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激突④

 アレン達が転移した場所はイリム達との戦闘が行われていた場所から約500メートル程離れた場所である。


「すぐにこっちに向かってくるだろうから手短に言うぞ」


 アレンの言葉に全員が視線をアレンに集中させる。


「イリム達とあの召喚された悪魔達を何とか引き離さないといけない。普通に考えればわざわざ敵地で戦力分散するわけがない。そこでこいつらだ」


 アレンの指差した先には駒達がいる。指を差された駒達は全員が一様に顔を青くした。先程のアレン達とイリム達の戦いを見て、とても生き残る未来は見えなかったし、アルティリーゼの召喚した悪魔達も同様だったのだ。


「俺達はここでこいつらと別れる。当然、俺達は隠遁術を行使して気配を消す。こいつらは俺達レベルの隠遁術が使えない以上、イリム達はこいつらに向かうだろう。そこで俺達の姿が見えなければ俺達が分散したことに気付く。そうすれば敵も分散する可能性が出てくる。それに賭ける」


 アレンの作戦は実現可能性を考えるとかなりご都合主義に則ったものだ。このような博打のような作戦をあまりアレンは行わないのだが時間が無いことを考えると博打のような手段に出るしかないのだ。


「アレン様、私の考えた作戦を聞いてもらえますか?」


 そこにアディラが口を開く。アレンは即座に頷く。


「私もこの駒の方々と一緒に行動を共にします」


 アディラの言葉にアレンとアルフィスが真っ先に反対する。


「それはダメだ。危険すぎる」

「そうだぞ。いくらお前の弓であってもあのレベルの敵全員を討ち取るのは不可能だ」


 アレンとアルフィスの反論を聞いて、アディラは静かに首を横に振る。


「アレン様もお兄様もまだ前提条件しか話してないのにせっかちすぎです」


 アディラの苦笑混じりの言葉にアレンとアルフィスは沈黙する。その沈黙が意味するところを話を続けろという意思表示と受け取ったアディラは作戦を語り始める。


 話が進む度に全員が納得の表情を浮かべるとアディラの作戦が採用されることになったのだ。その作戦はアレンの出した作戦案の改良版ともいうべきものだったのだ。




 *  *  *


 イリム達は国営墓地を注意深く歩く。もちろんアレン達がいるであろう場所に向かっているのだ。アレン達が隠遁術を使って気配を絶っているというのはすでに分かっている。だが全員が隠遁術を習得しているわけではない事は明らかでありいくつかの気配をイリム達は探知していた。この時イリム達が探知した気配は駒の気配である。アレン達に比べて探知の技術が劣る駒の気配はすぐさまイリム達に探知されてしまったのだ。

 実際の所、イリム達は探知している気配がアレン達でないことを察しているのだが、相手の戦力を削る事を選択したのであった。ただし、戦力分散だけは絶対に行うつもりは一切無かった。


「いたな……」


 イリムの言葉に全員が視線を移すとそこには目当ての一団がいる。


「変ね……アインベルクがいないわ」

「ああ、だがさっきの凄まじい射手はいるな」


 ディーゼの言葉にエルカネスが答える。敵の一団にアレン、フィアーネ、レミア、フィリシアの四人がいないのだ。


「何を考えている? アインベルクはあいつらを捨て石に使ったのか?」


 フォルグの言葉に全員が沈黙する。これは試合でない、殺し合いである以上どのような手段であっても使う事に躊躇いはない。イリム達が沈黙したのはアレン達が捨て石を使う事を非道と責めるためではなく、何を目的として捨て石をおいて時間を稼ぐ必要があるのかという事だった。


「それはわからないが……こちらが全員で攻めかかるのは止めるべきだな」

「そうね、イリムの言う通りアインベルクの狙いがはっきりしない以上は避けるべきね」「アルティ、ジヴォード達に命じてあの一団に攻撃をしてくれ」

「わかったわ」

「俺達はアルティの護衛だ」


 イリムの指示に全員が頷く。


「聞いての通りよ、ジヴォード、レズゴル、リクボル、ウキリ……あの一団に攻撃を開始しなさい。ただし油断は禁物よ」

『『『『はっ!!』』』』


 アルティリーゼの命令に四体の悪魔達は一斉に返答する。アルティリーゼが自分の配下に置いた上位悪魔達でありその絶大な力は決してアレン達であっても油断することは出来ない。

 人間と魔族では悪魔に対する基準が異なっており、魔族の上位悪魔の基準は、人間の悪魔の基準では最上位悪魔に相当し、その凄まじい戦闘力は人間などたやすく挽肉ミンチに変える事だろう。


 四体の悪魔達が一斉に一団に襲いかかる。それぞれの悪魔達の手には凶悪な武器が握られている。

 ジヴォードの手には全長2メートル超の巨大なまさかりを片手で持っている。それだけでジヴォードが常識はずれの膂力を有している事が察せられる。

 レズゴルの両腕にはそれぞれ剣が握られていたが、突進の途中で背中から四本の腕を生やし、それぞれの手には鎌、戦槌、戦斧せんぷ、万力鎖が握られていた。かなり変則的な戦いをする事が理解できる。

 リクボルは法衣に似た衣を身に纏い、手には2メートル50㎝ほどの長さのロッドを持っている。法衣という表現をしたが、リクボルの容貌は人間のものとはほぼ遠い。めくり上がった唇から覗く不規則に生えた牙に濁った目、潰れた鼻と一目で人間ではない事がわかる。

 最後のウキリは長身でありカエルのような容貌を持ち、サソリのような尻尾が腰の辺りから生えている。手には何も持っていないが手甲がつけられており無手での戦いを得意とするタイプのようだ。


 バシュン!! パシュン!!


 アディラが矢を番えると凄まじい勢いで四体の悪魔に向けて連射する。次々と放たれる矢をもろともせず悪魔達は突っ込んでくる。悪魔達は神業と称されるアディラの矢を手にした武器で弾きながら突っ込んでくる。


「く……」


 アディラの口から悔しそうな言葉が漏れる。この距離でアディラが仕留めることが出来ないのはアレン達ぐらいだった。となるとこの四体の悪魔はアレン達に近い実力を有している事をアディラは察したのだ。


「アディラ、俺がいく。矢に限りがある以上連射は控えろ!!」


 アルフィスがそう言うと聖剣アランベイルを抜き放つ。アランベイルを抜き放ったアルフィスは聖剣の能力を解放する。


(さて……当たりだと良いが……)


 アルフィスは心の中でそう呟く。アランベイルの能力を解放すると自分の中でサイコロが振られたような感覚を覚えるのだ。そして賽の目が出たときに自分の中の能力が強化されるのを感じるのだ。


(……“触覚”か。味覚よりはましだな)


 今回の聖剣の能力により強化されたのはアルフィスの触覚だった。正直、アルフィスの中でハズレに近いものである。


「無いよりマシだ」


 アルフィスの言葉の意味するところを知らない面々は首を傾げる。だが、それを尋ねる前にアルフィスが四体の悪魔達に駆けだしたため確かめることが出来なかった。


 突っ込んでくる悪魔達に向かってアルフィスが駆けだしてくるのを見た四体の悪魔達はニヤリと嗤う。アルティリーゼは油断しないように言っていたが、たかだか人間が相手という意識を捨て去ることは出来なかったのだ。

 アルフィスはジヴォードの間合いに入る瞬間に突如スピードを上げる。その緩急の差は凄まじくジヴォードは完全に虚を衝かれたのだ。

間合いに飛び込んだアルフィスの横薙ぎの一閃がジヴォードの脇腹を斬り裂いた。


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