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混戦②

 空中に浮かんでいた二つの人影はすっと降りてくる。その途中でイベルが掌から魔力弾をアレンとアルフィスに放つと二人は後ろに跳ぶことで魔力弾を躱した。

 地上に降り立ったイベルとズフィリースと呼ばれた者達はアレン達に露骨な嘲りの表情を見せる。

 

『イベル、ズフィリースお前達どうしてここに?』


 フェルネルの言葉にイベルが即座に答える。


「お前が目覚めたというのに人間と遊んでいるからな。俺達も混ぜてもらいたいと思ってな」


 イベルの言葉にフェルネルとズフィリースもニヤリと嗤う。


「その通りです。フェルネル様。イベル様もあなた様と遊ぶことを楽しみにされていたのですよ」


 ズフィリースと呼ぶ男は、見目麗しい青年の姿をしている。黒髪、黒眼であり額に文様が浮かんでいる。身長は一九〇程の長身であり年齢は見た所二十代半ばといったところだ。黒尽くめの執事服に長剣を腰に差している。


『それは済まなかったな。こいつらが思ったよりも粘るのでな』


 フェルネルはそう言うとジロリとアレン達を睨みつける。


「そうか……あのアレンティスという人間は俺も腕前を見た事があるからな。まぁルベルシアを斬ったというだけでもそれなりの実力があるのは確定だからな」


 イベルの言葉にフェルネルは驚いた表情を見せる。イベルが人間を褒めた事に驚きの表情を見せたのだ。


「ルベルシア? ああ、あのマヌケか……あの程度の奴を斬ったからと言って強者扱いされるのは照れるから止めて欲しいんだがな」


 イベルの言葉にアレンは冷淡に返す。さらにアレンは続けて言う。


「魔神に邪神、その手下か。一体何しに来たか知らんが俺達は魔神を始末するのに忙しいんだ。お前達は邪魔だからどっかに行ってろ」


 アレンの言葉にイベルもズフィリースも僅かであるが不快気な表情を浮かべる。アレンがここでイベルとズフィリースを挑発したのは自分に怒りを向けさせることで他の者達へ攻撃が向かわないようにしようとしたのだ。


「ふ……色々と勘違いしているようだな。あの時の我の力は確かにお前に及ばなかった。だが、今はすでに本来の力を取り戻している以上、人間如きに敗れるはずはない。そしてこのズフィリースもルベルシアとは比べものにならないほどの実力を持っているのだ」


 イベルの言葉にアレンはニヤリと嗤う。


「そうか、どちらでも良いことだ。お前達がどれほど強いか知らんが最終的に勝つのは俺達だ」

「くだらんハッタリだな。我らは神、人間如きが勝てるような相手ではない」


 イベルの言葉にアレンは露骨に呆れた様な表情を浮かべるとまたも冷たく言い放った。


「ハッタリではないさ。ルベルシアは俺に斬られて死んだ。俺の仲間にお前の部下の神も斬られて死んだ。お前達、神を人間が殺したという事実がある以上俺達がお前達を殺せないというのは浅慮な事だと思わないか? 」


 アレンの言葉にイベルはニヤリと嗤う。


「確かに人間が神を殺したという事例はあるがそれは下級神に限ってのことだ。我らのような上級神を殺す事は出来ん」

「そうか、それならお前の……いや、お前達の認識が誤りである事を思い知らせてやろう」

「楽しませて見せろ」


 イベルがそう言うとズフィリースが抜剣しアレンに斬りかかってきた。音を置き去りにした一閃であったがアレンはその斬撃を剣で受け流した瞬間にフェルネルとイベルがアレンに襲いかかる。

 

「でぇぇぇい!!」


 そこにフィアーネが自分に襲いかかってきたデスナイトの両手をねじ切り再生するまでにデスナイトごとフェルネルに投擲した。デスナイトを投げつけられたフェルネルは大剣で弾き飛ばすとデスナイトはそのまま遙か彼方へ飛んでいった。

 そこにカタリナの作成した炎獄魔人(エメンアゴル)雷光魔人(インジム)がフェルネルに、氷蓮魔人(リラムス)はイベルに襲いかかった。


 炎獄魔人エメンアゴルが手にした炎の塊をフェルネルに放つ。フェルネルに直撃するがまったく痛痒を感じる事無く炎獄魔人エメンアゴルの胸を手にした大剣で貫いた。その瞬間である。


 パァァァァァン!!


