復活⑧
アレンが駆け出すと同時にフィアーネ、レミア、フィリシアも続く。駆け出す四人を援護するようにアディラは矢を番えるとそのままフェルネルに向かって矢を射かける。
放たれた矢をフェルネルは余裕でつかみ取った瞬間にフェルネルの背後から土で出来た巨大な腕が二本現れるとそのままフェルネルを掴む。土で出来た両腕の大きさは手だけでフェルネルを覆い尽くすほど巨大なものだ。カタリナの術である【土腕】である。
ドガァァァァァ!!
だがその拘束は一瞬で砕かれる。フェルネルの膂力はカタリナの土腕を遥かに上回っており土の巨腕をあっさりと破壊したのだ。
「雑魚が……そんな児戯がこの「うるさいよ」」
フェルネルがカタリナに嘲りの声を叩きつけようとしたときにアレンがその嘲りを中断させる。間合いに入ったアレンがフェルネルの足に向かって斬撃を放ったのだ。アレンの斬撃をフェルネルは後ろに跳んで躱す。
(巨体となったのに動き自体は速くなっているな)
アレンはフェルネルの動きを見て一先程とはまったく異なる相手である事を察した。後ろに跳んだままフェルネルはアレンに向かって魔力弾を放った。間合いを詰めようとしたアレンに向けて高速で放たれた魔力弾をアレンは魔剣ヴェルシスに魔力を込めて強化すると綺麗に上方に受け流した。受け流された魔力弾は空中に飛んでいき事なきを得たが、フェルネルは足を止めたアレンに向かって飛び込むと右拳を打ち下ろした。
(まずい……)
アレンは咄嗟にその一撃の威力の強大さを察すると後ろに跳んで躱した。アレンが後ろに跳んだ事を察したフィアーネ、レミア、フィリシアも同様に散会する。
ドゴォォォォォォ!!
凄まじい爆発が国営墓地に響く。フェルネルの魔力の籠もった右拳が地面に衝突し爆発したのだ。爆風が収まった時にアレン達の目には大きく抉れた地面が直径20メートル程のクレーターとなっている光景だった。
「ふん、逃げ足の速い連中だ」
フェルネルは吐き捨てるともう一度魔法陣を展開する。先程同様に魔法陣からアンデッドが次々と湧き出てきた。
「ついでにこいつらもだ」
フェルネルはさらに次の魔法陣を展開するとフェルネルの周囲に直径一メートル前後の魔法陣が九つ現れるとそこから“仮面”をつけた男達がそれぞれの魔法陣から現れる。
「大盤振る舞いだな」
アレンがフェルネルの作り出したアンデッドと“仮面”を見て小さく呟く。その間にアディラ、シア、アナスタシア、黒剣の魔術師であるリベカの後衛組がそれぞれフェルネルの配下に一斉に攻撃を開始する。
ドゴォォォォォ!! ドゴォォォォ!!
凄まじい爆音が国営墓地に谺する。数十体のアンデッドが魔術により消しとび、アディラの矢に核を射貫かれて消滅していく。だが斃すスピードよりも明らかに魔法陣から湧き出るアンデッド達の方がペースが速い。
(まずいな……このままでは数で押し切られる)
フェルネルの魔法陣から出てくるアンデッド達は無限に湧き出てくるかのような印象をアレン達は持ってしまう。それほどフェルネルの魔法陣から出てくるアンデッド達の勢いが凄まじかったのだ。
「アレン、このままじゃキリがないわ」
フィアーネがデスナイトの胸を貫手で貫き核を破壊し消滅させながらアレンに言う。レミアもフィリシアもアンデッド達を斬り伏せながらアレンの指示を待つ。
「わかってる。あいつらを呼ぶか」
「あいつら?」
「ああ、こうなりゃ総力戦だ。フィアーネ、こっちも牧場からアンデッドを呼び出してくれ」
「わかったわ!!」
アレンの指示を受けてフィアーネはすかさず魔法陣を展開する。その魔法陣の大きさはフェルネルには及ばないものの凄まじい大きさであった。突如展開された巨大な魔法陣に黒剣のメンバー達は眼を丸くしている。
フィアーネの魔法陣が起動すると次々とアンデッド達が国営墓地に現れ始める。フィアーネの召喚したアンデッドとフェルネルの召喚したアンデッド達は双方を敵と定めたのだろう一気に戦端が開かれすぐに不死者同士の戦闘が始まった。戦闘が始まりアレン達への攻撃が収まったところにアレンは次の指示を出す。
「ジェド達、黒剣には国営墓地の外に出たアンデッド達の対処を頼む。すでに王都にアンデッドが徘徊を始めているはずだ。ジェスベルさん達のチームと協力して事に当たってくれ」
続いてアレンが指示を出したのはジェド達、黒剣だ。正直なところ戦力分散は避けたいのだが国営墓地の外に出たアンデッド達を対処するには事情を知っている者達が必要なために仕方の無い事であった。
「わかった!!アレン死ぬなよ」
ジェドが意を決したように言うとシア、レナン、アリアが駆け出す。続いてアルガント達黒剣もそれに続く。
「アレン、また後でな」
アルガントの言葉にアレンは笑って頷く。フェルネルと戦うのも危険極まりないのだが、王都に徘徊するフェルネルの生み出したアンデッド達との戦いも十分に危険だったのだ。
「さて……それじゃあ。様子見は終わりと言うことで」
アレンは懐から直径五㎝程の魔珠を取り出す。アレンは取り出した魔珠に魔力を込めると魔珠は赤く光り輝くと空に浮かんでいく。
パァァァァァン!!
空に浮かんだ魔珠はそのまま砕け散り四方に飛び散った。
「これで良し……っと」
アレンはそう言うとフェルネルを睨みつける。その視線を受けてフェルネルはニヤリと嗤う。
「ふん、人間如きが何をしようと皆殺しになる事には変わりはない」
フェルネルの嘲りにアレンは堂々と答える。
「じゃあ、黙って俺達の準備が整うまで待ってくれるという事か。心が広いのか、単なるアホなのか、アホの方だろうな」
アレンの言葉にフェルネルは嘲りの表情を浮かべた。




