合いの入った声とは裏腹にネシュアはフィリシアから離れる。魔物がそこに割って入る。フィリシアが魔物の攻撃を躱し、剣を一閃する。


 ザシュ・・・


 フィリシアの剣は右首から魔物を切り裂き、左首へと抜ける。切り落とされた首はゆっくりと地面に落ちていく。頭が地面に落ちるとそれが合図のように体も倒れ込んだ。


 しかし、ネシュアはおそるべき行動に出た。



 ネシュアは、フィリシアが魔物の首を斬り飛ばす間に、男達の一人を捕まえる。そして、不快な笑顔を浮かべ、アレン達に告げる。


「こいつの命が惜しければ全員、武器を捨てろ!!」


 要するに、人質をとってこの場を脱しようというのがネシュアの考えた『手』だったのだ。その事を理解した。アレン達はあまりの卑しさに苦笑をもらす。そして、全員が思ったのだ。



 『バカ』が釣れたと

 

 戦闘描写がからむと全然物語が進みません・・・。


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