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六剣⑪

 フィリシアの放った死霊の叫び(クライオブレイス)死霊レイスがナフタの意識を一瞬奪った時にカタリナは魔矢マジックアローを放った。


 カタリナの放った矢(マジックアロー)が数十本ナフタに襲いかかったのだ。ナフタは魔剣メンクレオを地面に突き刺すと周囲に土の壁が盛り上がる。この土の壁には魔力が込められており、カタリナの魔矢マジックアローを完全に防ぐことに成功する。


 カタリナの魔矢マジックアローを防ぐとナフタの周囲にあった土の壁も地面に溶け込むように消え去った。


「その魔剣は……土を操る魔剣というわけね?」


 カタリナの言葉にナフタはニヤリと嗤いクチを開いた。


「まぁな、魔剣メンクレオは土を操る」

(また、あっさりとバラすわね。自慢かしら? それとも作戦かしら? まぁ、確かめる術が無い以上話半分に聞いておくべきよね)


 ナフタの返答にカタリナは心の中で呟く。戦いの場において相手の言葉を鵜呑みにするのは愚か者のする事だ。実際にアレン達も言葉を使って相手の意識を誘導するというような事は当たり前のようにやっていることだ。自分達がやっている以上、相手もやると想定しておくのは当然であったのだ。


「そう、それじゃあ。やりましょうか」


 カタリナの言葉にナフタはまたもニヤリと嗤う。自分がやられるなどとは一切思っていない心理がその表情には表れている。

 カタリナはその表情に一瞬不快になるがそれを表情に表すような事はしない。カタリナは箒で地面をつくと地面に魔法陣が浮かび上がり、一体の悪魔が魔法陣から現れる。


 その悪魔の頭部は鳥であり、人間の体にに翼が生えたような容貌をしている。身長は2メートル弱、翼は広げれば確実に5メートルを超える事は間違いない。両手にはそれぞれ刀身1メートルを超える長剣が握られている


魔天の凶刃(ヴァンデオルド)だと……」


 ナフタの口から悪魔の名が告げられる。魔天の凶刃(ヴァンデオルド)は空中を舞い、急降下して敵を斬り殺すことを得意とする戦法を使う悪魔であり、かなり厄介な悪魔である。

 ナフタはカタリナが魔天の凶刃(ヴァンデオルド)を召喚した事に戦慄する。召喚したいうことは少なくとも、この魔天の凶刃(ヴァンデオルド)と契約を結んだと言う事だ。


(こんなガキが……魔天の凶刃(ヴァンデオルド)と契約を結べるなんてな)


 ナフタは心の中でカタリナの技量に感歎していた。召喚し使役すると言う事は少なくともカタリナの実力は魔天の凶刃(ヴァンデオルド)を凌駕しているということだ。


(さて、驚いてくれたようね。まぁ魔天の凶刃(ヴァンデオルド)が召喚されれば魔族であっても驚くわよね)


 一方でカタリナは自分の作戦が上手くいった事に内心ほくそ笑む。魔天の凶刃(ヴァンデオルド)は翼をはためかせゆっくりと空に浮かんでいく。


 魔天の凶刃(ヴァンデオルド)が空に浮かんでいくとナフタの視線はそちらに向かう。それを見たカタリナはまたも嗤う。


(ここまでは予定通りね)


 カタリナは右手に魔力を集中すると右手の先に拳大の魔力の塊が現れる。その魔力の塊は1秒ごとに大きくなっていく。その様をナフタは黙って見ている。本当ならば斬りかかりたいのだが空に浮かぶ魔天の凶刃(ヴァンデオルド)に隙を見せることになると思い斬りかかることが出来なかったのだ。

 カタリナの右手には直径50㎝程の球体がふよふよと浮かんでいる。その光景をナフタは黙って見ている。いや、魔天の凶刃(ヴァンデオルド)にも注意を払っているために一手後れてしまったのだ。


 カタリナは球体を地面に落とすと地面に触れた瞬間に球体は2つに分裂する。分裂した球体は跳ねて再び地面につくとまたも分裂した。最終的に球体は16個の拳大の球体になった。


