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激突①

 やっとイリムとの戦いです。

 イリムからの挑戦状が届いてからすぐさまアレン達は対イリム戦の準備の総仕上げに入る事になった。翌日すぐさまアルフィスとアディラを交えて対イリム戦の作戦を話し合う事になった。


 その結果、今回のイリム達との戦いに参加するメンバーはアレンと婚約者達四人、アルフィス、カタリナ、ジュセル、アディラの護衛としてメリッサ、エレナ、エシュレム、ラウラ、近衛騎士でありアレンの弟子の四人となった。

 ジェド達は現在依頼により王都を離れておりその依頼の完遂には最低一ヶ月かかるために今回の戦いに参加は不可能である。ジェド達が参戦できないのは正直きついのだが、無い袖はふれないのだ。

 またジェスベル達の参加も考えたが、いざという時の予備兵力として備えなければならないために今回は参加させない事になった。本人達はかなり悔しそうであったが、この戦いの間隙をついて魔神などが動いた場合等の不測の事態に備えてもらわなければならない以上アレンはその考えを曲げることはしなかった。

 他に駒としてガルディス、鬼尖きせん九凪くなぎ、傭兵団『リンゼル』の生き残りの魔族達、ガルディスの部下の盗賊団が参加する事になった。

 仮に一国と戦争となっても勝利を収める事が出来るような強大な戦力である事は間違いない。アレンはその強大な戦力をイリム達にぶつけるつもりだったのだ。


「戦力とすればこれでいくのは決まりだ」


 アレンはそう言うと全員が頷く。異議があれば申し出て欲しいと思っていたのだが、全員問題無いと考えているようだ。


「よし……では次は一体どこまでやるかという事だ」


 アレンの言葉の意図するところは、どこまでも殺し合い、相手を殲滅するまでやるのかという事である。


「アレン、それについては私から提案があるの」


 手を挙げたのはフィアーネである。アレンが手でフィアーネに意見を促すとフィアーネが話し始める。


「イリム達に“降参した者には手出しはしない”“敗者は勝者に従う”という条件を提示して欲しいの」

「それは構わないが、フィアーネが殊更それを強調するのはどういう意図があるんだ?」


 フィアーネの提案にアレンがすぐさま了承する。だが、殊更それを強調するのが不可解だった。


「私は唯一イリムと交戦経験があるわよね。その事をアレンに報告した時の事を覚えてる?」

「もちろんだ。あの時はどんな絵を描いたのかを説明してくれてなかったな。この条件を出したのと繋がっているわけか」


 アレンの言葉にフィアーネは頷くと持論を展開する。


「イリム達は今まで襲撃してきた魔族達とは異なり、信用できると思ったのよ」

「どういうことだ?」

「イリムの為人は約束をきちんと守るタイプだと思うの、そして戦いに臨む姿勢は私達と相通じるものがある。そんな彼らを失うのは大きな損失だと思ったのよ」


 フィアーネはイリム達が人材を集めている事を知ってからイリム達は事を起こす前に考え無しに動き出すのではなく万全の準備を整えて行動を起こすことを基本原理にしていることを察した。いわば魔族版の自分達だと思ったのだ。


「でも、イリム自身はそうでも他が信頼できるとは限らないんじゃない?」


 そこにレミアが異議を唱える。レミアの異議に対してフィアーネは気分を害した様子もなく首を横に振るとすぐさま答えた。


「いえあの集団は信用できるわ。根拠は皇女のアルティリーゼよ。アルティリーゼもまたイリムの影響を受けているのか、与えたのかはわからないけどイリムと同じよ。一度交わした約束を破るような事はしないわ。そしてリーダーのイリムと一番身分の高い皇女がそうなら他のメンバーも似た人生哲学を持っていると考えて良いわ」


 フィアーネの言葉に全員が考え込む。フィアーネの人物鑑定は信頼できるレベルのものである。アレンに至ってはフィアーネの人物鑑定は自分以上と思っているぐらいである。


「それに私ね、何となくだけどあのアルティリーゼという皇女に私達と似たものを感じるのよ」

「?」


 フィアーネの言葉にアレンは首を傾げる。周囲を見ると女性陣はなにかしら思うところがあったようで納得の表情を浮かべている。アルフィスとジュセルにちらりと目を移すとこちらの方はピンと来ていないようだ。


「それって……その皇女がイリムの事を好きと言う事?」


 アディラの言葉にフィアーネはニッコリと笑顔を浮かべると頷いた。


「そういうこと、十中八九あの皇女はイリムに恋してるわ。そしてイリムが一度交わした約束を違えるのを良しとしない性格……、女として惚れた男の前で嫌われるような行動をとるかしら?」


 フィアーネの言葉に女性陣はものすごく納得した表情を浮かべる。彼女たちにとって惚れた相手からどのように思われるかというのは人生の一大事である。そこに種族、身分は関係ない女というカテゴリーから考えると十分に共感できるものだ。


「それじゃあ、イリムを殺す事は出来るだけ避けないと際限なくなっちゃうわね」


 カタリナの言葉に全員が頷く。これはアレン達男性陣も納得した。自分の愛するものが目の前で殺されて耐えることなど出来るはずもない。


「同じ理由でアルティリーゼも出来るだけ避けた方が良いわ。でも……」


 レミアがそこで一端言葉を切ってから言葉を続けた。


「私はみんなが殺されそうになったら遠慮無く相手を斬るわ。私にとってイリム達よりもみんなの命の方が大切だもの」

「私もです。みんなを失うぐらいならイリム達を斬るわ」


 レミアとフィリシアの宣言にアレンも頷く。


「ああ、俺も同じ気持ちだ。フィアーネの言う条件はイリム達に提示するが、相手がそれを破るのなら遠慮無く斬るつもりだ」


 アレンの言葉にフィアーネが答える。


「うん、基本はそれで良いと思うわ。条件の提示は念の為に行うという感じで良いと思うわ」

「よし、当時にはイリムにフィアーネの条件を提示すると言う事で行く。みんなもそれで良いな?」

「うん」

「それで良いです」


 アレンの決定に全員が賛意を示し、対イリム達との基本方針が決まる、その後の細かい戦術を話し合って作戦会議は終了したのだった。


 そして……。


 約束の日がやってきた。


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