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参戦②

“国営墓地に毎晩アンデッドが発生する理由”


 こう問われた黒剣こくけんの面々は視線を交わし合う。一般的に言われているような理由では無い事を黒剣こくけんの面々はすぐに察したのだ。


「その表情では一般的に言われていることは違うと言うことを察したようですね」


 アレンの言葉に黒剣こくけんのメンバー達は頷く。


「俺があなた達を雇いたいのはその理由と直結しています。国営墓地には“魔神”の死体が埋まっています。魔神の死体は死んでからも瘴気を放ち続けているわけです。ですから国営墓地には瘴気が充満しアンデッドが発生するわけです」

「魔神……」

「魔神の死体……」

「王都にそんなものがあるなんて」

「瘴気を放ち続ける……」


 アレンから聞かされた魔神という言葉に黒剣こくけんの面々は戸惑いの声を上げる。


「その魔神が甦るに伴い私は戦力を集めているのです」

「甦る!?」

「魔神が甦るのですか!?」


 アレンからもたらされた情報はさらに黒剣こくけん達を狼狽えさせる。


「はい。その際に魔神がどのような手段に出るかまったくわかりません。少なくとも我々は魔神だけではなくその配下も同時に相手取る事を想定しています」

「配下……ですか?」

「ええ、候補はアンデッドの大群、魔人、仮面と言った者達です」

「仮面って何の事です?」


 アレンの言う“仮面”という言葉にイライザは首を傾げながら答える。


「魔神の眷属と思われる者です。便宜上、仮面と呼んでいます」


 アレンの言葉は淡々としている。だからこそ真実味が感じられた。


「当然ながら魔神と称されるような相手ですからその危険度は計り知れません。俺自身の気持ちとすれば参加して欲しいですが、最終的な決定権はあなた達が持っています。そこを踏まえて答えて下さい」


 アレンはここで一度言葉を切ると黒剣こくけんはゴクリと喉を鳴らす。


「俺達と一緒に魔神と戦ってくれませんか?」

「了解しました」


 アレンの問いかけにアルガントは即座に答える。他の黒剣こくけんのメンバー達も頷く。アルガントの決定に従うと言う事だろう。


「死ぬかも知れないよ?」


 アレンの言葉にアルガントは首を横に振る。その表情には迷い、不安があるのをアレンは察した。


「それは冒険者稼業に携わったている以上当然の事です。そして魔神の討伐に参加したとすればその利益は計り知れません。もちろん勝利し生き残った結果ですがね」


 アルガントの返答に今度はアレン達、ジェド達が満足そうに頷く番であった。


「さすがはジェド達が見込んだ冒険者だな。決断力、信頼関係は特筆ものだな」

「だろ? 俺は必ずアレンの試験に合格すると思ってたぞ」

「私もアルガント達なら大丈夫と思ってたわ」


 ジェドとシアの試験という言葉にアルガント達は首を傾げる。自分達はいつアレン達に試験されたのか気付いていなかったのだ。そのため戸惑いながらアルガントはアレンに尋ねる。


「あの……アインベルク侯、俺達はいつ試されたのですか?」


 アルガントの質問にアレンは答える。


「“俺達と一緒に戦ってくれませんか?”という質問です」

「え?」

「正確に言えばあなたがどれぐらいの早さで返答するかというのが私の試験でした」

「どういうことです?」


 アレンの言葉の意図がアルガント達はどうもピンとこないようだった。


「つまり、ここから先は自分の意思を決めれないような覚悟の無い連中はただの足手纏いになるということです」

「……」

「ところがあなた達は即座に決断し、しかもメンバー達もそれに従った。これはあなた達の信頼関係が非常に強固だという事です」

「なるほど……」


 アルガント達はアレンの説明にとりあえず納得したようであった。暁の女神の場合はすでに魔将達との戦いで実力を知っていたために試す必要は無かったのと暁の女神を雇ったのはアルフィスである以上そもそも試す立場に無かったのだ。


「さて、これからあなた達は対魔神の仲間という事になります。俺はあなた達に命令を下す立場になりますが、それはあくまで仕事中の話です」

「?」

「普段の時は俺達は仲間であり対等な関係です」

「はぁ……」

「これからはあなた達の事を呼び捨てしますね。あなた達も私の事は呼び捨てで構いませんからね。ジェド達のように“アレン”でいいですよ」


 アレンの提案に婚約者達もそれに同調する。アレン達の提案にさすがにアルガント達は困惑する。さすがに侯爵を呼び捨て、しかもアディラはローエンシア王国の王女だ。そんな人物を呼び捨てするのは流石に抵抗があった。その困惑を察したジェドが助け船を出す。


「それじゃあ、俺達に倣えば良いんじゃないか?」

「ジェド達に?」

「ああ、アレンは同年の俺達によそよそしくされるのはあまり好きじゃないんだ。俺達が呼んでいるように呼べば大丈夫じゃ無いか?」

「お前達はどんな風に呼んでるんだ?」

「アレン、フィアーネ、レミア、フィリシア、アディラ様だ」

「さすがに王女様を呼び捨てには出来ないか」

「アディラ様は構わないと仰ってくれたがさすがにな」


 ジェドの言葉にアディラが口を開く。


「もちろん私は呼び捨てでも大丈夫ですよ♪」


 アディラの提案であったが、アルガント達は結局ジェド達に倣うことになった。


「それじゃあ、仕事の話は終わったと言う事で、この二ヶ月のお前らの武勇伝を聞かせてもらおうか」


 アレンがすっかり友人に向ける口調でジェド達とアルガント達に言うと婚約者達もそれに乗っかってくる。


「ああ、いいぜ。その代わりそっちも俺達が王都を離れていた間の武勇伝を聞かせてくれよ」


 ジェドが言うとアレン達も頷く。


 それからアインベルク邸のサロンでは楽しそうな声が響いたのであった。 

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