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後日譚 ~ローエン家とアインベルク家~

 十年後の後日譚となります。これから不定期掲載で各キャラのその後の話を上げていこうと思っていますのでおつきあいくださると幸いです。

「さ~て、終わった終わった~」


 アルフィスは執務室の机の前に山と積まれた書類を見て満足気な声を出す。


「ふむふむ、時間は……お、14時か。俺も中々やるな」


 アルフィスが時計を見ると時刻は14時を回った所であった。アルフィスは現在二十八歳でありジュラス王の後を継ぎ第八代ローエンシア王となっていた。


「お疲れ様でございました」


 アルフィスの言葉に秘書は頭を下げる。


「ああ、お前も今日は休んで良いぞ。ここ数日働きづめだったことだし、嫁さん孝行しろよ」

「はい!!」


 アルフィスの言葉に秘書は顔を綻ばせながら頭を下げる。秘書は大変な愛妻家である事を知っていたのだ。


「今日はアレン達が来るからな」


 アルフィスの言葉に秘書は顔を綻ばせる。ローエンシアの邪神を斃した英雄王と魔神を斃した英雄の仲が良いことは国にとってどれほどの利益があるか理解している秘書としては喜ばしい事この上なかったのだ。

 アルフィスがローエンシア王となって六年経つ。アルフィスは先王ジュラスの改革を引き継ぎつつ、少しずつ移り変わるローエンシア王国の現状にあった改革をアルフィス自身の意向を加えておこなっていた。


「さて、それでは行くとするか」


 アルフィスはそう言うと立ち上がり執務室を出て行く。その様子を秘書は一礼して見送った。




 *  *  *


「クリス!!」


 アルフィスが王城のサロンに行くとそこには妻である王妃クリスティナ、息子のジェラン、娘のメディルが楽しそうに茶会を開いていた。アルフィスが声をかけるとクリス、ジェラン、メディルの顔が綻んだ。


「お父しゃま~♪」

「父上~♪」


 アルフィスの膝にジェランとメディルがひしと抱きつく。ジェランは七歳、メディルは五歳だ。


「ははは、お前達良い子にしてたか?」

「うん!! 今日はアレン叔父様達が来るからちゃんと勉強終わらせたよ」

「わたしはお母しゃまにごほんをよんでもらったの!!」

「そうか、そうか」


 愛しい息子と娘の頭を撫でながら顔を綻ばせる。ジェランもメディルも美形のアルフィス、クリスティナの血をひいているだけあり非常に容姿が整っている。


「アル、今日の執務は?」

「もう終わらせた。今日はアレン達が来るからな」

「あらあら、ジェランと一緒ね」


 アルフィスの言葉にクリスティナは艶やかに笑う。クリスティナは現在、美貌の王妃としてローエンシア王国のみならず近隣諸国の女性達の憧れの存在となっているのだ。


「そういうなよ。クリスだってアディラに会うのを本当に楽しみにしてるじゃないか」

「もちろんよ。アディラ様は美しさと可愛らしさを兼ね備える素晴らしい女性となったのよ!! それに娘のルディラちゃんもアディラ様そっくりだし、アレシアちゃんも可愛いわ~フィティスちゃん、アルミアちゃんも可愛いし、ジェラン、メディルと遊んでいる姿を見るだけで……でへへへへへ」

「おい、クリス。ジェランとメディルが見てるんだからその心の声を抑えろ」

「う、分かりました」


 アルフィスの言葉にクリスティナはコホンと咳払いして誤魔化すと、ジェランとメディルはクリスティナを不思議な眼で眺めていた。


(う~ん……クリスは相変わらず“可愛い”が大好きだな)


 アルフィスはクリスティナがまったく変わっていないことに対してため息をつくのであった。




 *  *  *


 そうこうしているうちにアインベルク公爵家の面々が王城に来訪した事が知らされる。当主のアレン、妻のアディラ、フィアーネ、レミア、フィリシア、子どものルディラ、フィティス、アルミア、アレシアの九人である。


