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家令①

今回の家令①と次回の家令②はかなり描写が残酷ですので、注意してお読みください。

 ん?


 アインベルク家の家令のロム=ロータスは、屋敷内に侵入した不心得者の気配を察知する。


 妻のキャサリンも当然の如くそれを察知している。


 長年、連れ添った二人である。意思の疎通にほとんど言葉は必要ない。お互いに頷くと招かれざる客の応対のためにロムが席を立つ。キャサリンは「いってらっしゃい」と編み物の手を止めてロムを見送る。


「ああ、行ってくる。10分ほど経ったら降りてきてくれ」

「はい」


 ごく普通の会話を行い、ロムは部屋を出て行く。アインベルク家に住み込んでいるロータス夫婦の部屋である。ロータス夫婦は長年アインベルク家に仕えており、アレンが生まれた時からずっと一緒に生活している。

 先代のユーノスが墓地の見回りに行っている間、アレンの世話をしていたのはロータス夫婦と娘のクレアである。ロータス一家にとってアインベルク家は仕えるべき主君であり、また家族であった。

 ユーノスもまたロムを父親、もしくは年の離れた兄のように慕っていた。お互いが大事な家族と認識していたのである。



「それにしても、間抜けな侵入者ですね。アレン様が出かけている事も調べていないのでしょうか?それとも狙いは私でしょうか?」


 ロムはそう独りごちる。


「まぁ、何にせよ。聞けば分かりますかな」


 ロムは静かにほほえむ。だが、その静かな微笑みは決して草食動物のそれではない。猛禽類のそれである。ロムはアレンに危害を加えようとする者に対してまったく容赦しようなどと思っていない。

 事実、アレンの身に危害を加えようという者に対して、どこまでも紳士的な態度で、どこまでも非情に処置をしたことなどは数限りなくある。そしてそれはキャサリンも同様だ。


 アインベルク家には敵が多い。もちろんアインベルク家への偏見に根ざしたものであるが、その事に対してアインベルク家は全くと言っていいほど誤解を解こうともせず、場合によっては反撃するぐらいだ。

 アインベルク家が代々、地位に執着せず身一つで生きていけるという自身が、強者に媚びるという選択肢を排除しており、その事が器の小さな権力者の憎悪を高めているのだ。


 そのため、ならず者をけしかけたりするが、そんな者の中にアインベルク家のものを痛めつけることの出来るような技量を持った者はいないため、逆に手ひどい反撃を食らっていた。

 その事はさらに怒りをよび、次の段階で屋敷に暗殺者を放つと言うこともよくあることだった。

 今夜もそんな暗殺者が忍び込んだのかそれとも強盗団でも押し入ったかだろう。


 ロムは、足音を一切立てずに歩く。熟練の暗殺者であってもこの速度で音を一切立てずに歩くのは困難を極めるだろう。それをロムは何でもないように行っていた。


 ロムが庭先に出ると、侵入を試みている人影が6つ見える。察知した数も6つだったので、どうやらこれで全員らしい。まぁよほどの手練れであってもロムやキャサリンから察知されないのはほとんど不可能であった。



「さて、アレン様が戻られる前に始末いたしましょう」


 ロムの冷徹な声は小さく、侵入者の耳には入らない。ロムは侵入者6人との間合いをほとんど一瞬で詰める。

 後ろを向いている侵入者の一人の肋骨にすさまじい速度と威力の蹴りを入れる。肋骨の砕ける音と共に攻撃を受けた侵入者は10メートル程の距離を吹っ飛んだ。折れた肋骨が肺に刺さったのかもしれない侵入者は血を吐き出している。

 突然の攻撃に侵入者に動揺が走る。


「な、なん・・・」


 侵入者は「何だお前は!!」と叫びたかったのだろうがその言葉を発する前にロムの拳が顎を打ち砕いた。顎が砕ける音と共に歯が砕け散っていった。この侵入者は今後の人生で食べ物を食べるのに非常に苦労することだろう。

 顎を砕かれた侵入者は、呻いていたが、ロムは遠慮なく侵入者の肋骨を踏み砕いた。


 突然の襲撃に驚いた侵入者達であったが、ロムがもう一人の侵入者の戦闘力を奪う間に戦闘態勢をとる事にかろうじて成功する。


 その間に、戦闘力を奪われた侵入者はロムにより両足を踏み砕かれている。


 男達はアレンを殺すために送り込まれた暗殺者であった。わざわざアレンのいない時間帯にアインベルク邸に来たのは、家族と同様のロータス夫婦を人質に取り、アレンの抵抗を封じようと思ったからだ。

 抵抗を封じてなぶり殺すつもりだったのだ。ところがそんな目論見はロムの先手により潰えた。いきなり三人の仲間の戦闘力を奪われたのだ。しかもロムのの異常なまでの戦闘力にすっかり混乱していた。


 三人はロムの周りを囲む。ロムの正面に立った男が口を開く。


「てめぇ、ふざ・・・」


 口を開いた男にロムはまたも一瞬で間合いを詰める。ロムの蹴りが侵入者の左膝を蹴り砕く。倒れ込むと同時にロムは侵入者の顔面を踏み砕く。かろうじて生きているようだが、死んだ方がマシだというレベルの痛めつけ様だ。


(やれやれ、呑気な侵入者もいるものですな。私はとっくにあなた方を敵とみなして攻撃しているのに・・・)


 ロムは今回の侵入者の稚拙さに呆れてしまう。侵入し、攻撃を受けているというのに会話をしようとする間抜けすぎる侵入者の技量に呆れるしかない。


(さて、後の二人はしゃべれるぐらいにしておかなければなりませんね)


 ロムは侵入者の残り一人に向き合う。侵入者はナイフを両手に持ちロムに斬りかかってきた。ロムはその遅すぎるナイフの動きに失望し、ナイフがロムの首に届く前に、拳で顎を打ち抜く。脳を揺らされた侵入者は意識を手放した。


 最後の一人は、もはや勝てないと悟ったのだろう。この化け物じみた実力者から逃げだそうときびすを返す。だが、一歩を踏み出すこともできなかった。ロムがいたずらをする子どもにするように耳をつかみ引っ張ったのだ。


「いててて!!離せ!!」


 ロムは当然、そんな言葉に耳を貸すことなく耳を掴んだまま侵入者を投げ飛ばす。その力に当然侵入者の耳は耐えきれるわけもなく。侵入者の耳は引きちぎられた。すさまじい痛みが侵入者の耳に発し、次の瞬間に地面に激突した衝撃が侵入者を襲う。



 こうして、わずか5分ほどでロムは6人の侵入者の戦闘力どころか行動能力を奪った。


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