「いけ」


 静かにカタリナが言うと16個の球体は一斉に跳ね出し、空中で高速回転を始める。高速回転した球体が地面に落ちると同時にナフタに向かって一斉に動き出す。その変化は急激だった。まさに静から動への一斉への変化にナフタは驚く。

 ナフタは回転する球体から三本の刃が飛び出した事に気付く。その刃と高速回転が合わされば凄まじい殺傷力を持つことは容易に想像できる。


「ち……」


 球体は次々と不規則な動きでナフタへ襲いかかる。球体の動きはそれぞれ異なっており、速度の速いもの、遅いもの、高く跳ねるもの、低いもの、上、横、斜めに跳ねるというのがそれぞれ違っておりナフタは躱しきることはかなり困難である事を感じる。


 だが、困難である事は確実であるがナフタも六剣オラシオンに属する強者である。次々と襲い来る高速回転する球体を魔剣や体術を駆使してダメージを受けない。

 そこに空から魔天の凶刃(ヴァンデオルド)が急降下し、ナフタへ斬撃を放つ。ナフタは間一髪その斬撃を躱す事に成功するが、躱したことで球体の刃を躱し損ねてしまい、肩口を高速回転した刃が斬り裂き鮮血が舞った。


「ぐ……」


 ナフタの口から苦痛の声が漏れる。その声が消える間もなく次々と球体と魔天の凶刃(ヴァンデオルド)が急降下して斬撃を放った。ナフタは躱し続けているがこのままではやられるのは時間の問題であることを理解していたのだ。


「今よ!!」


 カタリナがナフタの肩越しに視線を移すと突然叫ぶ。ナフタはその声につい後ろを振り返ってしまう。ところが振り返ったナフタの視線の先には誰もいない。“欺された”事に気付いたナフタが振り返ろうとした瞬間に腰に凄まじい衝撃が走りナフタは弾き飛ばされる。視界から外れたカタリナが後ろから蹴り飛ばしたのだ。


「マヌケね……こんな陳腐な手に引っかかるなんて」


 カタリナの言葉が発せられた直後に再び球体が回転し、ナフタに襲いかかる。


「くそ……」


 立ち上がったナフタは襲いかかる球体を魔剣を振るって弾く。そこに魔天の凶刃(ヴァンデオルド)が斬撃を放つ。


 キィィィィン!!


(ん?)


 魔天の凶刃(ヴァンデオルド)の斬撃をナフタが魔剣で受けた時、違和感を感じた。妙に斬撃が軽く感じたのだ。以前、別の魔天の凶刃(ヴァンデオルド)と戦った時に受けた斬撃は遥かに重かったのだ。


(この魔天の凶刃(ヴァンデオルド)は強くないのか?)


 ナフタの魔天の凶刃(ヴァンデオルド)を見る目が変化したことをカタリナは悟る。


(あらら、偽物ってばれちゃったのね……)


 カタリナは心の中でため息をつく。カタリナが使役している魔天の凶刃(ヴァンデオルド)は実はカタリナが作成した傀儡であった。ハッタリのために作成した傀儡であり戦闘力も実はそれほど高くないのだ。唯一本物に近いのは速度ぐらいであり脅しのための傀儡だったのだ。


 球体が同時にナフタの周囲から襲いかかるが、ナフタは少しも慌てること無く魔剣メンクレオを地面に突き刺した瞬間にナフタの体を土の柱が覆った。ナフタは土の柱に守られており球体の刃では土の柱を抉ることは出来ない。


(かなりの量の魔力を柱には注ぎ込んでいるわね……)


 カタリナは球体で柱を破壊する事は出来ない事を悟ると術を展開する。【斬魔の大剣(クルトゥース)】がカタリナが選んだ術である。魔術により形成された巨大な剣を敵に放つという単純なものであるが、その威力は絶大であった。

 カタリナの頭上に全長2メートル程の大剣が発生した時、カタリナの足下に土の柱が突き上げてきた。


「く……」


 カタリナは前に跳び飛び出してきた柱に目をやるとナフタがその柱から飛び出してきた。


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