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復活⑦

「いやはや……アホで助かったな」


 エルヴィンの言葉にアレン達は頷く。エルヴィンの言葉の意図は人間を舐め腐っているフェルネルを揶揄するものである事に他ならない。アレン達が強者しかも神を斃す事の出来る程の強者である事は実際に戦わなくても察する事ができるだろうにアレン達を下に見るなど愚か以外に何と称すれば良いのかエルヴィンには判断つかなかった。


「仮にも魔神と呼ばれるほどの相手なのですからこれで終わりじゃないですよ」


 アディラの言葉にアレン達は頷く。


「ああ、だがそれなりにダメージを与えられたとみるべきだろうな。その辺どうですか?」


 アレンはエルヴィンに視線を移すとエルヴィンは口を開く。


「ああ、アレンの言うとおりだ。それなりのダメージを与えただろうが多分姿を見せるときには無傷の姿だろうな」

「?」


 エルヴィンの言葉にアレン達は訝しがる。


「フェルネルには再生能力がある。いや再生では無く高い治癒能力と言うべきものなのかも知れんな」


 エルヴィンの言葉に全員が納得の表情を浮かべる。


「つまりただ今大ケガを治癒している最中で、粉塵が収まった時に無傷の姿をさらすことで私達の攻撃は無意味だと演出したいというわけ?」


 フィアーネの呆れるような声はかなり大きい。当然、フェルネルの耳にも届いているだろう。


「でも、私達の攻撃で死ななかったけどケガをしたのを私達は知ってるわ。今更無傷のふりをするというのは無意味じゃないかしら」

「わからないわよ。何と言っても百年単位で眠ってたんだろうから通じるとおもってても不思議じゃ無いわ」

「何か格好悪いわ。アレン様、魔神ってこんなにしょぼい手を使うんですか?」


 すかさず他の婚約者達も口撃を行う。こういう時も婚約者達は非常に連携がスムーズなのだ。


「お前達それくらいしてやってくれ。いくらなんでもフェルネルが可哀想だ」


 アレンは苦笑しながら言う。もちろんフェルネルへの嫌味であるが半分は同情からくるものであった。


「さて、そろそろ粉塵がおさまるぞ……っと、何かでっかくなってるな」


 エルヴィンの言葉に全員が粉塵の向こうにあるフェルネルのシルエットを見るとエルヴィンの言葉通りにフェルネルのシルエットは先程よりも一回り大きくなっているのだ。


『やってくれたな、人間共』


 粉塵がはれた時にフェルネルの姿がアレン達の目に映る。先程までの人間とほぼ変わらない姿は一変し、身長は二メートル半、三つの眼は見開かれ、醜く押し潰れた鼻、口は裂け牙が伸び、耳は大きく尖っていた。筋肉は盛り上がり背中には六枚の翼が黒い光を放っている。姿が変わったためであろうか先程までとは声も異なっている。


「あの、醜い姿の方が何かしっくりくるのは俺だけかな」

「いや、俺もこっちの姿の方が随分と馴染んで見えるな。魔神のなんだからこっちの方が相応しいな」


 アレン達は変貌したフェルネルの姿を見ても動じた様子を見せない。


『ふ……先程までの我と同じと思うなよ。先程までの我はあの姿になるために常に自分に魔力を振り分ける必要があったため全力を出すことは出来なかったが、これからは違う』


 フェルネルの言葉への返答はアレンは興味なさそうに言い放った。


「そうか、ということはこれで打ち止めか? 今までは本気で無かったと言いたいのだろうが、これからはその言い訳は使えないぞ?」


 アレンの言葉にフェルネルは不快気な表情を浮かべる。放たれる威圧感は先程よりも明らかに増しているのにも関わらずアレンに動揺の様子は一切感じられないのだ。それはアルフィス、婚約者達も同様であった。他の仲間達はさすがにそこまでいっていないがそれでも心折れる様子は見られない。


