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仮面Ⅱ②

「「「行け!!」」」


 三人の言葉に従い、神の戦士(エインヘリアル)運ぶ猟犬(ハラーハウンド)血染めの盗賊(ブラッディシーフ)が一斉に駆け出す。


 仮面達までの距離は40メートル程、わずか2~3秒で到達できる程の距離だ。


(さて……どう出る?)

(魔術……それとも剣? どっちかしら?)

(前回は転移した……今回はどうかしら)


 三人はまずこの一手を仮面達がどのように捌くかを観察する。もちろん、仮面達が隙を見せれば容赦なく叩きつぶすつもりである。すでに戦いが始まっている以上、三人に容赦という言葉は無いのだ。


 仮面にまず突っ込んだのは運ぶ猟犬(ハラーハウンド)達だ。仮面の一体が剣を地面に突き刺すと地中から瘴気で出来た無数の刃がほぼ同時にレミアの放った運ぶ猟犬(ハラーハウンド)達を刺し貫いた。核を貫かれた運ぶ猟犬(ハラーハウンド)はそのまま消え去るが、貫かれていないものはそのまま串刺しになったままもがいているが外れる事はないようだった。


「な……」


 レミアが意表を突かれた表情を浮かべる。半分は本気であったが、もう半分は演技だ。運ぶ猟犬(ハラーハウンド)の戦闘力は実際大した事は無い。そのためあっさりと斃されても不思議ではない。だが、ただの一度の攻撃で十数体の運ぶ猟犬(ハラーハウンド)が敗れるとは思っていなかったのだ。そして、全ての運ぶ猟犬(ハラーハウンド)が敗れた場所がほぼ同じ場所であったために、転移魔術の拠点としては不完全な一手となってしまったのだ。

 続けてもう一体の仮面が地面に剣を突き刺すと再び地中から、無数の刃が飛び出し縫い止めていた残りの運ぶ猟犬(ハラーハウンド)の核を刺し貫き塵となって消滅させる。


「やるわね……」


 フィアーネの言葉にレミアは頷く。運ぶ猟犬(ハラーハウンド)を斃した仮面達は神の戦士(エインヘリアル)血染めの盗賊(ブラッディシーフ)を迎え撃つ。


 神の戦士(エインヘリアル)は、一対一に拘るような事はしない。二体ずつに別れるとそれぞれ仮面に斬りかかる。二対一という有利な条件を作るとそれぞれ斬り結んだ。残りの一体の仮面には血染めの盗賊(ブラッディシーフ)六体が斬りかかるという戦いになったのだ。


 キン……キィィッィン……。


 仮面と神の戦士(エインヘリアル)血染めの盗賊(ブラッディシーフ)の戦いを三人はじっと見ている。仮面の戦闘力自体は見たところ、前回の仮面とそれほど異なるものではない。


「剣術、膂力、速度……その辺りは前回の奴とそれほど変わりはないわね」

「うん、さっき私の運ぶ猟犬(ハラーハウンド)を斃した技は、前回の奴は使わなかったけど、基本は同じじゃないかしら」

「でも、何か引っかからない? あの仮面達、まったくこっちに向かってきてないわ」


 フィリシアの意見に二人は頷く。仮面の戦い方はまるで三人の実力を測るかのような戦い方をしているように感じるのだ。


「うん……フィリシアの言う通りね。私達が仮面を測っているように、向こうもこっちを測っているようにも思えるわ」

「となると……必要以上に手札を見せびらかすのは控えた方が良さそうね」

「そうしましょう」

「賛成」


 三人がそう結論づけた時に、一体の仮面が煙のように消える。


 キィィィィィン!!


 そして次の瞬間に三人のすぐ側で剣を打ち合わせる音が響く。仮面の一体が転移魔術で三人のすぐ側に転移して斬撃を放ったのだ。


 仮面の放った斬撃にレミアは双剣を即座に抜き放つとあっさりと受け止めたのだ。転移した瞬間の斬撃であり、多くの者はそのまま首を落とされていてもおかしくない。だが、レミアは避けるのでもなく驚異的な反射神経で双剣を抜き放ち防いだのだ。


 そして、仮面の攻撃に反応したのはレミアだけではなかった。フィアーネ、フィリシアもレミアが剣を受け止めた瞬間に迎撃に動いていたのだ。


 フィリシアはレミアが双剣で斬撃を受けた瞬間に、抜剣すると仮面の胴を斬り裂く。フィリシアの剣は鋭く、そして限りなく速い。仮面の腹部に斬り裂かれた傷が生じたのはフィリシアの剣が胴を通り過ぎてしばらく経ってからの事である。


 フィアーネはフィリシアが仮面の腹部を斬り裂いた次の瞬間に心臓の位置に攻撃を叩き込んでいた。その攻撃は“裏当て”と呼ばれる技法で放たれたものだ。当てた瞬間に素早く拳を引くことで、衝撃だけが対象者の体の内部に入っていくのだ。フィアーネの“裏当て”により仮面の心臓はあっさりと破裂する。


 レミアもまた斬撃を双剣の一本で受け止めると同時にもう一本の剣も抜き放ち、斬撃を放って仮面の首を刎ね飛ばしていた。


 仮面とすれば攻撃をしたはずなのに、気がつく事なく敗れていたのだから正直意味がわからなかっただろう。意味がわかったところで、その理不尽さを感じただけだっただろうからある意味、気付かずに逝けたというのはある意味幸せな終わりだったのかも知れない。仮面に意識というものがあったならの話であるが……。


 血を巻き散らかしながら倒れ込む仮面から三人は間合いをとる。返り血を浴びることを嫌った故の行動である。ただ、三人が返り血を浴びるのを嫌がったのは別に汚れるのが嫌だったからではない。仮面の血が毒を持っていた場合には浴びることで不都合が生じる可能性があったからである。


 倒れ込んだ仮面は前回同様に塵となって消え去っていった。


「しまった……死体が残らないんだった」


 レミアの言葉に二人は仕方がないというような表情を浮かべる。


「仕方ないわよ。咄嗟の事だったし」

「ええ、それにまだ二体いるから大丈夫ですよ」


 二人の言葉にレミアも頷く。


 もし、仮面が三人の会話を聞いて理解しているのであれば、恐怖に顔を引きつらせたかも知れない。三人は仮面を甘く見ているわけではなかったが、自分達が敗れる相手とみなしているわけではない事に気付いただろうからだ。


「さて…」


 フィアーネの言葉に二人は頷く。ここからが本番だと言う事をフィアーネの雰囲気から察したのだ。いや、レミアとフィリシアもフィアーネの言葉を雰囲気がなくともこれからが本番であると判断していたのだ。


「どんな術があるから解んないから気を付けましょう」


 フィアーネの言葉にレミアが答える。


「そうね。それじゃあ、ここからが本番という事で大丈夫ね?」

「もちろんよ。でも出来るだけ情報を得ることも忘れないでね。特にフィアーネ」


 フィリシアの言葉にフィアーネは頬を膨らませる。


「だ、大丈夫よ。私は最近、手加減が上手くなったんだから」


 フィアーネのやや上ずった返答に二人は苦笑する。


「わかってるわ、冗談よ♪」


 フィリシアがニッコリと微笑む。フィリシアにとってフィアーネは大事な友人であると同時にいじりの対象となっていたのだ。ただフィアーネもその事に対して不愉快な感情は一切無い。むしろそれを楽しんでいたのだ。


「もう!! それじゃあ行くわよ!!」


 フィアーネの言葉に二人は頷くと仮面の元に駆けだした。



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