表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
486/602

神殺(かみごろし)①

 今回から新章です。よろしくおつきあい下さい。

「ねぇレミアちょっと良い?」


 アインベルク邸に設けられているレミアの私室にフィリシアが尋ねてきた。尋ねてきたと言ってもフィリシアの私室もアインベルク邸に設けられており、レミアの私室の隣である。

 ちなみにフィアーネとアディラの私室もすでに用意されており、結婚と同時に移り住むことになっている。


「どうしたの?」


 レミアが私室に入ってきたフィリシアに声をかける。フィリシアはどうやら先程まで入浴していたのだろう。髪が僅かに濡れて、肌が上気しており妙に色っぽい。現在は墓地の見回りを終えた後のまったりとした時間帯であったのだ。


「実は今度の休みに一緒に行って欲しいところがあるの」


 フィリシアはレミアに柔らかな声で頼む。


「良いわよ。ところでどこにいくの?」


 レミアの快諾は順番が逆のような気がするが、フィリシアと一緒であれば危険は無いという信頼の現れであった。


「クリスティナの家の領地にあるシュモートという都市よ」

「そこになにがあるの?」

「実はそこから来たという冒険者からの情報なんだけど、そこで何人かの冒険者が行方不明になってるらしいのよ」

「行方不明……?」

「そう、行方不明の冒険者の中には『ミスリル』クラスの冒険者も含まれているという話だったわ」

「ふむ……ほっとけないわね」

「でしょう」


 レミアとフィリシアがほっとけないという理由は、冒険者の身を案じてという事もあるのだが、それだけではない。対魔神の戦力として有為な人材が失われた可能性があり惜しいという気持ちがあるのも偽れざる本心だった。

 レミアもフィリシアもアレンの助けになりたいという気持ちを常に持っている。最近はアレンにとって有用かどうかが人材を見る基準となっていたのだ。


「有為かも知れない人材をこれ以上失うのはよろしくないわね」

「うん、もし冒険者ギルドで依頼が出てれば報酬も出るわ。それにこの件を引き起こしているのが魔神の手のものであれば、魔神の勢力を削る事にも繋がるわ」

「そうね。明日アレンに話してみましょう」

「うん。それじゃあ今夜はこれまでという事で」

「うん、おやすみ」

「おやすみ」


 二人は挨拶を交わしフィリシアが退室する。フィリシアを見送りレミアは小さく呟く。


「どんな外道がオイタをしてるのかしらね……」


 レミアはニヤリとした表情を浮かべていた。



 *  *  *


 翌日レミアとフィリシアは、朝食の席で昨晩の話の内容をアレンに伝える。


「なるほど……確かに見逃せない案件ではあるな」

「でしょう」

「どうでしょうか。アレンさん私とレミアでシュモートに行かせてもらうわけにはいきませんか?」


 フィリシアの懇願にアレンは悩む。悩んだ理由はアレンがこの一週間の間は、王城への出仕があり、二人と共にシュモートについていく事がどうしても出来なかったからだ。レミアとフィリシアの実力であればどのような相手であっても後れを取るとは考えづらいが万が一という事もあるため二人きりで行くのを渋っていたのだ。


「二人だけでいくのは反対だ。万が一ということもある」


 アレンの言葉にレミアとフィリシアも少しも気分を害した様子はない。アレンの心配は二人を信じていないという事ではない事を知っているからだ。その証拠はアレンの次の発言によって確信に変わる。


「レミア、フィリシア、二人を補助するチームを編成するから出発に一日時間をくれないか?」


 アレンの言葉にレミアとフィリシアは頷く。相手がどのような存在か解らない以上、アレンの提案を断るような事をするつもりは二人にはなかったのだ。


「もちろんよ。準備に万全を期すのは当然だもん。出発は今度の休みのつもりだったから大丈夫よ」


 レミアの返答にフィリシアも頷く。


「はい、それでしたらチームの編成は私達でおこなって良いですか?」


 フィリシアの言葉にアレンは頷く。フィリシアの提案はアレンがこの一週間の間は忙しいことを気遣ってのことである。


「ああ、もちろんだ。最終的に二人にとって都合の良い人材を選んで欲しい」

「わかりました」


 アレンの言葉にフィリシアは微笑みながら返答する。


「それじゃあ、食事を終えたら早速チーム編成を行うわ」


 レミアがそう言うと、三人は食事に入る。食事を終えたレミアとフィリシアはチーム編成を行い、今回の補助チームの編成が終わったのは昼前の事である。


 今回の編成チームに選ばれたのは、全部で六人である。


 一人目は魔人リオキル、フィアーネとカタリナによってとらえられた魔人だ。分身を生み出しそれを使役することができるという能力が評価された事によって選ばれたのだ。フィアーネとカタリナに言わせれば大した能力でないという評価なのだが、普通に考えれば中々凶悪な能力である事は間違いない。フィアーネとカタリナが規格外だったにすぎないのだ。


 二人目は魔人オルカンド、以前アインベルク邸を襲撃し、ロムとキャサリンによりとらえられた魔人である。それなりの実力を有しているが、二人がオルカンドを選んだ理由は戦闘力よりも飛行能力に焦点を当てたからである。


 三人目は魔族のキュギュス、アディラ達を襲い返り討ちとなった魔族である。魔族と言う事でキュギュスもそれなりの実力を有しているとみなされたのだ。


 四人目はアシュレが選ばれた。元『ミスリル』クラスの冒険者であったが、アディラの襲撃を行おうとした時に、キュギュス達に操られてしまった者だ。自分達を操った魔族であるレゴルバが死んで支配下から抜け出たのだが、そのままアインベルク家の駒として組み込まれたのだ。


 五人目はルカ=エリオン、吸血鬼の傭兵であったが、アレン達にちょっかいを出した結果、駒となった人物だ。アレン達ならば一太刀で斬り捨てる事が出来るが、一般的にみればそれなりの実力者という事になる。


 六人目はビアムという男だ。このビアムはアシュレの雇った闇ギルド『フォーヴァ』の生き残りの一人である。二人がビアムを選んだ理由は闇ギルドに所属していたため、今回の件で闇ギルドとの渡りを付けさせるのが目的だったのだ。


 この六名を加えた合計八名でシュモートに向かう事になったのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