混戦①
国営墓地の内部はアレン達一行とフェルネルによって召喚、作成されたアンデッド達が入り乱れる混戦地帯と化していた。視界を覆い尽くすアンデッド達があちらこちらで殺し合いをしているのだ。
「フィアーネ、どんどん持ってこい」
「わかったわ」
アレンがけしかけるとフィアーネは喜々として“牧場”から次々とアンデッドを召喚してくる。もちろんアンデッドをどれほど召喚したところでフェルネルを討ち取るどころか擦り傷一つ付ける事は不可能だろう。
「レミア、フィリシアもどんどんやってくれ」
「了解♪」
「わかりました♪」
続いてアレンはレミアとフィリシアを促す。レミアは運ぶ猟犬、フィリシアは死霊術でアンデッドを作成すると次々と戦線に投入していく。
「カタリナ、ジュセルも遠慮はいらんぞ。費用は国が持ってくれるという話だからな」
「……いいのかしら?」
「アルフィス様自身が言っちゃったからな」
アレンの言葉にカタリナとジュセルは“良いのか?”と思いアルフィスに視線を向けるがアルフィスも苦笑するだけで特段反対する様子もない。
「よし、せっかくだから改良型の魔人形を投入しちゃいましょう」
「せっかくだ。俺も魔石を使った術を少々開発してたんだ。使うとしよう」
カタリナとジュセルは懐から魔石を取り出すと地面に放る。地面に転がった魔石から炎、氷、雷をそれぞれまとった異形の生物達に変貌する。いや、生物というのは少々語弊があると言える。これは純粋な魔力が生物の形に具現化したものであり言わば魔力で作られた人形と言うべきものであった。炎は“炎獄魔人”、氷は“氷蓮魔人、雷は“雷光魔人とそれぞれ名がつけられている。
以前、魔族の傭兵団である『リンゼル』との戦いで使用した時は“破獄の陣”という結界に閉じ込めてから使用していたのだが、カタリナは改良を重ね魔石を核として構成するように改良したのだ。
「じゃあ行け!!」
カタリナの命令を受けた三体の魔人達はアンデッド達に突っ込んでいく。突っ込んでいく三体の魔人達はフェルネルのアンデッド達に襲いかかった。
「じゃあ俺も……」
ジュセルも放り投げた魔石の周辺に瘴気が集まって行く。魔石を核として瘴気があつまりそれは徐々に姿を形作っていく。出来上がった瘴気の人形にアレンは驚きの声をあげる。
「おい、ジュセル……これ禁忌の騎士じゃないか」
アレンの言った禁忌の騎士とは、最高位に位置するアンデッドだ。戦闘能力のみならず使用する死霊術により周辺の生者をアンデッドとして使役する者まで存在するのだ。
「はい、まぁ魔石三個を使って俺の死霊術で形作った紛い物ですが、本物と戦ってもそれほど遜色はないですよ」
ジュセルの言葉にアレンは首を横に振る。アレンが斃した禁忌の騎士とほぼ同等の戦闘力を有しているというのならまったく問題は無いだろう。むしろ過剰であると言っても良いかもしれない。
「よし行け!!」
ジュセルの命令を受け禁忌の騎士が走り出した。立ちはだかるデスナイトを一刀のもとに斬り伏せ塵に帰すとそのままフェルネルに突っ込んでいった。
「さて、露払いとしては十分だな。そろそろ行こうか」
「そ、そうだな。なんかやりすぎの気配がしてきたが行こうか」
アルフィスの言葉にアレンは頷くとそれぞれ剣を構えて走り出す。めざすのは当然フェルネルの首だ。
襲いかかってくるアンデッドを容赦なく斬り伏せながらアレンとアルフィスはフェルネルに向かっていく。フェルネルの作成したアンデッド達はデスナイトを始めとした強力な者達であるがその常識はアレンとアルフィスには当てはまらない。まったく危なげなく斬り伏せていく。
『図に乗るなよ人間が!!』
フェルネルは突っ込んでくるアレンとアルフィスを見て瘴気を両手に集めると巨大な剣を作り上げる。柄の長さだけで1メートル弱、刀身を入れれば三メートルにも届きそうな巨大な剣である。
頭上に掲げた大剣をフェルネルは一気に振り下ろす。アレンとアルフィスは驚異的な速度でフェルネルの大剣の一撃を躱すとそのまま間合いに飛び込み斬撃を繰り出した。だが、フェルネルは振り下ろした大剣を即座に横薙ぎの剣閃に変化させるとアレンの胴を狙った。
キィィィィィン!!
アレンはその横薙ぎの剣閃を自らの斬撃を中断しフェルネルの斬撃を受け止める。手にしている魔剣ヴェルシスに魔力を込め受け止める事に成功したのだ。そしてフェルネルは反対方向から斬撃を繰り出したアルフィスの斬撃を左手に魔力を込め強化すると受け止める。
「ち……」
アルフィスの口から忌々しげな声が漏れた所にアレンに受け止められていた大剣で今度はアルフィスを薙ぎ払おうと斬撃を放った。アルフィスはそれを後ろに跳んで躱すとその隙をついてアレンが再び斬撃を繰り出す。
フェルネルはそれをすかさず受ける。アレンとアルフィスを相手にフェルネルは互角以上の戦いを展開している。魔神相手に二人で戦いを挑み討ち取られないアレンとアルフィスを褒めるべきか、アレンとアルフィスを相手に互角以上の戦いを展開出来るフェルネルを褒めるべきか判断は分かれるところだろうがそれでも三者の戦いが桁違いである事は間違いないだろう。
剣戟を展開していたアレンは突如後ろに跳び気を伺っていた“仮面”の間合いに入り込むとそのまま回転しながら斬撃を放ち仮面の首を刎ねとばした。不意をつかれた仮面はアレンの斬撃を躱せなかったのだ。はね飛ばされた仮面の首を空中で掴んだアレンはフェルネルに投擲する。
ゴゥ!!
凄まじい風切り音を発しながら投擲された仮面の頭部はフェルネルの顔面に向かって飛ぶ。フェルネルは投擲された頭部をあっさりと躱した瞬間に一本の矢が放たれた。射たのは当然ながらアディラである。
フェルネルは射られた矢を左手で何でもないようにつかみ取った瞬間にアルフィスが飛び込み胴を薙いだ。フェルネルは瞬間的に身をよじることでアルフィスの斬撃を躱す事に成功する。
アレンは間合いに踏み込むとそのままフェルネルの頭部に斬撃を放った。
キィィィィィン!!
アレンの斬撃をフェルネルは自らの大剣で受け止める事に成功する。
(くそ……人間如きをなぜこの我が斬り伏せられぬ)
フェルネルは心の中で忌々しげに呟く。現在互角以上の戦いを展開しているが討ち取る事が出来ないことに対して忌々しさがつのる一方であった。もちろん切り札は持っているために追い詰められたという状況では無い。だがアレン一行もまだまだ余力があるのは事実である事も察していた。
(この我が人間達如きに死力を尽くさねばならんのか?)
フェルネルはアレンとアルフィスと剣戟を再び展開しながら、浮かび上がる考えに心の中で首を横に振る。
ガシャァァァァァァッァァアン!!
そこに何かが砕ける音が響き渡る。王都の結界を何者かが突き破った事をアレン達はすぐに察する。王都の結界は強力なものであり並のものでは破る事は出来ない。それを破った事から相当な実力者である事は確実であった。
空中に二体の人影が見える。アレンは一体の人影には見覚えがあった。
『イベル……そしてズフィリースか』
フェルネルの口から両者の名前が紡ぎ出された。




