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復活⑩

「隊長、あそこの壁に穴が空いてますぜ」


 一人の冒険者風の男が指を差し示しながら言う。


「どうやら結界も消えたようだ。あそこからアンデッドが出てくるのを何とか食い止めるぞ」


 冒険者風の男にそう答えたのはドルゴート王国の元勇者であるジェスベルである。アルフィスの集めた冒険者、傭兵達のリーダーとなっていたジェスベルは、メンバー達と合流し国営墓地に向かう途中で国営墓地をぐるりと取り囲む壁の一部が消しとんでいる場所を発見したのだ。

 その壁の穴の向こうからアンデッド達が次々とこちらに向かってきているのが見えたのだ。


「おい、デスナイトじゃないか!?」

「リッチもいるぞ!!」

「あれって死の聖騎士(デスパラディン)じゃないか!?」

「なんだよこれ」


 ジェスベルの仲間達は一斉に恐怖の声を上げる。アルフィスから情報を聞いていたはずなのだが実際にデスナイトやリッチなどが自分達に向かってきているというのはその恐ろしさは桁違いだった。


「ジェスベル、仕掛けるわよ」


 そこにドロシーが弓を構える。同時に魔術師のロフも魔術の詠唱を手早く始めると向かってくるアンデッド達に向けて魔術を放った。ロフが放った魔術は【聖炎ホーリーフレイム】だ。

 ロフの放った聖炎ホーリーフレイムはそのままアンデッド達に直撃するとデスナイトや死の狂戦士(デスバーサーカー)をほぼ一瞬で焼き払った。魔術の精度も威力もかつてのロフとは比較にならないレベルである。ロフの魔術に仲間達は喜色を浮かべる。


 ロフの魔術から逃れた死の聖騎士(デスパラディン)が向かってくるのを確認したドロシーは番えた矢を放つ。放たれた矢は一直線に死の聖騎士(デスパラディン)に飛んでいく。

 死の聖騎士(デスパラディン)は盾を構えてドロシーの放った矢を受け止めようとするがその手前で放った矢が爆発したのだ。


 ドゴォォォォォォォ!!


 爆風が収まったとき吹き飛んでいた死の聖騎士(デスパラディン)が立ち上がるのが見える。死の聖騎士(デスパラディン)は防御力が非常に高いために爆発に巻き込まれても消滅するような事は無かったのだが、爆発の威力は凄まじく吹き飛ばされてしまったのだ。


「よし、みんな討ち取るのを目的とするのでは無くここを通さないことを最優先に考えるんだ」


 ジェスベルの言葉に仲間達は頷くと青い顔をしながらも武器を構える。


「ジェスベル、俺とお前で最前線をはろう。みんなは俺達の援護に徹してもらう」

「そうだな。長引きそうだ。長く戦えるような状況に持っていこう」


 カルスの提案にジェスベルは頷くと仲間達に向かって指示を出す。


「俺とカルスがあいつらに向かうからみんなは俺達の支援に徹して欲しい」


 ジェスベルの指示に仲間達は頷く。ジェスベルとカルスは武器を構えると仲間達の五歩程前に立つとアンデッド達を迎え撃った。




 アレン達に頼まれたジェド達と黒剣こくけんはジェスベル達に合流するために国営墓地の外側を走っている。


「ジェド、新手」


 レナンが指差しながら言うと全員が戦闘態勢をとった。レナンの指差した方向には壁をよじ登ったデスナイトが飛び降りてきたのだ。フェルネルの衝撃波により結界発生装置が破壊され結界が破られた事によりアンデッドの中には壁をよじ登る者が何体も現れているのだ。


 出会ったアンデッドをジェド達は確実に仕留めていたが、一々アンデッド達と戦闘になるので時間がかかり未だに合流する事が出来ないという状況であった。


「やるぞ」

「おう」


 ジェドの言葉にアルガントも剣を構える。黒剣こくけんはジェド達と行動を共にしていたためにその実力はもはやプラチナクラスとは大幅に異なってる。

 黒剣こくけんのレンジャーであるベシーが小型の弓を構えると壁上のデスナイトに放つ。見事に顔面に突き刺さるがデスナイトは何ら痛痒を受けたようには見えない。顔面に矢を突き立てた状態でデスナイトは壁上から跳んだ。

 デスナイトが壁上から跳んだ瞬間にデスナイトの顔面に刺さった矢の鏃に込められた浄化ピュリファイが発動し顔面を浄化すると着地を失敗し地面に落ちる。その隙を見逃すことなくジェドがデスナイトの心臓の位置にある核を斬り裂くとデスナイトは塵となって消滅する。


「ベシーさすが」


 剣士であるイライザがベシーを賞賛する。仲間から賞賛されたベシーはその表情を綻ばせる。ベシーは結構おだてに弱いという面があり褒められると非常に喜ぶという単純な面を持っているのだ。


「まかせたまえ」


 ベシーの言葉に全員が苦笑する。ここまで分かりやすい反応だと好意的に考えざるを得なくなるというものだ。


「よし、いくぞ」


 アルガントがそう言うと全員が頷きまた一行は走り出した。


「しかしジェド、結界がもう一度はられないとアンデッドが次から次に出てくるな」


 アルガントの言葉にジェドは頷かざるを得ない。どう考えても現状は不利から悪いになりかけている。ジェド達が走り抜けた後にアンデッドが壁をよじ登っていればアンデッドが王都の中を徘徊し始めていてもおかしくないのだ。


「それは仕方が無いさ。もうしばらくしたら王都の冒険者が動き出すから少しは楽になるはずだ。だがデスナイトとかのアンデッドに遭遇したらきついな」


 ジェドの言葉にすかさずシアが言う。


「そうは言っても私達にはどうすることも出来ないわ。一刻も早くアレン達がフェルネルを斃してくれるまで損害を軽微にするために目の前のアンデッドを斃していくしか無いわ」

「シアの言う通りね。私達に出来るのは目の前のアンデッドを斃す事よ。それに全力を尽くしましょう」

「そうだな。俺達は俺達の出来る事をやるとしよう」


 ジェドの言葉に全員が頷く。


「あ、あそこ」


 魔術師兼治癒術士のリベカが指差した先にジェスベル達が襲いかかるアンデッドと戦っているのが見えた。


「さすがはジェスベルさん達だな。まったく危なげなくアンデッド達を始末して言っている」


 ジェドの言葉に全員が頷かざるを得ない。ジェスベル達はアンデッド達とまともにぶつかることをせずに上手く力をいなしてアンデッド達の攻撃を空回りさせていた。そのためアンデッド達の大群が襲いかかってもジェスベル達は戦線を維持していたのだった。


「ジェスベルさん!!」


 ジェドが叫ぶとジェスベル達がほっとした表情を浮かべる。数は少ないが戦力としては十二分な援軍である事を知っているジェスベル達は知っているのだ。


「よし心強い援軍が来たぞ」


 ジェスベル達の士気はさらに上がるのであった。



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