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激突⑫

「ここからが本番だ……剣姫」


 フォルグは魔剣ヴァディスを構えると地面を蹴り、フィリシアとの間合いを一気に詰めてきた。

 フォルグの斬撃はフィリシアの左肩か右脇に抜けるいわゆる左袈裟斬りだ。フィリシアはその斬撃を左側に飛んで躱すとそのまま回転するとフォルグの首筋に向かって斬撃を繰り出した。

 フォルグはそれを屈んで躱すとそのままフィリシアの右脛を狙って斬撃を繰り出した。

フィリシアは脛への斬撃を足を上げることで躱すとそのままフォルグの腹に向かって蹴り込んだ。


 ガギィィィ!!


 フィリシアの蹴りをフォルグはかろうじて腕で受け止めるが、蹴りの威力を全て吸収する事は出来ずに弾き飛ばされた。二歩ほどの距離を飛び着地するがフォルグの体勢は崩れて片膝をついている。


(よし……)


 フィリシアは好機と判断すると追撃を行うために一歩踏み出した。その時、フィリシアの右足に突如痛みが発せられた。フィリシアが右足に視界を移すと地面から剣の鋒が覗いておりフィリシアの右足の甲を貫いていた。


「く……」


 フィリシアはすぐさま足に刺さった剣を抜くとフォルグに視線を向ける。この状況はフォルグの魔剣ヴァディスである事が確実だったからだ。見るとフォルグの魔剣ヴァディスの剣先が自身の影に突き刺さっていた。


(まさか影を通して攻撃できるというのがあの魔剣ヴァディスの能力?)


 フィリシアはその考えに至ったときに瞬間的に戦慄する。自分と影を切り離す事は決して出来ないと言う事は間合いは関係ないという事だからだ。


(これじゃあ……間合いをとるなんて愚行中の愚行ね……なら)


 フィリシアはフォルグに向かって駆け出す。間合いを取られると言う事は一方的に攻撃を受けることを意味する以上、自分の剣の届く範囲で戦うしか選択肢はないのだ。

 先程の影からの攻撃は別に剣の長さが変わったわけではなかった。つまり影からの攻撃はフォルグの剣の長さを超えることはないのだ。フィリシアはそう判断すると剣から意識を逸らさないように戦う事にしたのだ。


 フォルグが自らの影に向かって剣を薙ぐと剣が自分の影に入った瞬間にフィリシアの影から剣が飛び出す。その瞬間にフィリシアは跳躍しそのまま回転しフォルグに斬撃を放った。

 フォルグはそのあびせ斬りを背後に飛んで躱すとそのまま影に剣を振るう。着地点を狙われたフィリシアであったが魔剣セティスでそれを防いだ。


(よし……剣を受け止めることは可能ね)


 フィリシアがそう思った時、影から魔力の塊が飛び出てきた。


「な……」

 ビキィ!!


 フィリシアは咄嗟に腕でその魔力の塊を受けるが魔力による強化が間に合わず左腕の骨にヒビが入った事を悟った。チラリとフォルグを見ると左掌を影に向けている。影に向かって魔力の塊を放った事は明らかであった。


(影を通り抜けられるのは剣だけじゃないのね……さらに厄介さが増したわ)


 フィリシアがそう考えた時にフォルグはフィリシアの間合いに飛び込むと腹部に斬撃を繰り出した。


 キィィィィン!!


 フィリシアがフォルグの剣を受ける。フィリシアは即座に剣を引くとフォルグの首筋に向け斬撃を繰り出す。フォルグはフィリシアの斬撃を受けると同時にまたも魔力の塊を自らの影に向かって放った。


 フィリシアの影から放たれた魔力の塊が飛び出てくる。だがフィリシアはその魔力の塊を避けるのではなくそのまま突っ込んできた。


(な……突っ込んできただと!?)


 フォルグに取ってこれは想定外の事である。フォルグはこの魔力弾をフィリシアが避けると想定しており間合いをとり、再び影からの攻撃を行いフィリシアの戦力を削るつもりだったのだ。

 だが、フィリシアは避けるのではなく攻撃を選択したのだ。フィリシアは踏み込みながら折れた左拳をフォルグの顔面に放つ。その途中で放った魔力弾がフィリシアの腹部に命中する。

 しかし、フィリシアの左拳の速度はまったく衰える事無くそのままフォルグの顔面を襲う。


(止まらんとは……大した奴だ。だがこれは躱せる)


 フィリシアの拳をフォルグは見切っており紙一重で躱す事が出来るはずであった。だが、そこからフィリシアの拳から人差し指が伸びた事がフォルグにとってまたも想定外であった。


 ズゴォォォォ!!


 フィリシアの人差し指がフォルグの右目を貫く。


「ぐぅぅ!!」


 フォルグの口から苦痛の声が漏れる。躱せると思っていた所にまさか指が伸び自分の右目を貫いた事は衝撃であった。想定外の負傷にフォルグが意識を逸らした事を責めるのは酷というものだろう。

 フォルグは自分の目を貫いたフィリシアの指からたまらず首を振り抜き取る。そしてこの動きが決定的な隙を作った。


(ここで決めるしかない!!)


 フィリシアの口から血が溢れる。フォルグの放った魔力弾を腹部に受けて内臓が傷付いたのだ。だが、フィリシアはそれを堪えて魔剣セティスを振り下ろした。


 シュパァァァァァ!!


 フィリシアの斬撃がフォルグの左肩から一気に右脇まで抜ける。斬り裂かれた傷口から鮮血が舞いフィリシアに降り注いだ。


「が……」


 斬られたフォルグは力が抜け崩れ落ちる。


「ハァハァ……」


 息を切らしながらも倒れたフォルグの反撃を警戒し構えを解かない。


「フォルグ=メヴィール……まだやる?」


 フィリシアの言葉が倒れ込んだフォルグに放たれる。フォルグはフィリシアの言葉を受け、苦痛を堪えながら答える。


「いや……剣姫……あなたの勝ちだ」


 フォルグがそう答えるとフィリシアはようやく警戒をとく。最初のアレンとイリムの約束であるためここでフィリシアとフォルグの戦いは終わったのだ。フィリシアはフォルグの傷口に治癒魔術を施す。完治させることはしないが何とか命を失わないぐらいには傷を癒やすつもりだったのだ。

 命を失わない程度まで治癒を行うとそこで治療を止める。ここで完治させる程、フィリシアはお人好しではない。


 治療を終えたフィリシアはレミアとディーゼの戦いに視線を向ける。そこにはレミアとディーゼが最後の攻防に移るのをフィリシアはその視界にとらえた。



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