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傭兵⑫

「うわぁ~綺麗ね♪」


 アディラが感歎の声を上げる。すると周囲にいたフィアーネ、レミア、フィリシア、メリッサ、エレナも目を奪われている。


 彼女たちの目の前には氷で作られた一体の怪物が浮かんでいる。この怪物の名前は【氷蓮魔人リムラス】という名前であるとカタリナから聞いていた。


 彼女たちの前に顕現した【氷蓮魔人リムラス】は体長3メートルほどで、両腕に氷がまるでスパイクのように生えている。そしてかなりの冷気を発しているのだろう周囲の水分が凍結し杭から発せられる青い光を受けて乱反射しキラキラと輝く姿は幻想的な光景を醸しだしていた。


「う~ん…カタリナってセンス良いわね」


 フィアーネの賛辞にレミアが同意する。


「そうね、アレン達の所にいる炎獄魔人エメンアゴルだったけ? あれもすごい綺麗ね」

「ええ、あっちのカタリナ達の所に表れた雷の怪物も綺麗ね」


 レミアの言葉にフィリシアももう一つの方向に表れた雷の怪物を見て感歎する。


「確かにカタリナさんの開発した術というのは凄いですね」

「うん、彼女が敵じゃなくて良かったわ」


 メリッサとエレナは心の言葉を発する。カタリナの開発した術は国や時代によっては禁術に指定されてもおかしくないものであるとメリッサとエレナは考えていたのだ。その禁術に指定されるような術をわずか15歳の少女が作り上げたというのだから驚くしかない。


「でも、こんな術を開発したカタリナでもホムンクルスはまだ作れないと言うんだからホムンクルスってよっぽど難しいのね」


 フィアーネの言葉に全員が頷く。カタリナをもってしても成功していないホムンクルスというものの難易度が凄まじく高い事が思われた。


「まぁ…その辺の事は後で話すとして、まずはリンゼル達を殲滅しましょう」


 アディラがそう言うとフィアーネは頷き【氷蓮魔人リラムス】に視線を向けた。






「おお~これが【雷光魔人インジム】か」


 ジュセルの感歎の声にカタリナが満足気に頷く。


 ジュセルの目の前には、雷を纏った体長3メートルほどの怪物がいる。雷光魔人インジムと呼ばれた怪物の全身は、固い外殻に覆われており、腕が奇妙なほど長い。腕を伸ばせば、そのまま脛まで届くぐらいの長さだ。


「ええ、炎獄魔人エメンアゴル氷蓮魔人リラムス雷光魔人インジムは私の自信作よ!!」


 褒められて嬉しいのだろうカタリナ上機嫌だ。


「それにしても、カタリナの術は面白いわね」


 シアもカタリナに賛辞を送る。シアももはや一流の魔術師であるがそれでもカタリナの術の腕は驚くべきものだったのだ。


「えへへ、ありがとうシア」


 カタリナはシアに答える。シアの実力を知るカタリナからすれば、一流の魔術師に褒められるのは嬉しいものなのだ。


「うん…格好良い……」

「綺麗…」


 そして、レナンとアリアも雷光魔人インジムを見ながら感想を言う。評判が良いことにカタリナの機嫌はさらに良くなっていく。


「レナン、アリア、ありがとう♪」


 カタリナが2人に礼を言うとレナンとアリアは照れた様子でうつむく。


(いや~可愛いわ、この2人♪ 弟、妹がいたらこんな感じなのかしら)


 カタリナそのような事を思っていると、ジュセルがカタリナに声をかける。


「それじゃあ、カタリナ…そろそろ始めようか」

「そうね、他のみんなも準備は良いみたいだし始めましょう」


 カタリナはジュセルの言葉にそう返答すると雷光魔人インジムに命令を下す。この【破獄はごくの陣】では魔石を投じたものが表れた魔人達を使役することになる。炎獄魔人エメンアゴルはアレン、氷蓮魔人リラムスはフィアーネ、雷光魔人インジムはカタリナだ。


 カタリナが雷光魔人インジムに思念という形で命令を下す。命令は至ってシンプルなものだ。

 『敵を斃せ』という非常にシンプルな命令を受けて雷光魔人インジムは動き出す。


 魔人が動き出した先には動揺するリンゼル達がいた。




「来るぞ!! 全員構えろ!!」


 団長であるクギルの口から団員達に向かって指示がとぶ。


(くそ……何だ、この状況は…まずはあの化け物達を始末しなければ…)


「ミュリムは炎、ミザークは雷、リギンは氷だ。他の者達はそれぞれの隊長の援護だ!!行け!!」


 クギルの指示にリンゼル達は頷く。自分達の狩れている状況が今まで経験した事も無いほど厳しい事察しているが、ここで自分勝手に動いて生き残れるわけはないことをさっしているのだ。


 それぞれが隊列を整えると魔人に向かって突っ込んでいく。魔族であるリンゼル達の人数は約50人だが、戦力的には人間の一軍に匹敵する事は間違いなかった。


 ミュリムに率いられたリンゼル達は、炎獄魔人エメンアゴルに向かって突進していく。


 炎獄魔人エメンアゴルが無造作に腕を振ると纏っている炎がリンゼル達に向かって放たれた。さすがに一角の戦士達であるリンゼル達はいきなりその炎に巻き込まれるような者はいない。すぐに散会すると炎を躱す。

 躱された炎は地面に落ちると地面に炎が立つ。いくら炎獄魔人エメンアゴルの炎が凄まじいといっても土が燃え続けると言う事はあり得ない。そこから燃えているのは地面ではなく他の者を燃料として燃えている炎である事が察せられる。


 地面に立った炎は大きさを増し、形を変えていく。すると炎の中からもう一体の炎獄魔人エメンアゴルが誕生する。


「な……」


 一体のリンゼルが驚愕したところに誕生したばかりの炎獄魔人エメンアゴルに顔面を掴まれた。炎を纏った手に顔面を鷲づかみにされたその魔族はあまりの苦痛に暴れ始める。


 顔面を掴まれた膂力による苦痛なのか、纏う炎に灼かれる苦痛なのか、それとも療法なのかは判断がつかないが仲間を救うために周囲の魔族達が炎獄魔人エメンアゴルへ躍りかかる。


「がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁっぁっぁぁあ!!!!」


 顔面を掴まれていた魔族の体に火がつき、あっという間に火だるまになった。火だるまにさせられた魔族は絶命したのだろう。炎獄魔人エメンアゴルは未だに火が残る魔族の死体を投げ捨てる。


 その死体の炎からもう一体の炎獄魔人エメンアゴルが誕生する。


 この出来事にミュリム達の顔が流石に凍る。この炎獄魔人エメンアゴルは炎から次々と誕生することが察したのだ。それはリンゼル達に突きつけられた絶望が具現化したような光景であったのだ。 

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