『ふん……』


 フェルネルはそう一声かけると地面に魔法陣が展開される。その魔法陣は巨大なものでありアレン達でさえ見たことの無いレベルの大きさであった。魔法陣が起動すると魔法陣から次々とアンデッドの大群が現れる。スケルトン、ゾンビ、グール、デスナイト、死の聖騎士(デスパラディン)死の狂戦士(デスバーサーカー)、リッチ、死の隠者(リッチハーミット)という実に多彩なアンデッド達が国営墓地に展開されたのだ。


『すでにこの王都をアンデッドの大軍が包囲してある。貴様ら人間に逃げ場などない』


 フェルネルの言葉にアレンは小さく言う。アレンはまったくぶれること無くフェルネルに相対しているのだ。


「あっそ。俺が考えていたよりも悪い状況じゃないな」

『何だと?』

「俺達の想定していた中でもっともやっかいだったのはこの王都中にアンデッドが溢れかえるというものだった。だが、王都のアンデッドが溢れかえるという状況にはなってない。これはまだマシという状況だ」


 アレンの言葉にフェルネルはニヤリと嗤う。


『ふはははは、もちろん王都中にアンデッドを溢れかえらせる事など雑作もないことだ』

「ではなぜそれをしない?」


 アレンとすれば答えは分かりきって言うのだが敢えて尋ねる。


『もちろん戯れよ。一度に殺しても面白くないでは無いか。ここでお前達を殺してアンデッド達に王都中の人間を殺し尽くさせる。それこそ虱潰しにな』


 フェルネルの返答に対してアレンは苦笑する。


『何がおかしい?』


 アレンの反応にフェルネルは怒りの声を上げる。その怒りの声を聞いてアレンは今度はニヤリと嗤う。


「ああ、お前の言動は俺の想定内だ。魔神とか大層な名で呼ばれるがお前完全に名前負けしているぞ」


 アレンの言葉にフェルネルは気分を害したのだろう。怒りの表情を浮かべると魔力による衝撃波を放つ。放った方向はアレン達の方角では無く見当違いの方向であったが、それでも凄まじい威力の衝撃波は国営墓地を覆う壁の一角を消しとばした。そして立て続けに衝撃波を連発すると壁は次々と消しとばされていく。そして最後に結界発生装置に向け衝撃波を放ち装置を消しとばすと国営墓地を覆っていた五重に渡る結界が消滅する。


「あらら、結界装置は高いんだぞ」


 アレンの抗議は的外れであると言える。フェルネルはアレンの抗議に対してニヤリと嗤うと言い放った。


『そうかそれは済まなかったな。死ぬお前達にとってさほど重要な事ではあるまい?』


 フェルネルの言葉にアレンは肩をすくめながら言う。


「いや、関係あるだろ。お前はこれから死ぬんだから関係ないだろうが俺はこの墓地の管理者だからな。下手したら給与が減らされるかもしれん。加害者のお前に償わせると言ってもお前は金を持っているようには見えないからな」


 アレンの言葉にアルフィスがすかさず合いの手を入れる。


「アレン、心配するな。こいつが死ねば今回の損害は不問にすることを俺が父上達にかけあってやる」

「あ、そうなの? じゃあフェルネルお前心置きなく死んでくれ」


 アレンの宣言にフェルネルは怒りの表情を浮かべるとアンデッド達に命令を下すとアンデッド達は一斉に消しとばされた壁に向かって移動を開始する。どうやら墓地の外に出て王都で殺戮を開始しようという考えなのだろう。

 アンデッド達に命令を下したフェルネルはアレン達を睨みつける。その目を見てアレン達も構えを取った。


『神に逆らう愚か者が死んで詫びるが良い』


 フェルネルの言葉にアレンはニヤリと嗤う。


「この国営墓地で勝手が通ると勘違いしたマヌケ風情が図に乗るなよ」


 アレンはそう言うと同時にフェルネルに向かって駆け出した。


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