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危難①

 早速共闘……


 アレンの言葉に全員が頷いたのは、この国営墓地に自分達以外の気配を感じたからだ。アレン達が感じた気配は魔族のものである。アレン達とイリム達の戦いが終わったタイミングで現れたという事は確実に敵対行動をとる可能性が高い。


(さて……状況は悪いな)


 アレンは自分達の状況と侵入者が魔族である事を考えるとかなり状況的にはまずいと考えていた。

 

「アレン、私が前に出るわね」


 フィアーネの言葉にアレンは首を横に振る。いつものフィアーネならば即座にアレンも頷くところだろうが今のフィアーネならばそれは避けるべきとアレンは考えたのだ。


「今の段階で個人プレーは控えた方が良さそうだ。フィアーネ、レミア、フィリシアは俺と一緒に行動してくれ」

「うん♪」

「わかったわ」

「わかりました」


 アレンの言葉に名を呼ばれた三人は嬉しそうに返答する。その光景を見てアディラは少しばかり寂しそうな表情を浮かべる。


「アディラは全員の支援を頼む。俺達が生き残るかどうかはお前が鍵を握っている」

「え……はい!!」


 アレンの言葉に先程の寂しそうな表情は即座にどこかに飛んで行ってしまった。ものすごく嬉しそうにアレンの言葉に返答する。


「アルフィス、ジュセル、カタリナはアディラの護衛に加わってくれ」

「確かにそうなるな」

「わかりました」

「了解したわ」


 次のアレンの指示にアルフィス、ジュセル、カタリナも賛同する。アルフィスに至ってはそれしかないという様子だった。


「イリム達は自分達で戦えるだろうから俺が指示しない方が戦いやすいだろう」


 アレンの言葉にイリム達は頷く。拙い連携など互いの足を引っ張るだけだけという事で別々に戦う事をアレンは提案しイリム達もそれを受け入れたのだ。


「基本的な戦い方はアレンティスの指示でまったく異論は無いんだが……」


 イリムの言葉にアレン達は視線をイリムに集める。イリムが何を言うか視線で促す。


「おそらく侵入してきた魔族が誰かは察しはついている。その時は俺達も発言したいんだが良いか?」


 イリムの言葉にアレンは苦笑しながら頷く。アレンは続けてイリムに言う。


「その辺は気にしなくても良いよ。好きにやってくれ。俺達もそうするからさ」


 アレンの言葉にイリム達はニヤリと嗤いながら頷く。


「どうせあいつらだろ。今まで我慢してきたんだから遠慮はもうしなくて良いよな」

「そうね。我慢しなくて良いなんて素敵ね」

「まったく……お前達は少しばかり加減しないとイリム様とアルティリーゼ様が恥をかくことになるぞ」

「フォルグ気にしなくてもいいわよ。私もあなた達を事あるごとに見下すあいつらにこれ以上好き勝手させないわよ」


 アルティリーゼ達は思い思い発言する。その光景を見ていたアレン達は視線を交わしながら様子を伺っていた。


「そうか……でも場合によっては俺達は先制攻撃を行う事もあるからそのつもりでいてくれ」


 アレンの言葉にイリム達は頷くと侵入者達がアレン達の元にやって来る間に迎撃の準備を始めるのであった。




 *  *  *


 国営墓地を多くの人影が歩いている。向かう先はこの国営墓地で先程まで激しい戦闘を行っていた両陣営のいるところである。


「兄上……どうやら戦闘はすでに終わってるようだな」


 そう声を発したのはベルゼイン帝国の第三皇子のトルトである。


「かなりの激戦だったのだろうな。どっちが勝とうが両陣営とも満身創痍のはずだ」


 そう答えたのは同じくベルゼイン帝国の第二皇子であるアシュレイである。


「確かにそうだな。今なら生き残りをまとめて始末する事が出来るだろう。アルティリーゼにはここで消えてもらいその責は人間達に負ってもらおう」


 ベルゼイン帝国第一皇子のエルグドがニヤリと口元を歪ませて言う。エルグドの容姿は醜悪というわけではないのだが、その表情には見るものを不快にさせる何かがあった。表情には心根が反映されると言う事だろう。

 この三皇子が自らアルティリーゼの暗殺の場に来た理由は、互いが互いを見張るためである。三皇子にとってアルティリーゼは皇位継承の最大の障壁とみなされており、その排除を成功したものが皇位継承で一歩先んじることが出来ると信じていたのだ。

 皇帝であるイルゼムがアルティリーゼに隠者ハーミットの対処を命じた事が三皇子にとって衝撃であったのだ。すなわちアルティリーゼの実力を信頼しているという事と同時に三皇子の能力に不安を持っているという証拠であった。


「しかし、もったいねえな。皇女様ってのは相当な美女なんだろ?」

「ああ、そうらしいな。少しぐらい楽しんでも罰は当たらないんじゃねぇか?」

「流石にそれは無理だろうな。でもイリムの仲間にディーゼとか言う女もいるらしいぞ。そっちは大丈夫だろ」

「それからその墓守の方にもかなりの美女がいるという話だぞ」

「人間かよ。たまには人間のような下等生物の相手も良いか」

「もの好きだな。お前」


 三皇子に付き従う魔族達は品性のかけらもない言葉をこれまた品性のない表情で言う。この魔族達は三皇子が独自に集めた者達で数は二百程だ。さすがに皇女を暗殺するというのに近衛騎士達を使うわけにはいかないために手配したのだ。


 エルグドが手配したのはベルゼイン帝国の闇ギルド『むくろ』という半傭兵、半犯罪者の集団だ。戦いにおいては『リンゼル』に一歩譲るがその残虐性は遥かに上回る。特にギルドマスターのオルドマの残虐性は凄まじいものだった。エルグド直属の騎士12名とオルドマ率いるギルドメンバー56名を加えた68名がエルグドの手勢である。

 アシュレイの手配したのは傭兵ギルド『剣牙けんが』に所属する傭兵達79名。実力も高いが残虐性も凄まじいものを選りすぐった者達だ。アシュレイの側近20名と合わせた99名がアシュレイの手勢だった。

 そしてトルトの手配したのは冒険者ギルドから選りすぐった4チームだ。ベルゼイン帝国にも冒険者と呼ばれる者達がいる。仕事内容は人間の冒険者とほぼ変わらず、魔物と戦うというのが仕事内容のメインである。ちなみに人間の冒険者の階級は金属で表現されるが、魔族の冒険者階級は色で表現される。下から白、赤、青、紫、黒である。トルトが今回集めたのは【紫】の冒険者チーム達だ。トルトの側近10名と紫の冒険者チームの総勢18名の計28名がトルトの手勢となる。


 約二百の魔族が満身創痍のアレン達に向かって歩いていた。魔族達に緊張は一切無い。どう考えても魔族と人間の戦いの生き残りを始末するだけであり戦闘と呼べるものではないと考えていたのだ。


 隊列もない状態でただダラダラと目標に向かって歩いている三皇子の手勢の前にアレン達一行が目に入った。


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