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激突⑦

「ここは……」


 ディーゼの戸惑った声が発せられる。この場にいるのはレミア、フィリシア、ディーゼ、フォルグである。


「もちろん、国営墓地のどこかよ。作戦はここまでは成功ね」


 レミアの言葉にフィリシアも頷く。


「転移魔術というわけね。でもどうやって……いくらなんでも自分だけじゃなく私達もまとめて転移させるなんて、それにまったく気付かなかったわ。一体どうやったの?」


 ディーゼの言葉にレミアが答える。


「気付かないのも無理は無いわ。あなた達を転移させた術はかつれイグノール殿がアレンをさらった時の魔術を解析したものを使ったのよ。あの時もあまりにも一瞬でアレンは浚われたもの」

「でも私達が来たのはあの場に来たのは偶然よ……私達がどこにくるかあらかじめわかって罠をしかけるなんて不可能よ」


 ディーゼの言葉にレミアもフィリシアも頷く。ディーゼの言葉は当然でありそれを否定するような事は二人はしない。


「ええ、当然よあなた達が来てから仕掛けたんだから」

「?」

「答えはアディラの矢よ」

「矢?」

「ええ、あなた達は悪魔に射かけた矢のやじりにその魔術を仕掛けていたのよ。さっき私達と斬り結んだときにあなた達の足元には切り払われた矢があったわ」


 レミアの言葉にディーゼとフォルグは絶句する。戦いが始まった時からすでに仕掛けを施していた事に対して驚くしかない。


「あなた達は私達の目的が戦力の分断であると察していたでしょう。完全に当たりよ。でも私達が狙ったのはその先……」

「先?」

「そう、悪魔達との分断は第一段階、そしてアディラが派手な連射をすることであなた達の注意を引きつけその隙をついて転移したの。その後はあなた達もご存じの通りさらに分断することが出来たわ第二段階の終了ね。そしてあなた達に勝利する……これが第三段階よ」

「……」


 レミアの言葉にディーゼとフォルグは不快気な表情を浮かべる。まるで単体ならば自分達を屠るのは容易だと言わんばかりであると受け取ったのだ。


「私達があなた達をさらに分断したのは勝率を上げるためよ」

「?」


 レミアがさらに続けた言葉にディーゼとフォルグは首を傾げる。


「あのまま戦えば四対五だったわ。雑魚ならばともかくあなた達相手に少ない人数で戦えば分が悪かった。でも、同人数なら互角に戦える」


 レミアの言葉にディーゼは身構える。その様子を見てフィリシアが言葉を続ける。


「もちろん、フィアーネは一人で二体と戦う事になるから申し訳ないけどそれでもフィアーネが複数の相手をして生き残るのは一番可能性が高いわ」

「あの吸血鬼ヴァンパイアを信頼しているのね」

「ええ、あなた達が仲間を信じているように私達も信じてるのよ。そしてその信頼にこたえるつもり」


 フィリシアの言葉にこの場にいる全員が頷く。


「それじゃあ、始めましょうか。勝った方が仲間達を助けに行ける。とってもシンプルでしょう?」

「そうね。あんまり待たせるのも悪いわね」

「そういうこと……行きましょうか」


 レミアとフィリシアはほぼ同時に駆け出す。ディーゼとフォルグもそれぞれ武器を構えると二人を迎え撃つ。


 先程同様にレミアはディーゼへ、フィリシアはフォルグと斬り結ぶ。


 フィリシアの斬撃をフォルグは一歩進み出ると魔剣ヴァディスによって受け止める。フィリシアは剣を引くという動作を行う。その動作は突きの予備動作だ。フィリシアはそのまま突きを顔面と腹部に放つ。

 空気を斬り裂き放たれた突きをフォルグは体捌きを使って躱すとそのままフィリシアの首筋に向かって斬撃を放った。

 その瞬間、突然ゾワリとした感覚にフォルグは襲われる。この感覚が恐怖である事をフォルグは察する。そしてそれはフォルグに混乱をもたらした。


(なぜ、いきなり……恐怖を感じる? 確かにこの相手は強い。だがこの恐怖はいくらなんでも不自然だ)


 フォルグのこの一瞬の混乱にフィリシアを逃すことなくフィリシアは剣を一閃する。フォルグは咄嗟に後ろに跳んだ。


 シュパァァ!!


 フォルグの腹部から鮮血が舞う。フォルグは後ろに跳んでいたために浅手ですんだのは幸いだっただろう。下がったフォルグにフィリシアは魔矢マジックアローですかさず追撃を行った。

 十数本の魔矢マジックアローがフォルグに向かって飛来するがフォルグは全てを魔剣ヴァディスにより切り払った。


(やっぱり私の魔術はフォルグには通用しないようね……)


 フィリシアは心の中でそう結論づける。フィリシアは剣術、体術に特化しているが魔術の腕前は剣に比べれば格段に落ちる。せいぜい平均的な『シルバー』クラスの魔術師と同レベルだ。

 フィリシアは呪われていた時に剣術、体術に活路を求めて膨大な時間を費やしたが、魔術にはそれほど時間を割かなかったのだ。そのためフィリシアの魔術は主に牽制を目的としたものであった。アレン達と行動をともにするようになってからは呪術、死霊術を学んでいるが魔術は相変わらずであったのだ。


「本当に素晴らしい……その若さでどのような生き方をすればここまでの強さを得ることが出来るのだろうね」


 フォルグがフィリシアに言葉をかける。その言葉は憎い敵を相手に投げ掛けるようなものではなく、膨大な時間をかけて磨いたフィリシアという剣士に対する称賛の念で満ちていた。


「これほどの相手に余力を残そうというのが誤りだったな」


 フォルグの言葉にフィリシアがつい口を挟む。


「要するに私を舐めていたというわけ? 随分と軽く見られたものね」


 フィリシアの言葉にフォルグは静かに首を横に振るとフィリシアに告げる。


「勘違いしないで欲しい。この魔剣ヴァディスの力を使うと言う事だ」


 フォルグの言葉にフィリシアは構える。フォルグの持つ剣が魔剣である事は百も承知だったがどのような能力を持っているかまでは知らないのだ。


「これからが本番だ……剣姫」


 フォルグの雰囲気が変わった。




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