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後日譚 ~ジェド&シア~

「お父さん、行ってらっしゃ~い!!」

「行ってらっしゃ~い!!」


 子ども達の声を背にジェドは仕事に出かけていく。振り返り手を振るとジェドの家の扉から妻となったシアと二人の息子ロイとジェインが手を振っているのが見える。

 十年前の魔神、邪神討伐に参加した功績が認められジェドとシアは、冒険者ランク最高位の“ガヴォルム”に昇進し、二人とも男爵の爵位を叙勲したのだが貴族らしい生活を営むでもなく王都フェルネルに居を構えるとパートナーであるシアと結婚したわけだ。ロイとジェインという子宝にも恵まれジェドは幸せ一杯の生活を営んでいた。


「ジェド~」

「おう」


 冒険者ギルドに向かう途中にレナンが声をかけてくる。レナンにジェドは笑顔を見せて返答するとレナンの方も笑顔を返す。レナンの風貌はもはや少年のものではない。十年という歳月が彼を大人の男性に成長させていたのだ。


「今日はジェドと一緒だから心強いよ」


 レナンの言葉にジェドは苦笑する。レナンの現在の冒険者ランクは“オリハルコン”である。本来、ガヴォルム、オリハルコンの冒険者が同一の仕事を受けると言う事は無いのだが、元々同じチームであったという事からレナンがジェドに声をかけたのだ。


「何言ってるんだか。本来レナンの実力ならこの依頼も簡単に達成する事も出来ただろうに」

「何言ってるんだよ。どんな相手でも油断しないように教えたのはジェドとシアじゃないか」

「まぁそうだな。もう俺達にも大事な家族がいるからな絶対に油断なんかしちゃダメだな。予定ではあと一ヶ月ぐらいだろ?」

「うん」


 ジェドの言葉にレナンは嬉しそうに微笑む。レナンとアリアもまた結婚し、アリアは現在妊娠中、しかも臨月間近であった。そのために今回の仕事にアリアは同行していないのだ。


「さて、とりあえずギルドで詳しい話を聞くとしようか」


 ジェドの言葉にレナンは頷くとギルドへの道を急いだ。




 *  *  *


『人間如きが……ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!』


 悪魔の嘲りの言葉は途中で断末魔の叫びに変わる。悪魔が前口上を述べた始めた所にジェドが悪魔の前口上を無視して斬りかかり見事に一刀のもとに悪魔を袈裟斬りにしたのだ。

 ジェドは魔神、邪神の戦いが終わってからもロム、キャサリンの指導を受け続けておりその実力はもはや冒険者最強レベルである事は間違いない。


「う~ん……相変わらず理不尽な強さだ」


 レナンが小さく呟く。言葉の端々に悪魔への憐憫の情が含まれているのは決して気のせいでは無いだろう。


「さて、他に気配もないし終わりだな」

「うん、そこそこ強そうな悪魔だったけどジェドにかかったら一太刀だったね」

「何言ってる。レナンだってこれぐらい出来るだろ」

「いや、いくらなんでも一太刀じゃ無理だよ」


 レナンは苦笑しながら言う。確かにジェドが斬った悪魔を斃す事はレナンも可能だが、それでも一太刀というわけにはいかない。


「それにしてもレナンはまた腕を上げたな」

「そう? ジェドに言われても自信を無くすだけなんだけど」


 レナンの足元には悪魔の手下の下級悪魔の死体が数個転がっている。みな首があらぬ方向に曲がっている。


「ああ、初手の取り方が格段に上手くなっているな。気配がほとんど(・・・・)しなかった。だからこそ一瞬で下級悪魔達を葬ることが出来たわけだな」


 ジェドの賞賛にレナンは嬉しそうな表情を浮かべる。


(流石はジェドだな。完全に気配を消したつもりだったけどジェドは気配を感じることが出来たんだ)


 レナンの喜びは単純にジェドに褒められたからでは無い。ジェドの実力に未だ及ばないことを再確認する事が出来たからである。レナンにとってジェドは自分とアリアを地獄から救い出してくれた恩人であり、兄であり、師である。そして越えるべき高い壁であった。その壁が高ければ高いほどレナンとすれば嬉しいのだ。


「さて、それじゃあ帰ろうか」

「うん」


 ジェドの言葉にレナンが頷くと愛しい家族の元にジェドとレナンは戻るのであった。




 *  *  *


「お帰りなさい」

「お帰りなさい二人とも、ジェドお邪魔してます」

「お父さんお帰りなさい。レナン兄ちゃんこんにちは~」

「お父さん、レナン兄ちゃんお帰り~」


 ジェドとレナンが冒険者ギルドにミッション達成の報告をして家に帰ると出迎えたのはシア、アリア、ロイとジェインであった。


「あれ、アリア来てたのか?」


 ジェドが意外そうな表情を浮かべる。ジェドは帰ったらアリアを呼び一緒に夕食を取ろうと考えていたのだが、すでに家に来ていた事が意外だったのだ。


「うん、だって今日はレナンはジェドと一緒に仕事するって言ってたから帰りに絶対、家に寄るだろうと思ってね。先周りしちゃった♪」


 そう言うとアリアは顔を綻ばせる。美少女と呼んで差し支え無かったアリアはこの十年で“美女”という修飾語が似合う女性となっていた。


「ふたりで依頼を受けるとその晩は必ず家で呑む事になるんだから、アリアも最初から呼んだのよ」


 そこにシアがしてやったりという表情を浮かべながら言う。シアの言うとおり二人で依頼に出かけた時には、ほぼ毎回ジェドの家で酒盛りが行われる事になりアリアも毎回お呼ばれしているのだ。いつもは酒盛りの準備が出来てからアリアを呼びに行くのだが、今回は最初から呼んでいるという順序が逆になったのだ。


「なんだ。そういう事か」


 ジェドは小さく笑うとそこにロイとジェインがジェドとレナンに話をねだった。


「「お父さん、兄ちゃん!! 今日はどんな仕事だったの!?」」


 声を揃えて言うロイとジェインにジェドは微笑み返す。


「そうだな、それじゃあ今日の仕事の話をしてやるか」

「「わぁ~~い♪」」


 ジェドの言葉にロイとジェインは大喜びである。その様子を見てジェド達は微笑む。


 その夜、ジェドの家からは楽しそうな声が響いていた。


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