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勇者Ⅱ⑧

「アレン!! 手合わせを頼む!!」


 国営墓地の見回りを終え、門を出た所でリュークはアレンに頼み込んだ。周囲にいたフィアーネ、レミア、フィリシア、カタリナは「何事?」という表情を浮かべ、アレンとリュークを見ている。


 今晩の国営墓地の見回りには約束通りにリュークも参加したのだが、アレン達が淡々とアンデッド達を斃していく様を見てすっかり興奮した様子で、アレン達にアンデッドの事、戦い方についてどんどん質問していた。


 そのため、いつの間にかアレン達とリュークは打ち解けるようになったのだ。特にアレンとリュークはいつの間にか「アレン」「リューク」と呼び捨てで呼び合い、いつの間にか友人同士の口調となっていた。


「ああ、もちろんだ」


 アレンもリュークの戦いぶりを見て、ランゴルギアの戦い方に興味を持ったのか快諾した。アレンは敵対者には一切容赦はしないが、それ以外の者には基本優しいのだ。そして、友人に対しては熱い男になるのだ。


「だが、リューク、俺もお前も一応立場のある身だから、立会人を頼むつもりだからそれまで少し待ってくれるか?」

「もちろんだ。よろしく頼む!!」


 アレンの言葉にリュークは快諾する。


 その様子を女性陣は困惑の表情を浮かべて見守っていた。




---------------------


 翌日…


 立会人と場所が決定された。リュークは立会人の名を聞いたときには、さすがに顔を引きつらせる。立会人の名は『アルフィス=ユーノ=ローエン』、アレンの親友であり、ローエンシア王国の王太子でもある。


 立会人はそれなりの人物が来るかも知れないと思っていたのだが、想像以上の大物が来た事にリュークが困惑したのを責めるのは酷というものだ。


「なぁ…アレン、本当に王太子殿下が俺達の立会人になってくれるのか?」

「ああ、アルフィスに伝えたら二つ返事だったぞ。学園の休みは3日後だから、それまでに仕事は終わらせるとか言ってた」

「…この国の王太子様ってひょっとしてちょっと変わってる?」

「ああ、それは否定しない」


 リュークの言葉にアレンは少し遠い目をして言う。でも考えてみればアレン自身も立会人を王太子に頼むあたり十分に規格外と思って差し支えないだろう。


「場所はアインベルク家の修練場だ。時間は午前中には来ておいてくれ」

「わかった」


 場所と時間を聞き、リュークは頷く。リュークからすれば王都に土地勘が全くないために立ち会いの場所に不服など持ちようもなかったのである。


 場所と時間が決まったことで、リュークはそのまま戦いの準備をすることにする。


(実力はアレンが圧倒的に上…という事は無策で挑むわけにはいかないな)


 リュークは国営墓地でのアレン達の戦いぶりを見て、自分よりも圧倒的に実力が上であることをわかっていた。そして立ち会うことが決まった以上、それに備えるのは当然の事だ。


(リュークは強い…こちらは3日間で備えなければ…)


 一方でアレンもリュークの戦いぶりを見て、決して侮ってはいけない相手である事を理解していた。元々、戦いにおいて油断とは無縁のアレンである以上、当然の思考回路である。


 リュークがアレンの考えを知ったならば『止めてくれ』と思った事だろうが、幸いなのか不幸なのかアレンがそう考えていることはリュークには伝わっていない。


 リュークは3日後にアレンとの立ち会いが決定すると準備をするためにそのまま、アインベルク邸を後にする。



---------------------


 3日後、アインベルク邸を訪れたリュークは、ロムにサロンに通される。


 サロンにはアレン、フィアーネ、レミア、フィリシア、アディラ、カタリナがすでに席に着いて歓談している。


 リュークは初対面の少女がいることに首を傾げる。


(しかし、このサロンの美形率は異常だな…)


 リュークは初対面の少女も正統派の美少女であることにそう思ってしまう。


「初めまして勇者様、私はアレン様の婚約者のアディラ=フィン=ローエンと申します」


 リュークは名乗った少女がローエンシアの王女である事にさほど驚かない。この場にいるのはアレンの関係者ばかりであり、アレンの婚約者の中でまだ出会っていないのは、王女のアディラだけだったからだ。そうなれば、この少女がアディラである事は普通に予測出来た事だ。


「初めまして、リューク=バラン=リーディンです」


 アディラにリュークも名乗る。


「アレン、ここに王女殿下が来ていると言う事は、さっそく手合わせか?」


 リュークの言葉にアレンは首を横に振る。


「いや、まだ立会人のアルフィスが来ていない。アディラの話だと午後からになるそうだ」「そうか」

「そういうわけだからしばらくノンビリしててくれ」

「ああ、わかった」


 アレンの言葉にリュークは頷く。


 それから、アレン達はサロンでアルフィスが来訪するまでまったり過ごすことになったのである。


 そして、アルフィスが4人の近衛騎士達を連れてやって来た。アルフィスの連れてきた近衛騎士達はウォルター、ヴォルグ、ロバート、そしてヴィアンカである。


 立ち会いの時間が来たために全員が修練場へ移動する。


 移動の途中でヴィアンカがリュークに話しかける。


「リューク…アレン先生は本当に強いわ。勝算はあるの?」


 ヴィアンカの声には不安が含まれている。アレンの実力をしるヴィアンカとしてはリュークの行動が無謀のように思えたのだ。


「ああ、もちろんだ。この3日間…遊んでいたわけじゃないさ。勝算は十分にある」


 リュークの言葉にヴィアンカは心配そうにリュークを見た。


(わかってるさ…まともに戦えば勝算は皆無だ。だからこそ、俺は準備をしてきたんだ)


 リュークは決意に満ちた目でアレンの後ろ姿を見つめていた。



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