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挨拶②

「えっと…アレンさん、みなさん…この間は何か父が迷惑かけたそうで…」


 席に着いたジュセルはまず、謝罪をする。


 ジュセルは父エルヴィンから、この間の事の顛末を聞いたとき、頭を抱えたものであった。しかも自分が作った術式が原因だったために責任を感じていたのだ。


「ああ、いや、いつものイタズラから考えれば前回のはかなり被害が少なかった」


 アレンの言葉にジュセルはほっと胸をなで下ろす。


「とんでもないわ!! エルヴィンさんのおかげで良い思いが出来たわ」

「私も結果的に、良い思いが出来たから何の問題もないわ」

「私も思いがけない恩恵を受けれましたから、何の文句もありません」


 ところが、フィアーネ達の言葉にジュセルは困惑する。


(親父が…感謝されている…だと?)


 ジュセルは父エルヴィンが感謝の言葉を向けられていることに対して驚愕しており、戸惑っていたのだ。


「あの…婚約者の方々は、なぜ親父に感謝を?」


 ジュセルの言葉にフィアーネは立ち上がり両手を腰にあてて言う。


「ふっふふ~なんと私達はエルヴィンさんのおかげで、アレンに抱きしめられ、額にキスされて、耳元で愛を囁かれたのよ!!」


 凄まじいばかりのドヤ顔だ。『どうだ!!羨ましいだろう!!』と言わんばかりの言葉であるが、あいにく男のジュセルにはアレンに抱きしめられ喜ぶような趣味はないのでまったく共感できない。


「は、はぁ…」


 曖昧な表情を浮かべてようやくそれだけを返答する。ただ婚約者の方々がアレンを好きなのは十分に伝わったのでそれはそれで嬉しかったのだ。


 ジュセルはちらりとアレンを見ると、アレンは少しばかり頬に赤みが差している。どうやらフィアーネの宣言にアレンは照れているらしい。


「う、うん…とにかく途中経過は省くがフィアーネ達がエルヴィンさんに感謝しているのはそういう背景がある」

「なるほど」


 アレンの動揺に少しばかりジュセルは驚く。自分の知っているアレンは基本、この程度の事で動揺するような人間ではなかったはずだが、婚約者が出来て少しばかり心境の変化があったという事だろうかという疑問が生まれていた。


「そういえば…前回エルヴィンさんがつかった遠隔操作していたっていう人形の事なんだがあれジュセルは作れるか?」


 アレンの言葉にジュセルは頷く。


「ええ、大丈夫ですよ。5~6日あれば作れますから」

「作れる? あの人形はひょっとして、ジュセルが作ったのか?」


 ジュセルの言葉にアレンが驚きの声をあげる。フィアーネ達も驚いたようだ。


「はい、俺は術式を組み立てるのが好きでして、あの人形に施されている術式も複雑そうに見えるかも知れませんが、実は基礎魔術を組み合わせただけですからそんな高度な術式じゃないんですよ」


 ジュセルの言葉にアレン達は驚く。高度な術式ではないと言っているが、カタリナが感動していたところをみると相当な高度な術式である事は間違いない。ジュセルの基準が高い事を想定しなければいけないのだろう。


「そうか、それじゃあジュセル…あの人形を4体作ってくれるか。きちんと金は払うからな」


 アレンの言葉にジュセルは快諾する。


「それは良いですけど、金は必要経費で結構です。まだ試作段階なのでそんなに高い値段は貰えません」

「一体当たりどれくらいだ?」

「そうですね…一体当たり銀貨5枚という所なので…金貨2枚といったところですね」

「それぐらいならすぐにでも出せるから出来上がり次第、納品してくれ」

「わかりました」


 あっさりと商談は成立する。元々、ジュセルとすればアレンに協力に来たのだから、金銭を受け取るつもりはなかったのだが、アレンとすればただ働きさせるのは、嫌だったのだ。


「あ、そうそう、親父から聞いてると思いますが、今度テルノヴィス学園に通うことになったんです」

「ああ、そう聞いてる。なんか済まないな」

「いえ、それは良いんです」


 アレンの済まなさそうな声と表情にジュセルは慌てて言う。実際にアレンは何も悪くない、悪いには父エルヴィンという思いだったのだ。


「報いは親父にぶつけますからね。それで聞きたいのはですね」

「うん」

「テルノヴィス学園ってほら貴族専用じゃないですか」

「ああ」

「どんな事を習うんですか?」


 ジュセルの言葉にアレンは考え込む。それなりに高度な事を教えているとは思うが、実の所、専門の学校より一つ落ちるとアレンは考えていたのだ。あの学園に通う最大の目的は人脈作りが第一だ。


「そうだな剣術、魔術、外交術、政治学、歴史、礼儀作法…とかだな」

「そうですか…剣術…外交術、礼儀作法は修めていないからまったく無駄にはならないな…」


 アレンの答えにジュセルはほっとした表情を浮かべる。すでに父エルヴィンから多くの事を教わっており学園に通う必要性が感じられなかったジュセルとすれば無駄にならないだけでもほっとする気分だった。


「ただ、お前のレベルを考えれば稚拙だと思うぞ」


 アレンの言葉にジュセルは苦笑する。


「アレンさん、買いかぶりですよ。俺は世間知らずの子どもに過ぎません。それに戦闘だってアレンさんとアルフィス様がいる以上、俺に出番があるとは思えませんよ」


 ジュセルの言葉に今度はアレンが苦笑する。どう考えてもジュセルの言葉はアレン達に対しては過大評価だし、自分の事については過小評価としか思えなかったのだ。


「ねぇ、アレン」


 フィアーネが口を挟む。


「どうした?」

「このジュセル君はアレンが評価しているから間違いなく強いんだろうけど、どれくらい強いの?」

「そうだな…デスナイトなら…間違いなく斃せるし…だめか比較対象が弱すぎる…爵位持ちの魔族…もだめだな…」

「アレンさん、ちょっと良いですか?」


 悩むアレンにジュセルが口を挟む。ジュセルの言葉に全員の視線が集中する。


「言葉では伝わらないでしょうから、俺を今夜の見回りに混ぜてもらって良いですか?」


 ジュセルの言葉にアレン達は顔を見合わせる。


「それは心強いから嬉しいんだが、学園の準備とか良いのか?」

「はい、俺の準備なんて大したもんじゃないですよ。入寮は明日からなので、明日の昼までにテルノヴィス学園に行けば問題ありませんよ」

「そうか、それじゃあよろしく頼む」

「はい」


 話がまとまった所で、アレン達はこちらに向け駆けてくる一人の気配を感じていた。その気配がサロンの扉を勢いよく開けた。


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