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危難⑪

「さて、ジュスティスお前が周りの雑魚を片付けろ。私はエルグドをる」


 ジェラルの言葉にジュスティスは不満の声を上げる。


「父上の手を煩わせるまでもございません。私一人で殲滅は可能ですのでゆっくりとお休み下さい」

「お前は私が息子にばかり戦わせるような男だと思っているのか?」

「面倒事を押しつける事が多々ある父親であると考えています」

「お前の成長をおもんばかっての優しい父の行動なのだがな」


 父子おやこの会話に妻であり母であるフィオーナが口を挟む。


「まったく二人とも何をやっているのです? ロムさんとキャサリンさんはすでに始めていますよ」


 フィオーナの言葉にジェラル達が視線を移すとキャサリンが魔光を放ち魔族の顔面を撃ち抜いているのが見える。


「ふむ……確かにそうだな。あまり待たせるのも悪いからさっさと片付けるぞ。エルグドは早い者勝ちという事でいいな」


 ジェラルの言葉にジュスティス頷く。


「まぁそういう事なら仕方ない。それじゃあ母上様が合図をしてください」


 ジュスティスの言葉にフィオーナは微笑む絶命している魔族の死体から血液を魔術の力で抜き取るとフィオーナの前に球体を形成する。


「この血球が地面に落ちた瞬間……あらあら」


 フィオーナの説明の途中でジュスティスは魔族に向かって駆け出した。魔族は虚を衝かれたように呆然と立ちすくんだ所にジュスティスの拳がもろに喉に決まると喉を潰された魔族が膝から崩れ落ちる。魔族が倒れ込むより早くジェラルがすれ違い様に崩れ落ちる首を捻ると魔族の首は真後ろを向くことになった。

 ジェラルはそのまま次の魔族に遅いかかかり魔族の喉を引き裂いた。引き裂かれた喉から魔族の血が噴水のごとく噴き出し崩れ落ちる。

 ジュスティスは父であるジェラルが魔族にトドメを刺した頃にはすでに次の魔族を仕留めにかかっていた。ジュスティスは懐から鉄鎖を取り出すと魔族の首に巻き付けるとそのまま魔族を背負い地面に叩き落とした。投げ落とされた魔族はろくに受け身も取ることは出来ずにそのまま頭頂部から落ちる。ジュスティスは意識を失った魔族の喉に膝を落とすとトドメを刺した。

 エルグドの周囲にはすでに誰もいない。ジャスベイン家の父子おやこによって殲滅させられたのだ。


「それではエルグド君……愚かさの報いを受ける覚悟は出来たかな?」


 ジェラルの言葉にエルグドはゴクリと喉を鳴らす。


「舐めるなよ……真祖トゥルーヴァンパイアが相手だからと言ってそう簡単にこの私が敗れるわけは無いだろう」


 エルグドの言葉にジェラルは皮肉気に嗤う。


「舐めてるのはどちらかな? このジェラル=ローグ=ジャスベインを相手に勝てると思う事自体が大それた事であることを思い知らせてやろう」


 ジェラルの言葉には絶対の自信をうかがわせる力強さがあった。


「俺を甘く見るなよ」

「甘く見たくもなるな」

「なんだと?」

「お前達のような覚悟の無いような者達は最初から陰謀ごっこを楽しんでいれば良かったのだ」

「な……貴様は……」


 ジェラルの言葉にエルグドは屈辱の余り言葉が出ない。ジェラルがここでエルグドに言ったのは勿論挑発の意味合いもあるのだが、それ以上に自分の娘であるフィアーネを狩りの対象と捉えていた事が何よりもジェラルの逆鱗に触れていたのだ。


「私の娘を狩りの対象としたお前達を生かしておくつもりは一切無い」


 ジェラルは動く。だがその動きは限りなく静かでありエルグドは間合いに入られて初めてジェラルが動いてることに気付いた。エルグドは間合いに入られた事に驚愕するが腰の剣を抜こうと手をかける。


 ドゴォォォ!!


 その瞬間、ジェラルの左拳がエルグドの腹部に突き刺さる。エルグドが苦痛の声を上げるよりも早くジェラルの第二撃がエルグドに放たれる。ジェラルが放った第二撃は腹部に放った左拳を打ち下ろし膝を打った。そして間髪入れずに右掌打を顎に向かって突き上げる。顎を強打されたエルグドはそのまま後方に吹き飛ばされる。エルグドは空中で一回転すると何とか頭から地面に叩きつけられるという状況を回避することに成功する。


「ぐ……くそ」


 エルグドは立ち上がり腰に差した剣を抜く。剣を構えたエルグドをジェラルは皮肉気な嗤い顔を向ける。それがエルグドには何よりも不快であった。


「ようやく抜いたか……呑気な奴だと思ってつい手加減してしまったな」

「何だと?」

「本来であればトドメを刺しておくところだったのだが、このまま勝負を決めるのはあまりにも惨めだと思ってトドメを刺さなかった」


 ジェラルの言葉にエルグドは答えない。だがプライドを傷つけられたのは確実である。その証拠にエルグドのジェラルを見る目には隠しきれない殺意が宿っている。


「普通に勝負を挑んで来ていれば殺さないという選択肢ももしかしたらあったかもしれんな」


 ジェラルはそう言うと先程同様に静かにエルグドとの間合いを詰める。だが、今度はエルグドはジェラルの動きに反応した。エルグドは手にした剣を上段から一気に振り下ろした。ジェラルは右拳を繰り出す。その動きを見てエルグドは内心せせら笑う。


(バカが!!この距離で拳が届くか!!)


 キィィィィン!!


 だが次の瞬間にエルグドは呆然とする。ジェラルの拳がエルグドの剣に叩きつけられ、その結果自分の剣が折れ飛んだのだ。


「バ、バカな……」


 エルグドの口から今見た事が信じられないと言うような言葉が発せられる。だがそれは現実であった。ジェラルの拳はエルグドの魔力を通し強化した剣を上回ったのだ。

 ジェラルはそのまま拳を振るう。ジェラルの拳はエルグドの顎を打ち抜きエルグドの膝が落ちる。そして次の瞬間、肘振り上げにより倒れることを許されなかった。ジェラルはそのままエルグドに凄まじい速度で連撃を放つ。


 ドガァ!! ゴガァ!! ズシャァァ!! ゴガァァ!! ドゴォォ!!


 凄まじい数の連撃がエルグドを襲う。エルグドはそれを抵抗することも出来ずに受け続ける。ジェラルはエルグドの喉を両手で掴むとそのまま持ち上げるとそのまま両掌に魔力を集中させると爆発させた。


 ドゴォォォォォォ!!


 エルグドは喉を砕かれそのまま地面に転がった。ベルゼイン帝国の第一皇子であるエルグドの最後であった。


「ここが戦場いくさばである事を忘れたのがお前の敗因だ」


 ジェラルは動かなくなったエルグドに対して冷たく言い放った。



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