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神殺(かみごろし)④

 拷問して情報を聞き出すという言葉に男は表情を凍らせる。


「あなたが下っ端であってもさすがに今回の件で私達よりも多くの情報を持っていますからね。どんな話が聞けるのか今から楽しみですよ」


 フィリシアのような美しい容姿を持つ者からこのような残虐な言葉が発せられれば、恐ろしさは嫌が応にも増す。


「エシザス様!!」


 そこに悪魔三体が慌てた声を上げながら乱入してきた。逃げ出した場合に捕まえるために隠れていたのだろう。


「あなた達、始末しなさい」


 フィリシアの言葉にオルカンド達は頷く。オルカンドとリオキルがまず向かってくる悪魔三体に飛びかかった。魔人に一拍後れてからキュギュスが斬りかかる。アシュレ、ルカ、ビアムは逡巡していたが意を決したように武器を構えると突っ込んでいく。


「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 アシュレ達の雄叫びは明らかに恐怖を紛らわすためのものであることを、レミアもフィリシアも気付いていたが敢えてそれを咎めるような事はしない。

 奇襲でも無い以上、各々のやり方で戦意を高揚すれば良いだけのことである。


「さて……エシザスさん、知っていることを教えてもらうわね」


 フィリシアはニッコリと微笑むと魔法陣を形成する。この段階で展開する魔術は当然のごとく行動制限の魔術である。一定の強者にはこの魔術は効果がないが、エシザスに聞く可能性がゼロではないためにやってみることにしたのだ。

 フィリシアの見たところ、エシザスの実力はオルカンド程度である。ならば十分にかかる可能性があるのだ。


 空中に浮かんだ魔法陣がゆっくりとエシザスに降りてくる。当然ながらエシザスは避けようとするのだが、フィリシアの放つ殺気がそれを許さなかった。エシザスが動けばフィリシアは首を容赦なく斬り落とすつもりである事をエシザスは察していたのだ。


 だが、その瞬間にエシザスの姿がかき消える。


「……転移魔術か」


 レミアの言葉にフィリシアも頷く。どうやら何者かがエシザスに仕掛けていた転移魔術でエシザスを転移させたらしい。そしてエシザスが消えた次の瞬間に悪魔達も姿を消していた。


「逃がしちゃったわ」


 フィリシアの言葉にレミアは苦笑する。フィリシアの言葉にまったく悔しい、してやられたと印象を受けることが出来なかった事から何らかの手を打った事を感じたのだ。


「それじゃあ、早速追うと言うことで良いわね」


 レミアの言葉にフィリシアもレミアが仕掛けに気付いていることを察する。


「で、どの辺にいるのさっきの連中は?」

「そうね。ここから大体2㎞程離れた場所に転移したわ」

「方向は?」

「あっちね」


 フィリシアは指をさして言うと、レミアはニンマリと笑い。運ぶ猟犬(ハラーハウンド)を手早く作成する。あっという間に十数体の運ぶ猟犬(ハラーハウンド)が現れる。


「行け!!」


 レミアの号令が発せられると同時に運ぶ猟犬(ハラーハウンド)達は一斉に走り出した。


「オルカンド、あなたは空を飛べたわね?」


 フィリシアの言葉にオルカンドは跪くと震えを含んだ声で答える。先程の悪魔をみすみす逃がしてしまったことにより叱責を受けると思ったのだ。


「は、可能でございます」

「それなら上空からさっきの連中を探しなさい」

「はっ!!」


 フィリシアの命令を受けると背中から翼を生やしたオルカンドは空中に浮かぶと運ぶ猟犬(ハラーハウンド)が向かった方向に飛んでいった。


「リオキル」

「はっ!!」


 次にレミアがリオキルに声をかけるとリオキルはレミアの元に跪く。魔人であるリオキルが美少女に跪く姿はかなり滑稽であったが、それを指摘する者は誰もいない。見かけはともかく戦闘力は天と地ぐらい差があるのだ。


「あなたは分身を生み出せるという話だったわね」

「はい」

「ならばあなたは分身を生み出してさっきの連中の包囲網を形成しなさい」

「はっ!!」


 レミアの命令を受けたリオキルは立ち上がると分身を生み出し始める。次々とリオキルの分身達が生み出されると、生み出された分身達は移動を開始する。


「キュギュス、ルカ、アシュレ、ビアム」

「「「「はっ!!」」」」


 フィリシアは最後に残った四人に声をかけると四人は一糸乱れぬという表現そのままに一斉に平伏する。


「あなた達はレミアの運ぶ猟犬(ハラーハウンド)の後を追いなさい。戦闘になったら死力を尽くして戦いなさい」


 フィリシアの言葉に顔を青くしたのはキュギュス以外の三人である。先程戦った悪魔達との戦闘など御免被りたいところであるが、残念ながら行動制限の魔術により命令を拒絶するとは出来ない。


「「「「はっ!!」」」」


 キュギュス達はそれぞれ武器を構えると運ぶ猟犬(ハラーハウンド)の走った方向に向かって走り出していった。


 配下の者達を見送り完全に姿が見えなくなったところで、レミアとフィリシアは頷き合う。


「さて、あの連中はどこにちょっかいをかけるかしらね」


 レミアの言葉にフィリシアは少し考えて口を開く。


「私はキュギュス達のグループだと思うわ」


 フィリシアの言葉にレミアは苦笑しながら答える。


「なんだ、同意見か。賭は成立しないわね」

「まぁ普通に考えれば、あそこ以外無いわよ」

「うん、どういうちょっかいをかけてくるかしらね?」

「単純に殺すパターン、操るパターンのどっちかじゃないかしら」

「そうね。フィリシアの言うとおり、どっちかのパターンよね」

「操られた場合の対処はどうする?」


 レミアの問いかけにフィリシアは即座に答える。


「もちろん蹴散らすわ。情けをかけてやるほど私の心は広くないもの」


 フィリシアの言葉にレミアも頷く。彼らの今までの行動を考えれば一切容赦をするつもりなどないのだ。


「でもアディラがせっかく仕入れてくれた駒だからちょっとアディラに申し訳ないわね」


 レミアの言葉にフィリシアも頷く。そこに一切の戸惑いがないことを、お互いの他に誰も知らなかった。



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