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傭兵⑥

 アレン達は墓地に侵入したリンゼルと思われる者達の気配をすでに察している。というよりもリンゼルは確実にアレン達を舐めているのだろう。まったく気配を隠そうとしていない。


 この事にアレン達は苦笑いする。自分達の狙い通りに踊ってくれているのだから当然の事である。


「あの魔族はそれなりに仕事をしたようだな」


 アレンの言葉にフィアーネが答える。


「そうね、道化であっても使い方次第で良い状況がつくれるわね」


 フィアーネの言葉に全員が頷くと戦闘態勢を取ることにする。どうやらリンゼル達は二手に分かれ挟み撃ちにするつもりらしい。こちらを甘く見ているリンゼル達など、もはやアレン達にとって脅威を感じるような対象ではない。


「それじゃあ、始めようか…」


 アレンはそう言うと先程の魔石に込められた魔術を展開する。込められていた魔術は結界である。この国営墓地を覆う結界をもう一つ形成したのだ。この結界はアレンが解かない限りはこの墓地から出ることは出来ない。


 エルヴィンに頼んで魔石に込めてもらった特別製だった。


 つまり、この新しく張られた結界によってリンゼル達はこの墓地に閉じ込められてしまったというわけだった。


「それじゃあ……」


 フィアーネが魔法陣を展開する。ジャスベイン家の牧場からアンデッドを召喚するためだ。


 フィアーネの召喚陣から次々とアンデッド達が現れる。スケルトン、デスナイト、リッチ、死の聖騎士(デスパラディン)、デスバーサーカーというアンデッド達が表れるとアレン達の前に整列し出す。


 死を具現化したアンデッド達が見目麗しい美少女の号令に従う様はかなり奇異に見える。


「ここに魔族が入り込んでいるから、そいつらを斃しなさい」


 フィアーネの命令が下されるとアンデッド達は立ち上がり、アレン達とは違う生者の気配に向かって歩き出していく。


「私もやっておこうっと」


 次いでカタリナが箒の柄で地面を叩き魔法陣を展開させる。魔法陣から土で出来た槍兵が20体表れる。カタリナの召喚術によって表れた土槍兵(アースファランクス)だ。


 土槍兵アースファランクスは10体1列で隊列を組むと槍衾を形成しアンデッド達が向かった方向に駆け出していく。


「やっぱり立場的に俺もやっておかないとな」


 そしてアレンが呟くと瘴気を集め始める。瘴気は球体となりある程度集まったところで膨張し人型に変化する。瞬く間にアレンの周囲に6体の闇姫やみひめが形成される。


「じゃあ、行け」


 アレンの命令を受けて6体の闇姫やみひめ達はリンゼル達に向けて飛んでいった。


「さて…あいつらに足止めをしてもらっている間に、別働隊を始末するとしよう」


 アレンの言葉に全員が頷く。アレンは前述したように敵が二手に分かれたのを把握している。わざわざ各個撃破の状況を作ってくれたのだからそれを利用しないのはあり得ない事だ。


 二手に分かれたといっても、強いと思われる気配が集まっているのがいわゆる本体であり、そちらの方にアンデッド達を向かわせたのだ。そして、別働隊の方をアレン達が直接叩く事にしたのだ。


 質も量も別働隊は本体に比べ遥かに劣る以上、アレン達は短期間で別働隊を殲滅するつもりだったのだ。


 アレン達は別働隊が向かっている方向に向け歩き出した。



 



「相手は14~5人か…団長も慎重だよな」


 団員の1人が言うと、周囲の者達も同意する。


「ああ、確かに人間如きに慎重だな」

「まぁ良いじゃねえか、人間を嬲って遊べることには変わりないんだからな」

「テルクの話じゃ、いい女だって話じゃねぇか。楽しみだな」

「その墓守を捕まえてよ。目の前で女を犯してやったらその墓守は気が狂うんじゃねぇか?」

「そりゃ、いいな。女達から殺していって最後に殺すというのもいいな」


 団員達はまったく警戒もせずに話ながら歩いている、団員達の意識に殺し合いという意識はほとんどない。ただ人間達を圧倒的なからで踏みつぶすつもりだったのだ。すでにどう戦うかではなく、どういたぶるかについて話しているところからそれがわかる。


 そのために団員達は自分達を狙う目があることにまったく気付いていない。


「さ~て、その墓守は……」


 1人の団員の言葉が中断される。隣を歩いていた団員が中断された事を不思議に思いお団員の方を向く。


「な……」


 言葉を中断した団員の首筋に一本の矢が突き刺さっていることを隣の団員が気付く。首を射貫かれた団員が倒れ込みピクピクと痙攣している。


「クルゴス!!」


 倒れた仲間の名前が叫ばれると周囲の団員達はすぐに戦闘態勢に入る。


「ち……狙撃だ。注意しろ!! クルゴスに治癒魔術をかけろ!!」


 別働隊の指揮官であるジルムが部下達に指示を出す。いかに油断していようとも一気に戦闘モードに切り替わるのはリンゼルという傭兵団が戦いに慣れているという証拠なのかも知れない。


 盾を持った団員が倒れ込んだクルゴスの周りに立ち、再びの狙撃に備える。治癒をしている者を狙撃されれば被害が大きくなるのだ。


「人間共め、舐めた真似を!!」

「そういうな。借りはたっぷりと返してやろうぜ」

「ああ、ぶっ殺してやる!!」


 周囲の団員達は威勢の良い言葉を吐きながら周囲を警戒する。だが、彼らが警戒するのは自分達の目の前ではなく後ろである。

 いや、もっと言えば首を射貫かれたクルゴスに刺さった矢である。もちろん、この矢はアディラが射たものだ。アディラの放った矢の鏃には魔石の欠片が埋め込まれており、そこには【爆発エクスプロージョン】が込められていた。


 その込められた【爆発エクスプロージョン】が発動した。


 ドゴォドゴォゴォォォォォォォォォォ!!!!


 凄まじい爆風がクルゴスの周囲に集まった団員達をまとめて吹き飛ばした。


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