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生贄①

 フィアーネ、レミア、フィリシアがネシュアの再襲撃に備え、アインベルク邸に滞在してすでに七日経った。

 未だにネシュアは襲撃をしてこない。


 襲撃してきたのは、別の者達である。


 俗に言う暗殺者と呼ばれる者達がアインベルク邸へとやって来たのだ。送り込んだのは夜会でアレンと揉めたレオンが送り込んだ者達である。

 いつもであればロムやキャサリンが相手をするのだが、今回はそうではなかった。



 アレン、フィアーネ、レミア、フィリシアは墓地見回りの仕事を終え、邸内でくつろいでいた。そこに暗殺者の来訪である。アレン達にあったのは『面倒くせぇ~』という感情であったが、相手してやらないと拗ねそうだから、相手してやることにする。


 ロムとキャサリンが『私達が応対します』といったが、アレン達が『いや、今日は俺達が応対する』旨をつげる。



 それから、アレンはロムに2,3の指示を出し、それが終わったら先に休んで欲しいと告げる。ロムは恭しくアレンに一礼すると、アレンの指示を遂行するためアレンの前から退出した。


 アレンはフィアーネ、レミア、フィリシアに対してこれから暗殺者をつかまえる旨を告げると注意事項を三人に告げる。


「いいか、みんな、これから暗殺者と戦うんだが、絶対に殺すなよ」

「うん」

「分かった」

「分かりました」

「あと、腕、足を切り落とすなよ。それから骨を砕くなよ」

「え~それは難しいわよ」

「うっかり切り落とさないようにしないと・・・」

「気を付けないと」

「暗殺者を出来るだけケガ無くつかまえる理由は、ネシュアと戦わせるから」

「でも、役に立つの?」

「立たせるさ。フィアーネ、じゃないと生かしておく理由がないじゃないか」

「でもアレン、暗殺者がいくらいても爵位を持つ魔族に何ができるの?」

「色々、使い道はあるさ」


 アレンに、自分を殺そうとしている者に対して容赦するつもりは一切無い。なぜなら、相手もアレン達を殺そうとここに来るのだ。どれだけアレンが命乞いしても助けるような事は一切しないだろう。

 そんな事はわかりきっているため、暗殺者に対していくらでも非人道的な事をすることにアレンはためらいがない。


 そして、それはフィアーネ、レミア、フィリシアも共通した認識だった。そしてこの場にいないがアディラでさえその認識を持っている。この四人はもはや精神的に完全にアレンの妻といっても良かった。



「それじゃあ、いくか・・・数は20人程だな」

「そうね23人ね」

「二人は離れているから見届け人といったところね」

「じゃあ、その二人は私がつかまえますね」

「そうだな、フィリシア見張りの二人を頼むぞ」

「はい♪」


 暗殺者をつかまえるというのにまったく気負いがない。フィリシアは買い物に行ってくるといわんばかりの気軽さで出て行く。もちろん、気軽だが油断はしない。


「じゃあ、いこうか二人とも」

「「うん」」


 アレンは暗殺者の元へ向かう。邸内にいれると後片付けが面倒なので、庭で片付けることにする。


 庭に出ると、アレン達に気付いた暗殺者がニヤニヤして近づいてくる。その数は20人程だ。リーダーぽい男がいやらしく笑いアレンに向け話し出す。


 その振る舞いから、アレンはこの男達が暗殺者などではなく単なるごろつきである事を察する。別行動をしている二人が暗殺者なのか単なる見張りにしかなれないレベルの者なのかは現段階ではわからない。

 だが、アレンは『まぁつかまえれば分かるか』とどこまでも呑気に考えている。


 そんなアレン達にリーダーの不快な声が耳に届く。内容も不快なら声も不快とここまでアレンに不快さを与えることの出来る生物も珍しい。内容は要するに、『アレン達を酷い目に会わせて殺す』というものだった。

 まぁ、テンプレの脅しだったが、アレン達は不快に顔を歪ませる。うっかり殺してしまうか?とアレンは思ったが、自分から『殺さないように』といった手前、自重することにする。それでも20人ぐらいいるんだから一人ぐらいいいよねと思ってしまったが・・・。


「いい女じゃねぇか。この男の前で犯してやったらさぞかし気持ちいいだろうな」


 一人の男の嘲りに回りの男達が笑う。レミアとフィアーネを見て劣情が刺激されたのだろう。そういえばネシュアも似たような事を言ってた事を思い出した。どうやら、ゲスの思考は種族関係なく似かよるものらしい。


「分かってるな?二人とも」

「分かってるわよ、アレン」

「一人ぐらいいいんじゃ無いの?」

「いや、我慢してくれ」


 アレンもフィアーネもレミアも顔が引きつっている。皆殺しにしたいという欲望を必死に押さえる。


「てめぇら、逃げられないように囲め!!」


 リーダーらしい男の声に回りの男達がアレン達の周囲を囲む。

 アレン達は『なんでお前ら如きに逃げなきゃならんのだ』と思ったのだが、口には出さない。この品性下劣な男と話すのは不快さが増すのだ。


 アレン達の周囲を取り囲んだ男達hあ相変わらずニヤニヤと不快な笑顔を浮かべる。ここまで笑顔で人を不快に出来るのは一種の才能だとアレンは思った。ちなみにまったく羨ましくない。


「アレン・・・もういいわよね?」

「もうやっちゃっていいわよね?」


 フィアーネもレミアもこの不快な生物たちとこれ以上つきあうのはいやなようで、さっさと口を閉じさせたいようだ。


「ああ、もう面倒くさいんでやってしまおう。勢い余って殺しても構わんぞ」


 アレンはここまで不快な生物と思っていなかったために当初は出来るだけ傷つけないで捕らえるつもりだったが、気が変わった。


「何いってやがる。てめえらみたいなガキが調子に乗るなよ」


 その声が終わると同時に男達がアレン達に殺到する。


 アレンに襲いかかった男にアレンが拳を叩き込んだ。顎に打ち込まれた拳は男の顎を打ち砕き、男は歯をまき散らしながら3メートルほどの距離を飛んだ。


 フィアーネは自ら間を詰め、飛び膝蹴りを男の顎に見舞う。顎の砕ける感触がフィアーネの膝に伝わる。男は一撃で意識を手放した。


 レミアも、拳を叩き込む。構えの段階で防御をしている男の腕にわざわざレミアは拳を叩き込んだ。男のガードした腕をレミアの拳は打ち砕く、骨の砕ける音が周囲に響いた。



 その様子を男達はありえない目で見る。楽な仕事と言われていたのだ。だが、それはとんでもない間違いであることをようやく男達は悟ったのだ。


 アレン、フィアーネ、レミアは男達を見渡すと、にやりと笑う。その笑顔を見て男達の背筋が凍る。


「さて、捕まえるか・・・」

「そうね・・・」

「少々、痛い目に遭わせてもいいわよね?」


 その言葉は男達に今まで聞いたどの言葉よりも不吉なものとして耳に届いた。



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