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危難⑧

「二人ともエルヴィンさんの呼び出した連中を知ってるのか?」


 アレンが二人に尋ねるとレミアとフィリシアは複雑な表情で頷いた。


「う、うん、この間私達がイベルの部下を斃したって話をしたじゃない」


 レミアの言葉にアレンは話が繋がったと納得の表情を浮かべる。


「ひょっとして死体をエルヴィンさんに引き渡したっていってた神なのか?」

「うん、間違いないわ。あいつらは私とフィリシアで間違いなく斃した奴等よ」


 レミアの言葉にフィリシアが続く。


「ただ、あの大きい神だけは死んでなかったですけど……」


 フィリシアがフォルベルを指差して言うと全員がそちらに視線を移す。するとエルヴィンが振り返ると口を開いた。


「ああ、レミア君、フィリシア君の協力に心から感謝するよ。このフォルベル以外は死んでたから“修理”が大変だったけど何とか修復させることが出来たよ。快くフォルベルが協力してくれたから成し遂げることが出来た。なぁフォルベル?」


 エルヴィンがフォルベルに声をかけるとビクリと体を震わせフォルベルがその巨体を縮こまらせエルヴィンに跪いた。


「ははぁ!! お役に立てて幸いでございます!! このフォルベル、エルヴィン=ミルジオード様のお役に立てることだけが幸せにございます!!」


 フォルベルの態度にレミアとフィリシアが目を丸くしていた。エルヴィンならばフォルベルを屈服させることが出来ると考えていたのだが想像以上の屈服ぶりに驚くしか無い。


「それでは始めろ。5分以内にあいつらを全滅させるのが目標だぞ」

「はっ!!」


 エルヴィンがそう言うとフォルベルは慌てて立ち上がると体中に文様が浮かび上がらせるとグラムス、ケイラの額、右手、左手に文様が浮かび上がった。そこにエルヴィンがグラムスとケイラの背中をポンと押すとグラムスとケイラが魔族達に向かって歩き始める。


「く、来るぞ!!」

「構えろ!!」


 魔族達が向かってくる二体の神に対して戦闘態勢をとる。魔族達は当然ながらエルヴィン達の会話を聞いておりグラムスとケイラが神であることを知っている。ハッタリである可能性も十分に考えられたのだが、新手として現れた連中の凄まじい実力にハッタリだという考えはどんどん小さくなっていった。


 グラムスとケイラはゆっくりと歩き魔族達に近付いていく。そして、突如魔族達に襲いかかった。それは静から動への一瞬の変化であり魔族達にとっても常識外の速度であった。


「が……」


 グラムスの貫手が魔族の腹を貫き背中まで突き抜ける。腹を貫かれた魔族はしばらくすると痛みが発生したのだろう苦痛に顔を歪める。

 ケイラが振りかぶった拳を魔族に叩きつけるとまともに受けた魔族の顔面が砕け散り残った体が地面を転がった。


「ふむ……戦闘技術は稚拙だな。初動が丸わかりだ」


 エルヴィンの気落ちした声にジュセルが呟く。


「基準がおかしいだろ……腹を突き破る貫手、顔面を粉々にする拳……どう考えても一級品じゃ無いか」


 ジュセルの呟きが聞こえたのだろうエルヴィンは振り返るとジュセルを窘める。


「何を言ってるんだ。あんな拙い戦闘技術ではお前達レベルになれば足止めにもならん」

「いや、あのスピードとパワーなら足止めぐらいにはなるだろ。少なくとも俺は斃すのは苦労するぞ」

「ぎゃあああああああああ」

「何を言ってるんだ。あの程度なら五分以内に斃せなくてどうする」

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

「助けてくれぇぇぇぇえ!!」

「そうは言ってもさ。一応神の体を使ってるんだろ。並の人間じゃ太刀打ちできるわけ無いじゃないか」

「ひぃぃぃぃ!!」

「それにしても煩いな。もう少し静かに出来ないものかな」


 エルヴィンは煩わしげに魔族との戦闘に視線を移すと惨殺されている魔族達の姿が目に入る。

 腕を引きちぎられた魔族が苦痛に呻きながら蹲る所をケイラが思い切り踏みつけ頭部をぐしゃりと潰すという中々残酷なシーンが展開されている。


「いや、そりゃ無理だろ。腕が引きちぎられて叫ばないなんてよっぽど鈍い奴じゃないと無理に決まってるだろ」


 ジュセルのツッコミにエルヴィンは意に介した様子もない。


「そうか。それにしても魔族といってもやっぱり個体差は大きいな。どうせなら一流どころを連れてきてもらわないと実験としては不十分なんだよな」


 エルヴィンのぼやきに三皇子達は顔を引きつらせる。今回彼らが連れてきた者達はまず一流と読んでも差し支えない実力を有しているはずなのにまったく相手にならないのだ。


「ひぃぃぃぃ!!…がぁ」

「うわぁぁぁぁぁあ!!げふぅ」


 エルヴィンはとなりのジャスベイン一家の戦いの場から発せられた魔族達の断末魔に目をやると空中に浮かんだ血液で出来た球体から飛び出した突起に絡め取られた魔族達が高速で振り回され互いにぶつかり砕け散っていくのが目に入った。


「あっちも終わりそうだな」


 エルヴィンは今度はロムとキャサリンに目を移すとロムの踵落としが魔族の頭頂部に決まり魔族の頭部が押しつぶされ絶命するのが目に入った。

 それが最後の魔族でありロム達の勝利が確定していた。


「ロムさんとキャサリンさんは早々と終えたか。やっぱり効率の良さが段違いだな」


 エルヴィンの言葉にジュラスが頷く。


「ああ、流石だな。さっさと終わらせろ」

「そうだな」


 ジュラスの言葉にエルヴィンは頷くと残った魔族に視線を移すとケイラが間合いを詰める。魔族は剣を構えると斬撃を放ちケイラの喉を斬り裂いた。喉を斬り裂かれたケイラの首から血が噴き出すと魔族は呆気にとられる。まさか自分の斬撃が通じるとは思っていなかったのだろう。

 だが、ケイラは倒れる事無くそのままの速度で魔族の顔面を掴むとのそのままねじ切った。今度は魔族の首から血が噴き出すとそのまま倒れ込んだ。


「あ、そいつはもう死んでるから首を斬り裂いても……まぁもう遅いな」


 エルヴィンがそう言うと魔族の冒険者グループは壊滅した。敵を殲滅したグラムスとケイラはエルヴィンの傍らに戻ってくる。少し遅れてフォルベルもエルヴィンの傍らにやってきて跪いた。


「ふむ……とりあえずこんなものか。お前達はもう帰って良いぞ。あとで調整するからな」

「はっ!!」


 エルヴィンの言葉にフォルベルは跪きながら返答する。そのままエルヴィンが両手を打ち鳴らすとフォルベル達の足元に魔法陣が展開されるとそのまま三体の神達は消え去った。


「それじゃあ、ジュラス行こうか」


 エルヴィンの言葉にジュラスは頷くと三皇子達に向かって歩き出した。ロム、キャサリン、ジャスベイン一家もそれぞれ敵を殲滅し三皇子に向かって歩きだしていっている。


 三皇子達の危難は最終段階を迎えようとしていた。



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