表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
473/602

仮面Ⅱ③

 仮面と神の戦士(エインヘリアル)血染めの盗賊(ブラッディシーフ)が激戦を繰り広げている。

 すでに神の戦士(エインヘリアル)は二体が斬り伏せられ、血染めの盗賊(ブラッディシーフ)の方も四体が斬り伏せられており、このままいけば仮面は勝利を収める事だろう。


 あくまで、横槍が入らなければ……だ。


 だが、その横槍は既に動き出している。もちろんフィアーネ、レミア、フィリシアがその横槍だ。先頭はフィアーネ、レミアとフィリシアがそれに続く。


「はぁ!!」


 横槍の一番手であるフィアーネが跳躍する。フィアーネが狙いを定めたのは手前の仮面で神の戦士(エインヘリアル)と戦っていた者だ。

 

 ドゴォォォォォ!!


 容赦なく放たれた蹴りをまともにくらった仮面は吹き飛ばされた。地面を転がるが何とか立ち上がったが、フィアーネはその隙を逃すことはなく間合いを詰める。


 仮面は破れかぶれに剣を横に薙ぐが、フィアーネは拳で迎え撃った。剣と拳がぶつかればどちらが敗れるかは子どもでも解る。にもかかわらずフィアーネは拳で剣、いや刃にぶつかったのだ。


 キィッィィイィ!!


 勝ったのはフィアーネの拳である。これはフィアーネに常識というものを当てはめてはいけないという例の一つでしかないだろう。


 剣を打ち砕いたフィアーネの拳はそのまま仮面の胸部に叩き込まれる。先程の蹴り以上に威力があったのだろう。仮面は10メートル以上の距離を飛ぶと地面を転がる。先程よりもダメージが大きかったのだろう仮面は中々起き上がることが出来ない。


「よし!!」


 フィアーネはそのまま倒れ込む仮面に向けて走り出す。どうやらきちんとトドメを刺すつもりらしい。


「う~ん……相変わらずぶっ飛んだ戦い方ね」

「うん……ちょっとあの仮面に同情しているわ」


 レミアとフィリシアが将来の自分の家族になるフィアーネの戦い方をそう論じる。剣を拳で迎撃するというのはあまりにも破天荒な戦い方と言って良かった。レミアとフィリシアの戦闘力も十分に破天荒なのだが、その二人をして破天荒と言わしめるフィアーネの戦い方は恐ろしいの一言である。


「さて、フィアーネがあっちを始末する間にこっちをやっときましょう」

「そうね。レミアは右に回り込んで、私はそのままつっこむわ!!」

「了解」


 フィリシアの提案に即座にレミアは賛同すると、フィリシアの提案通り、仮面の右側にレミアは回り込んだ。フィリシアはそのまま仮面に斬りかかった。


「でぇい!!」


 フィリシアの斬撃が上段から振り下ろされると仮面は手にした剣を頭上に掲げて、フィリシアの上段斬りを防ごうとする。だが、フィリシアの斬撃は仮面の剣をすり抜けるとそのまま、その下にあった仮面の左肩から一気に斬り裂く。アレン直伝の剣技『陰斬り』が見事に決まったのだ。


 フィリシアの剣は一太刀で肩口から一気に肋骨を断ちながら心臓ごと斬り裂いていた。腰の位置まで一気に振り下ろしたフィリシアの剣は明らかに致命傷であり勝負はあっさりとついたのだ。

 右側に回り込んだレミアも双剣を振るい仮面の延髄と腰を斬り裂いた。とどめというところだった。

 仮面は声を上げることなくその場に崩れ落ちた。ピクリとも動かない。


「あれ? やけにあっけないわね」

「うん……陰斬りが上手く決まったというのもあるんだけど……簡単すぎるわね」


 レミアとフィリシアは、あまりにもあっさりと仮面を斬り伏せた事で逆に戸惑っていた。あまりにもあっけなさすぎたのだ。


「う~ん……まぁフィリシアの陰斬りが初見だったという事でいいかしら?」

「とりあえず。そう言う事にしときましょう。しばらくすれば塵に……」


 ゴギィィィィ!!


 そこに、仮面の首の骨が砕ける音がレミアとフィリシアの耳に入る。フィアーネと仮面の戦っている居場所は二人からかなり離れているはずなのだが、しっかりと聞こえた。


 二人がフィアーネの方を見やると、フィアーネが仮面の頭部と延髄を掴み仮面の喉を突き出させ、そこに膝を入れ終わった所だった。どうやらフィアーネの膝蹴りにより仮面の首が折れた音が墓地に響いたのだ。

 仮面の首はあり得ない方向にねじ曲がっており、仮面はそのまま崩れ落ちる。ピクリとも動かない所を見ると決着はついたようだ。


「終わったみたいね」

「そうね、行きましょう」

「うん」


 レミアとフィリシアが戦いが終わるのを確認し、フィアーネの元に歩き始めた時、フィアーネもこちらに向かって歩き始めていた。フィアーネの足下に転がっていた仮面は塵となって崩壊を始めていたのが二人の視界に入った。


 レミアが手を振ろうとしたときに、フィアーネの顔が驚愕の表情を浮かべ、そしてフィアーネが二人に向け叫んだ。


「二人とも後ろ!!」


 フィアーネの叫びにレミアとフィリシアは振り向くと先程二人が斬り伏せた仮面が立ち上がり剣をかざして二人に斬りかかってきたのが見える。


「なんで!?」

「く!!」


 レミアとフィリシアはそれぞれ剣を抜くとそのまま仮面と剣戟を始める。仮面の斬撃をレミアは双剣の一本で受け流すと同時に喉を斬り裂いた。鮮血が舞い仮面の首は後ろの皮一枚が残っていたために落ちる事はなかったが、後ろ側にダラリと垂れ下がった。


 レミアが喉を斬り裂いた一瞬後にフィリシアの突きが心臓を刺し貫くと、仮面の体から力が抜け、剣を抜くとそのまま仮面は倒れ込んだ。


 レミアとフィリシアは後ろに跳び、仮面から距離をとった。


「どういう事?」


 レミアの訝しむ声にフィリシアが答える。


「死んでなかった? いえ……そんなはずはないわね。塵となって……これは言い訳ね」


 フィリシアの言葉も戸惑いがあった。同時に仮面の死を確認しなかった自分の甘さを密かに恥じる。それはレミアも同様のようであった。


「こいつまるで時間が巻き戻されるように復活したのよ」


 仮面の復活の様子を見ていたフィアーネが二人に言うと、二人は驚きの表情を浮かべてる。


「それって……」

「うん、何とかと言う魔人の能力と……始まったわ」


 レミアの言葉にフィアーネが答えようとしたときに、フィアーネが指を差す。その方向を見ると斬り伏せられた仮面の胸の傷が塞がり、次いで斬り裂かれた喉が繋がっていくのが見える。その際に舞った鮮血も仮面の中に吸い込まれていくのが見えた。


 傷口の塞がった仮面は立ち上がると三人に殺気を向けた。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