「よく来てくれたな。みんな」

「ああ、せっかくのお招きだからな。さ、みんな両陛下、殿下達にご挨拶なさい」

「「「「はい!!」」」」


 アレンがそう言うと子ども達は一列に並ぶと声を揃えてアルフィス一家に挨拶をする。


「「「「アルフィス様、クリスティナ様、ジェラン様、メディル様、ご機嫌麗しゅうございます!!」」」」


 四人の子ども達の挨拶にアルフィス達はにこやかに微笑む。アルフィスはニコニコしながら返答する。


「うん、いつものように元気な挨拶だ。さ、堅苦しいのはこれまでだ。これからは遠慮はいらないぞ」

「「「「はい!!」」」」


 アルフィスがそう言うと子ども達は一斉に返事をするとジェランとメディルの元へ駆け出す。


「ジェラン、あっちで遊ぼうぜ」

「おう。フィティス、アルミアこっちで木登りの競争しようぜ」

「よ~し負けないぞ」


 男の子グループが駆け出し庭先に向かっていく。


「メディル、あっちで本を読もう!!」

「わ~い♪ ルディラ姉しゃま、アレシア姉しゃま、私“エベンの姫と王子様”が良い♪」

「まかせて、ルディラ、まず私が読んであげるから。ルディラは次に“エメトの魔法使い”を読んであげて」

「了解~♪」

「わ~い、お姉しゃま達大好き♪」

「私もメディルが大好きよ♪」

「もちろん私もよ♪」


 女の子グループは中庭のテーブルに向かって駆け出し席に着くと本を開いてメディルに読んできかせ始めた。メディルの眼がキラキラと輝いている。


「なんかこういうのいいわね」

「そうね。あの子達が仲良くなってくれて嬉しいわ」

「そうねウマが合うというやつよね」

「女の子グループは安心だけど男の子グループは庭園を荒らさなければいいんだけど」

「フィリシアは心配性ね」

「フィアーネが大雑把すぎるのよ」


 アレンの妻達が子ども達を見て会話を交わす。その視線は限りなく優しいものである。そこにクリスティナがアディラに抱きつくとアディラはビックリした声をあげる。


「ひゃう、クリスティナ様」

「でへへへへ、相変わらずアディラ様は可愛いわ~♪」

「あんたは相変わらずね」


 クリスティナの行動にフィアーネが呆れた声で言う。ある意味クリスティナのこの行動は想定内であるのだが、それでも王妃という立場にも関わらずそのような行動をとることに呆れるのは仕方の無い事だったのだ。ところがクリスティナはニコニコとしながらフィアーネ、レミア、フィリシアに順番に視線を移すと嬉しそうな声で言う。


「でへへへへ、心配しなくてもあんた達も愛でるわ~♪」

「「「いや、結構よ」」」


 クリスティナの言葉を即座にフィアーネ、レミア、フィリシアは拒絶する。三人の拒絶に少しばかりクリスティナは頬を膨らませ抗議を行う。これが近隣諸国の女性の憧れの王妃の意外な一面である事をこのメンバーだけが知っていたのだった。


「そうそう、聞いたぞ」

「ん?」

「お前の子ども達を初めて国営墓地に連れて行ったそうじゃないか」

「ああ。そろそろ頃合いだと思ってさ」

「ならさ……」


 アルフィスが次にアレンに何を言うか予想はついていた。そしてそのアルフィスの言葉にどう返答するかもすでにアレンは決めていたのだ。


「ジェランも国営墓地の見回りに参加させてやってほしい」

「ああ、いつだ?」

「これから一ヶ月で国営墓地の見回りに参加できるレベルにするさ」

「ほう……お前って結構過保護だったんだな」


 アレンの言葉はジェランの実力が決して自分の子ども達に劣るもので無い事を知っていた事に他ならない。にも関わらずさらに実力をつけてから送り出そうというのはアルフィスの親心に他ならない。


「おかしいか?」

「いや、俺もそうだったからな」

「お互い親バカだな」

「せいぜいバカ親にならないように気を付けようぜ」

「違いない」


 アレンとアルフィスは顔を見合わせると互いにニヤリと笑う。アインベルク家とローエン家は十年経っても友好関係を築いているのであった。


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