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勧誘⑨

 こちらに向かってくるゴルヴェラ達の表情は自信に満ちている。いや、正確に言えば三人を見下しているのが丸わかりである。


(アルフィス相手にあの自信……もう少しゴルヴェラは謙虚になった方が良いぞ)


 アレンはため息をつきそうになるのをぐっと堪える。三体のゴルヴェラは一列に並んでおり、真ん中のゴルヴェラがアレン達に言葉を投げ掛けた。


「アレンティス=アインベルクというのはお前か?」

「いや、アレンは後ろに黒いコートを着た男だ」


 ゴルヴェラの質問は即座にアルフィスによって否定される。そこでゴルヴェラの興味はアルフィスの背後にいるアレンに向かう。


「そうか、貴様がアインベルクか。俺達と立ち会ってもらおうか」


 ゴルヴェラの言葉にアレンは首を横に振る。その態度にゴルヴェラ達はニヤリと嗤う。どうやらアレンが勝負を受けなかった事で自分達の方が強者であると断じたらしい。


「臆したか。立ち会いを拒むとは戦士の風上にも置けんな」

「所詮は人間か。エギュリムはこんな奴にやられたのか。恥さらしもいいところだ」

「ふん、“ミグル”程度ではな。俺達“エデル”の中ではエギュリムごときせいぜい中級と言ったところだ」


 ゴルヴェラ達の単語にアレン達は首を傾げる。“ミグル”や“エデル”という聞き慣れない単語が聞こえて来たからだ。


(階級か支族の名前だろうな。レミアの話では長老会とかあったという話だった。となると支族と考えた方が正しいかな……)


 アレンは今まで得ていた情報からゴルヴェラはいくつかの支族に別れている可能性を考えた。エギュリムや前回レミアを襲ったゴルヴェラ達が所属しているのが“ミグル”であり、この三体の所属しているのが“エデル”と考えれば、前回レミアが警告した内容が伝わっていないのも説明が付く。

 まぁいずれにしてもここはアルフィスの出番なので、今回アレンは戦うつもりはない。そのためアレンは親切心でゴルヴェラ達にアルフィスが相手であると伝えてやる事にする。

 アルフィスも今回は実力を見せるという事であるため、あからさまな隙を敢えて見逃している。アルフィスにしてみればこういう相手の隙を衝かないという事は暴挙なのだ。もちろんアレンも同じ考えであり、仕方の無い事とは言え忸怩たる思いである。


「いや、俺の出番は一切無いのが分かってるからさ。断ったんだよ」


 アレンの言葉にゴルヴェラ達は訝しむ表情を浮かべた。アレンはその様子を見て言葉を続ける。


「お前達の相手はアルフィスがするんだ。お前達がアルフィスに勝てたら相手をしてやる」「なんだと!?」

「ちなみにそいつはローエンシア王国の王太子だ。にも関わらず俺が戦わずそっちに任せる事の意味をきちんと理解しているか?」


 アレンの言葉にゴルヴェラ達は怒りに顔を歪ませる。アレンの上から目線に対して不快感を刺激されたのだ。ただ、アレンにしてみればあからさまな隙を見せて、アルフィスに見逃されている事にすら気付いていないような連中を恐れる理由はなかったのだ。


「アレン……お前時々忘れているようだから言っておくが俺は王太子だからな」

「わかってるよ。だからあいつらに王太子って紹介したろ」

「お前のは俺への敬意がまったく感じられないから、あいつらも意味が分かってないだろ」「いや……いくらなんでもわかるだろ」


 アレンとアルフィスの会話にゴルヴェラ達は怒りの表情を向けるとすぐさま行動に移す。その行動とはもちろん戦闘だ。


 一体のゴルヴェラが素手で突っ込んでくる。ゴルヴェラの速度は凄まじいの一言であったがアルフィスはまったく動じることなく上段斬りを放つ。流麗なアルフィスの斬撃は不用意に突っ込んできたゴルヴェラを斬り捨てるはずであった。


 キィィィィィン!!


 しかしゴルヴェラは左腕でアルフィスの斬撃を受け止めた。


(腕に何か仕込んでいるな……)


 アルフィスがそう考えた瞬間に右腕の袖に隠していたトンファーを外に出すと同時に回転させアルフィスの側頭部に放った。アルフィスはすぐに後ろに跳びゴルヴェラのトンファーの一撃を躱した。


「トンファーか……」


 アルフィスがゴルヴェラの武器を口にする。ゴルヴェラのトンファーは金属製でありアルフィスの剣技を持ってしても切り落とす事は出来なかったのだ。


(ただの鋼鉄じゃないな……恐らくは『ミスリル』製のトンファーだな)


 アルフィスは自分の持つ聖剣『アランベイル』で断ち切ることの出来ないトンファーがただの金属でない事はすぐにわかった。ゴルヴェラはニヤリと嗤うとアルフィスに向け嘲弄する。


「ふん……貴様のその剣もかなりの業物だが、俺のトンファーを断ち切ることは決して出来んぞ」

「そのようだな……」

「随分と物わかりが良いな。それにな……」


 アルフィスとゴルヴェラの会話の途中でもう一体のゴルヴェラがアルフィスとの間合いを詰る。腰に差した双剣を抜き放ちアルフィスの膝と首に同時に斬撃を放った。並の騎士では気付く間もなく首と足を切り落とされていたことだろう。だがアルフィスは最小の動きで躱すと双剣のゴルヴェラの首に向かって斬撃をくり出した。

 アルフィスの斬撃を余裕で躱したゴルヴェラが躱し様に双剣を振るう。それを皮切りにアルフィスと双剣を持つゴルヴェラが激しい剣戟を展開する。

 アルフィスと双剣のゴルヴェラの剣戟にトンファーを持つゴルヴェラが乱入する。戦いの場は一気に刃と打撃が入り乱れる危険地帯と化した。


「助けなくて良いのか?」


 アルフィスとゴルヴェラ達の戦いを見守っていたアレンにライオスが声をかける。アレンはライオスの言葉にまったく気負った様子も見せずに返答する。


「あいつに手助けが必要なわけないじゃないか」

「しかし、複数を相手取るには厳しいんじゃないか?」

「何を言ってるんだが、アルフィスの実力があんなもののわけないだろ」

「……そうなのか?」

「ああ、見逃すなよ。決着がつくのは一瞬だぞ」


 アレンの言葉にライオスは戦いの方に目を向けた。



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