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成長

 アレンの弟子の一人である近衛騎士のウォルターは驚いていた。同期の近衛騎士達と自分の実力との差に・・・


 アレンの弟子の一人である近衛騎士のロバートは驚いていた。あまりの先輩騎士の剣の遅さに・・・


 アレンの弟子の一人である近衛騎士のヴォルグは驚いていた。あまりに先輩騎士の技術が拙いことに・・・


 アレンの弟子の一人である近衛騎士のヴィアンカは驚いていた。アレンとロムどころかキャサリンにまであしらわれる自分たち四人の弱さに・・・



 アレンに弟子入りした四人はロムに稽古をつけてもらっており、メキメキと実力を上げていた。それは間違いない。近衛騎士の訓練で、同期と先輩の騎士達と模擬戦を行うと危なげなく勝利を収めているのだ。


 確かに、四人は近衛騎士の新人の中でも、トップクラスの実力があった。だが、圧勝するほど実力の差は付いていなかったのだ。だが、アレンに弟子入りしロムに稽古をつけてもらうようになってから、あっという間に他の騎士達を置き去りにしてしまった。


 アレンやロムの使う技術は、自分たちの技術とは全く違う技術体系だった。その技術を仕込まれていくうちに未熟ながら使用できるようになっていき、それらの技術を使えない騎士達を圧倒するようになっていったのだ。

 青銅製の剣しか持たない相手に鋼鉄製の剣で戦っているようなもので、まったく、一方的な展開になっているのだ。


 そんなヒラの近衛騎士ではまったく相手にならない四人だが、ロムにはまったく歯が立たない。

 ロムの妻であるキャサリンにも稽古をつけてもらったが、これまた相手にならない。

 アレンの友人(本人は『妻よ!!』わめいていたが)であるフィアーネには、『手加減って本当に難しい』という言葉が示したようにボコボコにされた。

 アレンに至っては殺気(あくまで訓練レベル)を向けられれば心が折れた。



 要するにアレンの関係者が強すぎて四人は少しも傲るが出来なかった。だが、四人はアレンが誇れるような弟子になるべく日々精進していた。時間を見つけてはロムに稽古をつけてもらいにアインベルク家を訪れている。



「「ロム先生、今日もよろしくお願いします」」


 ロバートとヴォルグがロムにお辞儀をする。ウォルターとヴィアンカは仕事のため今日はアインベルク家で稽古をする事ができない。ロバートとヴォルグがアインベルク家に稽古に行くことを聞き『お前らばかりずるい!!』『う~ロム先生の稽古だけでも羨ましいのに、キャサリン先生の指導も受けられるかもしれないなんて羨ましすぎる』とものすごく羨ましがられてしまった。

 まぁ、ロバートもヴォルグも逆の立場なら絶対そう言うよなという思いがあるため、反論はしなかった。


「はい、それではお二方、今日もよろしくお願いします」


 年配のロムは物腰が柔らかく、教え方も丁寧で、甘さと優しさの区別もしっかりとつけている最高レベルの教師と言えた。


「予備動作をなくす練習からやりましょう」

「「はい」」


 いつもの訓練だ。だが、二人の顔に弛緩したものはない。むしろ『今日こそは!!』という気迫がみなぎっている。

 この訓練は非常に単純だ。ロムが拳を放ち、ロバート達がそれを躱すというものだ。訓練を受けて2ヶ月以上経つが今まで、一度も成功していない。四人はいつもロムの拳を避けようとしているが、気がつけばいつも鼻先にロムの拳があった。ロムが寸止めしてくれなければ顔の形は四人とも大きく変貌していたことだろう。

 横から見ていると決してロムの拳は目で追えないと言うものでは無い。実際にロムの拳よりも、速い近衛騎士がいるくらいである。



 いつものように、ロムが拳を繰り出す。ロバートは躱せず寸止めされる。ヴォルグも同じだ。

 いつものように、ロムが二人に拳を繰り出す。いつもの結果が出ていたが、この日の最後に少しだけ、ロバートが反応した。ロムの拳が鼻先に寸止めされる前に、ロバートは反応したのだ。

 ロムはニコリとほほえむ


「ロバート様、よく躱されましたね」

「は・・・はい!!」


 ロバートの目に涙がたまった。自分が強くなっている、成長しているという実感が出てきたのだ。


「ヴォルグ様も、じつは出来るのですよ」

「え?」

「ふふ、ではやってみましょうか」


 ヴォルグはロムの拳を躱そうとする。だが、駄目・・・。もう一度、ロムは拳を突き出す。ヴォルグは躱せない・・・。


 自分には出来ないのではないか・・・という劣等感がヴォルグには生まれる。だが、ロムはそんな劣等感に構わずに再び拳を放つ。またも躱せない・・・。


 ロムは再び放つ。


 ・・・あ?


 ロムの拳が寸止めされる前にヴォルグは躱していた。


 それを見て、ロムはまたもニコリとほほえみ。


「これで、もう出来るようになりましたよ」

「でも、1回だけでは・・・」

「そんなことはありませんよ。1回出来たのですからもう出来るようになっているのですよ」


 人間は今まで出来なかった事も練習に練習を重ねていけば出来るようになる瞬間が必ずやってくるようになっている。一度泳げるようになれば、ずっと泳げるようになるのと同じ理屈である。


「あなた方は出来るようになったのですから、次も出来るようになったのです」

「「はい!!」」

「後の二人もすぐに出来るようになるでしょうね。いえ、もう出来るようになっているでしょうね」


 ロムの声には四人の成長を喜ぶ声があった。




 実際に、ウォルターとヴィアンカも時を置かずして躱せるようになった。


 四人の弟子達は、確実に成長しているようだ。


 四人の弟子の修行です。アレンの弟子というよりもロムの弟子といった方がしっくりきますね。

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