 その瞬間、炎獄魔人は(エメンアゴル)は破裂する。火花を撒き散らしながら破裂する炎獄魔人エメンアゴルに対してフェルネルは一瞬呆気にとられる。フェルネルにしてみればてっきり爆発すると思っていたのに拍子抜けしたのだ。

 その一瞬の隙をアレンは見逃さない。すぐに間合いに飛び込むと斬撃を放つ。放った箇所は右足である。


 シュパァァァ!!


 アレンの斬撃がフェルネルの足を斬り裂いたがフェルネルは一瞬顔を顰めたがすぐにアレンに斬撃を放った。アレンはその斬撃を後ろに跳んで躱すとフェルネルを見る。

 イベルはこの斬撃の応酬の際にアレンに襲いかかろうとしたのだが、氷蓮魔人リラムスを貫手で貫いた瞬間にアルフィスが斬りかかった事で攻撃を中断せざるを得なかったのだ。

 だがそこにズフィリースがアルフィスに斬りかかり、アルフィスは右太股をザックリと斬り裂かれてしまった。


「ぐ……」


 アルフィスの右太股が斬り裂かれた瞬間にフィアーネ、レミア、フィリシアがすかさずアルフィスのカバーに入る。もちろんアディラの放つ矢も相まって追撃を防ぐことは出来たのだが、今の攻防は一見痛み分けという状況であるが、実際は一歩後れをとった形になる。

 なぜならフェルネルはその高い治癒能力のためにすでに塞がっているが、アルフィスの斬り裂かれた太股は当然ながら治癒魔術をかけない限り短時間で塞がることはないのだ。これはアレン達が負傷すればそれだけ一手後れることを意味している。


「アルフィス、後ろに下がれ」


 アレンの言葉にアルフィスは一つ頷くとひとまず下がる。暁の女神の神官戦士であるユイメがすぐさまアルフィスの右足に治癒魔術を施す。


(う~ん……アルフィスの治癒が終わるまでアルフィス抜きでやるしか無いのか……正直きついな)


 アレンは心の中で顔を顰める。そこにアルフィスの穴を埋めるためにエルヴィンが参戦する。治癒魔術を施した関係で戦闘は可能であるが一人でフェルネルと戦った事でかなり消耗してるのは間違いない。だがエルヴィンが参戦しなければ戦線を維持するのは不可能だった。

 アレン、フィアーネ、レミア、フィリシアであってもフェルネル、イベル、ズフィリース三体を相手では分が悪いと言えた。


「エルヴィンさん、助かります」

「良いって事さ。アレン少しばかり押され始めているからここでふんばらないとな」

「頼りにしてますよ」


 アレンの言葉にエルヴィンは頷く。そこにズフィリースが長剣を振るって斬り込んでくる。ズフィリースの斬撃は凄まじいものであったがフィリシアはその斬撃をスルリと受け流すと即座に斬撃を放つ。ズフィリースはフィリシアの斬撃を後ろに跳んで躱すとニヤリと嗤った。


「ほう人間にしてはやるな。先程の男といい。この連中は中々の強者だな」

「随分と余裕ね」

「貴様の剣は中々鋭いが私に通用するようなレベルでは無い」

「言ってくれるじゃない」


 フィリシアは魔剣セティスを正眼に構えるとズフィリースに斬りかかる。フィリシアは腹部への斬撃を放ち躱されるとそのまま突きの体勢に入り三段突きを放つ。顔面、胸、足と三箇所をほぼ同時に放たれた突きだ。凄まじい速度で放たれた突きであったが、ズフィリースは驚異的な体術でフィリシアの突きを躱すとそのままフィリシアの脇腹に蹴りをたたき込んだ。

 フィリシアはズフィリースの脇腹への蹴りを躱す事は出来ずにまともに受ける。全身鎧フルプレートであった事がどうやら功を奏したようでフィリシアは吹き飛びながらもすぐさま立ち上がる事が出来た。


(く……肋骨を痛めたかしら……)


 フィリシアは立ち上がってすぐにダメージを確認するとどうやら肋骨にヒビが入っているようだった。ズフィリースに雷光魔人インジムが襲いかかるが一合も斬り結ぶこと無くズフィリースに消滅させられる。だがこのためにフィリシアはズフィリースの追撃を受けずに済んだのは事実であった。


 フェルネルとの戦いはイベル、ズフィリースの参戦によりアレン達が押され始めることになったのだった。



 第二巻の発売日が決定しました。2017年12月15日となりますので、お手にとってもらえれば幸いです。


挿絵(By みてみん)


なお購入特典としてSSがつく店舗もございますので12月に入ったら一二三書房様もサイトでご確認ください。

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