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六剣⑫

 カタリナの背後に飛び出してきたナフタはカタリナに斬撃を放った。カタリナは箒の柄に魔力を注入し、ナフタの斬撃を受け止める事に成功する。


(……違う。こいつは偽物ね)


 カタリナはナフタの剣を受けた瞬間に背後に回り込んだナフタが偽物である事を看破する。最初、カタリナは魔剣の力を使い、地中にトンネルでも形成し回り込んだと思ったのだが剣を受けた時に偽物だと気付いたのだ。

 カタリナが偽物と気付いた理由は斬撃の威力が想定していたよりも弱かったからである。


(どこ? 地中かしら……)


 カタリナはナフタの戦いにおいて土を操っていない。その理由は、もし相手の土を操る能力の方が上だった場合に逆に利用される可能性があったために使用を控えていたのだ。だがこの時、土を操らなかったためにカタリナはナフタの居場所を把握出来ていなかったのだ。


(まずは、こいつから……)


 カタリナは箒でナフタの分身を弾く。すかさず追撃を行おうと思ったのだが、最初のナフタを覆った柱からまたもナフタが現れるとそのまま斬撃を放ってきた。


「く……」


 今度の斬撃は分身のものとは比べものにならないほど優れた斬撃であった。カタリナはまたも箒の柄で受けた。そこに空中から魔天の凶刃(ヴァンデオルド)の傀儡が飛来しナフタに斬りかかった。


「バカが、貴様が偽物だと言う事はとっくにわかっている」


 ナフタは吠えるとバックステップし傀儡を迎え撃つ。その際に体勢を立て直した分身がカタリナに襲いかかったためにカタリナはナフタ本体を追撃することは出来なかった。


 ナフタが魔剣メンクレオを振るうと傀儡の首が落ち、そのまま返す刀で胴を両断した。傀儡はそのまま地面に激突すると覆っていた魔力が消え去り木製の傀儡の部分が露わになった。


「ほう……」


 カタリナに視線を移したナフタは感歎の声を上げる。カタリナは箒を薙刀に変化させ、分身を斬り伏せていたのだ。斬り伏せられた分身は土塊に戻っておりナフタはカタリナの技量を素直に賞賛したのだ。


「余裕ね」


 カタリナがナフタの感歎の声を聞くと言葉を発する。カタリナの声は平坦であり気分を害したようには見えない。


「ふ……お前は確かに強いが俺の方が強いのは確実だ」


 ナフタの余裕の言葉にカタリナは苦笑しながら返答する。


「ふ~ん、私より強いというあなたがどうしてそこまでケガを負っているの? ちなみに私は無傷だけど」

「ふん……お前はその程度の事も説明してもらわねば理解できないほど愚かだったのだな」

(まぁ、策に嵌まってそれどころじゃ無かったと言いたいんでしょうけど、それ一般的に言い訳って言うんだけどね)


 ナフタの言葉にカタリナは心の中で毒づく。カタリナに言わせれば策にかかる事も実力のうちであった。それはアレン達も同様であり、初戦で【爆発エクスプロージョン】を転移魔術で送り込んでくるという敵の策に嵌まっても、相手を卑怯とか言うような事は一切しない。


「貴様の策は既に破っている。真っ向勝負ならば俺がお前に敗れるはずは無い。それはお前もわかっているだろう?」

「……」

(まぁ、試合なら私はこいつに勝つのは難しいわね)


 カタリナは苦笑しそうになるのを必死に堪える。


(でも、策はまだ普通に継続中なのよね。にも関わらずここまで得意になれるんだから、何というかピエロね)


 カタリナが現在進行形で行っている策は単純極まりないものだ。ナフタはすでに策を破ったつもりなのだが、カタリナにしてみればまったく破られたという意識はない。


「斬るのは貴様だけでは無いからな。さっさと首を差し出せば楽に殺してやるぞ」


 ナフタの嫌みたらしい声が醜く歪んだ口元から発せられた。


「あっそ……まだ勝負は決まったわけじゃ無いのに何を調子に乗ってるんだか……」

「ふん、可愛げの無いガキだ」

「あなたに愛想振りまいても意味ないでしょ。ここで死ぬんだから」

「言ってくれるな……」

「事実よ。その証拠を見せてあげる……って違うわね。あなたは見ること出来ないけど地獄から答え合わせをしておけばいいわ」


 カタリナの言葉にナフタは気分を害したようだった。一方でカタリナも策が実った事を悟ったため、勝負を決することにしたのだ。


「小娘が……死ね!!」


 ナフタは一声上げるとカタリナに向かって間合いを詰める。その動きはたとえ一流の騎士であっても気付かぬ間に首が落とされる事になるだろう。だが、カタリナは一流の騎士以上の実力者である。ゆっくりと薙刀を構える。


(バカが!! 貴様の首をも……が)


 ナフタは突然倒れ込んだ。あまりにも突然の出来事であり普通は呆けてしまう事になるのだがカタリナはまったく動じない。跳躍すると倒れ込んだナフタの延髄の位置に薙刀の部分を容赦なく突き立てる。


「が……」


 延髄を貫かれたナフタは自分の身に何が起こったかをまったく理解することは出来なかった。なぜならナフタはすでに絶命していたからである。


 ナフタの右膝の後ろには一本の矢が突き刺さっていた。この矢がナフタが突然倒れ込んだ理由に他ならない。そしてカタリナが一切動揺しなかったのは、この矢を射た人物の事を知っていたからだ。


「流石はアディラね」


 カタリナは矢の放たれた方向を見る100メートル程先にアディラが弓を構えているのが見えた。そしてその両隣にはメリッサとエレナが立っていた。


 カタリナはアディラが伏兵を斃し、アレン達の応援にくるのを待っていたのだ。そしてこれがカタリナのとっていた策の正体だった。要するにカタリナは独力でナフタを斃すつもりなど一切無かった。ただ時間を稼ぎ、他の仲間達との戦いに参戦しないように足止めするつもりだったのだ。


「あなたの本当の相手は私じゃ無かったのよ」


 カタリナはそういうとナフタの本当の相手であるアディラに視線を移すとニッコリと微笑んだ。



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