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傀儡①

 今回は無双というわけではありません。

 夜の国営墓地を歩く者達がいる。


 もちろん、管理者であるアレンとその一行がいつものようの見回りをしているのだ。


 今夜の見回りは、アレン、アルフィス、アディラ、フィアーネ、レミア、フィリシア、カタリナ、ジュセルという面々である。全部で8人というかなりの人数であった。


「しかし、今夜は大丈夫かな…」


 アレンの口から不安の言葉が漏れる。


「そんなに不安に思わないでくださいよ。傷付きますって」


 ジュセルがそんなアレンの不安に抗議の声を上げる。しかし、心からの抗議ではないのは苦笑混じりに抗議を行っている事からも窺える。


「それにしてもアレン様、先程の話にあった魔人の件ですが…」


 アディラがアレンに言葉をかける。国営墓地に入る前にフィアーネが捉えた魔人について簡単な説明を受けたのだ。レミア、フィリシア、カタリナはアインベルク邸に住んでいるためにその日のうちに魔人の話を聞いたのだが、アディラ達は今夜初めて聞いたのだった。


 ちなみにその魔人の名前はクブトスという。クブトスは会った早々にレミア、フィリシア、カタリナに挑戦的な目を向けたがレミアとフィリシアが凄まじい殺気を放った事で、抵抗、反発という選択肢を投げ捨ててしまっている。

 フィアーネの行動制限の術により敵対行為を制限されているといっても初対面のレミア達をフィアーネの仲間であると認識するまでの僅かな時間差による行動であったが、その代償に心を完全に折られるという結果になってしまったのだ。


「ああ、今はオルカンドと共にロムにしごかれているぞ」


 アレンはクブトスの現状を知らせる。クブトスはそれ以前にアインベルク邸を襲撃したオルカンドという魔人と共にロムから戦闘訓練を施されている。魔人の現状の戦闘力ではいざという時にアレンの役に立たないというロムとキャサリンの判断に基づくものである。


 ただ、オルカンドとクブトスの戦闘力は決して低いものでは無い。アレン達が異常に高すぎるだけなのだ。その事に別に気付いていないわけではないのだがこのままでは何の役にも立たない事には変わりが無いのだ。


「まったく…魔人が弱いと断定できるのはお前達ぐらいだよ」


 アルフィスの呟きにジュセルも頷く。


「何言ってるんだ。もし魔人がアインベルク家でなく王城に現れればジュラス王が喜々として潰すだろうし、ジュセルの家に現れれば今頃エルヴィンさんが実験対象にしてるぞ」


 アレンの言葉にアルフィスとジュセルは、それぞれの父親が魔人と相対したときに、ものすごく楽しそうに殴り飛ばしている姿を思い浮かべる。最後には魔人が泣いて命乞いをしている姿が簡単に思い浮かぶ。


「…否定できん」

「アレンさんの言うとおり、親父の事だから楽しそうに実験するイメージしかわかない」


 アルフィスとジュセルの表情に疲れの表情が浮かぶ。


「まぁまぁ、それよりも私はフィアーネが会ったって言う魔族の皇女様一行の方が問題と思うわ」


 レミアの言葉にフィリシアも頷く。もちろん、そちらの方も懸案事項である事に間違いない。だが、対魔神の準備がそのまま皇女一行の準備になっているために結局の所、やることは今までと変わりなかった。


「そうね、魔族の皇女、魔剣士と呼ばれる魔族の戦闘のエリート、元『ガヴォルム』クラスの凶王フォルグ、レミアと同系統の技を持ってそうな女剣士、ゴルヴェラと聞いただけで強敵なのはわかるわ」


 カタリナの言葉にアディラも頷く。


「うん、単に魔族だけの集まりならそんなに気にしないのだけど、人間、ゴルヴェラが加わっているとなると単に力だけでじゃない何らかのカリスマ性があると思うんです」


 アディラの言葉にアレンも頷く。


「確かにそのカリスマ性の方が厄介だな」


 アレンも気にかかるところはそこであった。他種族を見下すゴルヴェラが従っているというところから実力以上の魅力がその皇女にはあるのだろうし、人間を見下している魔族が自分の一行に凶王を受け入れているという所に度量の広さを思わせた。


「アレンよりもカリスマ性はありそうだな」


 アルフィスの言葉にアレンは苦笑する。アインベルク家には魔人、亜人種、人間 (駒)、吸血鬼 (駒)が仕えているがほとんどがフィアーネの行動制限の魔術によってむりやり従わされているという形だったのだ。


「まぁな、お前よりもあったりしてな」


 アレンの返答には今度はアルフィスが苦笑する。アレンの軽口にアルフィスは気分を害した感じは一切ない。


「さて…今夜は勝手が違うからな。みんな気を付けろよ」


 アレンの言葉に全員が頷く。


「アレン様!! あそこ」


 アディラが叫ぶと全員が視線を向ける。するとリッチとデスナイト、スケルトンソードマンが連れ立って歩いている。


「やれやれ…いきなりきついな…」


 アレンの言葉にフィアーネも頷く。


「確かに最初はスケルトンとかの方が良かったわね」


 フィアーネの口からも慎重な声が漏れる。


「でも…デスナイトやリッチを斃せなければ話にならないからこれでいいのかもしれないわ」


 レミアの言葉にアルフィスが同意する。


「俺はレミア嬢の意見に賛成だな。慣れていくというのも大事だが強敵と戦ってやり方を覚えるというのもありだと思うぞ」


 アルフィスの言葉にアディラが答える。


「いずれにしても相手は気付いていますから先手を打ちましょう」


 アディラの言葉通り、デスナイト、スケルトンソードマンがこちらに向かって走り出している。リッチは魔術の詠唱に入っている。


 それを見たアディラは弓に矢をつがえるとリッチに狙いを定めて矢を放った。


「だめだわ…」


 放った瞬間にアディラの口から失敗を告げる声が発せられる。アディラの放った矢はリッチの肩口に刺さる。


 生者であれば肩口に矢が突き刺されば激痛が襲い、何かしらの影響が出るのだが、リッチはアンデッドであり痛覚がない。もしこのリッチに意識があるタイプであれば何かしらの影響が出たのだろうが、今回のリッチには意識が無いタイプなのだろう。


 詠唱を終えたリッチは【火球ファイヤーボール】を放つ。十数個の火球がアレン達を狙って放たれる。


 アレン達は散会し、十数個の火球の直撃を避ける。だが、これで終わりではなかった。デスナイトとスケルトンソードマンが襲いかかってきたのだ。


 デスナイトの巨大な剣が振り下ろされアレンは剣に魔力を込め強化することで防ごうとする。


 ガキィィィィィン!!


 デスナイトの斬撃を何とか受け止める事に成功したが、アレンの剣にデスナイトの巨大な剣がめり込んでいく。


 デスナイトはそのまま巨大な剣でアレンの剣を押し切り、その下にあったアレンを斬り裂いた。



 今回の話で主人公達が弱い理由はサブタイと描写で察してくれている方が多いと思いますが、よろしくおつきあいください。

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