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隠者⑤

 『下手を売った』


 この言葉にフィアーネ達は首を傾げる。分断され危機に陥ったのはこちらのはずなのにアレンとアルフィスのこの余裕に首を傾げざるをえない。


「アレンどういうこと?」


 フィアーネはアレンにもっともな疑問を呈する。


「いやな…今俺達から分断されたレミア、フィリシア、アディラを考えて見ろ」

「え?」


 アレンの返答にフィアーネだけでなくカタリナ、メリッサ、エレナも考える。


「レミアは転移魔術を使える。そして拠点はこの国営墓地に張り巡らしている」

「うん」


 アレンの言葉に全員が頷く。確かにレミアは転移魔術の使い手であり、その気になればいつでも国営墓地のどこにでも転移することが出来る。


「フィリシアは呪術を修めているだろう?」


 アレンの言葉にこれまた全員が頷く。魔剣セティスの調伏のために呪術を修めていた事は周知の事だった。


「フィリシアの呪術は遠距離から魔力を辿り対象者を呪うことが出来る」

「「「「え!!」」」」


 アレンからの情報にアルフィス以外の全員が驚く。フィリシアの呪術がそこまでのものであることは彼女たちも知らなかったのだ。


「しかも、その呪力は並の呪術師では1000人いても足下にも及ばない。いくら隠者ハーミットといえどもフィリシアの呪術を避けることは不可能だ」


 女性陣がゴクリと喉を鳴らす。あの清楚な容姿であるフィリシアがそこまでの呪力を有していることに驚きを隠せなかったのだ。


「そして、アディラだ」


 アレンはアディラについて言及する。


「アディラの弓の腕前はもはや神業としか思えないだろ?」


 アレンの言葉に全員が頷く。こと弓に関する事でアディラに勝る者はこの場に異にと断言できる。アレンもアルフィスも弓は一応使えるがアディラの腕前に比べれば、比較されるのですら恥ずかしいレベルだ。


「そのアディラの弓がいつどこから放たれるか…」


 アレンの言葉に今度は全員がゴクリと喉を鳴らす。アレンの言わんとする事が分かったのだろう。


「確かに…あの三人が私達から離れた事は不利になった事を意味しないわね」


 フィアーネの言葉に実の所アレンは内心ほくそ笑んでた。


(いいぞ、フィアーネ…もっと、納得の言葉を言うんだ)


 アレンの内心を察したのだろうか、カタリナもフィアーネの言葉に乗っかる。


「むしろ隠者ハーミットの方が不利になったんじゃない?」


 カタリナの言葉にアレンはニヤリと嗤う。


(カタリナ、お前素晴らしすぎる!!)


「ああ、いつどこにでも転移できるレミア、遠距離のエキスパートのフィリシアとアディラ…、隠者ハーミットは同時にいくつも気に掛ける必要が出てきたというわけだ。俺達はそこにつけ込む」


 アレンの言葉に全員が頷く。


「いずれにせよ。まずは隠者ハーミットを見つける事にしよう」

「ああ」

「わかったわ」

「そうね」

「「分かりました」」


 アレンの言葉に全員が返答するとアレン達は墓地の中心地に向かった。だが、フィアーネはその表情に少しばかり納得のいかないものが浮かんでいた。






「ここって墓地の反対側ね」


 レミアの声にフィリシアが頷く。アディラは弓に矢をつがえ周囲を警戒しておりレミアの言葉に反応するのが少し遅れるが頷く。


「さて…これはやはりしてやられたと見るべきかしら?」


 レミアは悔しさを滲ませた声で言う。


「まぁ…確かにしてやられたと言って良いでしょうけど…やられっぱなしと言うわけには行きませんね」


 フィリシアの言葉にも悔しさが少量ながら滲んでいる。


「それはともかくとして…」


 アディラの言葉にレミアもフィリシアも視線を移す。


「どうしたの?」


 レミアがアディラに尋ねる。


「今夜はまったくアンデッドに出くわさないなと思って」


 アディラの言葉にレミアとフィリシアも『そういえば』という顔をする。


「確かにそうね…ひょっとして隠者ハーミットが予め片付けたのかしら?」

「もし、そうなら、その隠者ハーミットはわざわざアンデッドを片付けてから罠を仕掛けたと言う事になりますね…」

「「……」」


 フィリシアの言葉にアディラ、レミアは黙り込む。わざわざ自分がアレン達をからかうために今夜のアンデッドを始末したという事なら隠者ハーミットは、とんでもなく行動力のある愉快犯という事になる。


「とりあえず…アレン達と合流しましょうか」


 レミアの言葉にフィリシアが待ったをかける。


「待ってレミア」

「何?」

「ここは別行動をとりましょう」

「え?」


 分断された時にはできるだけ早く合流した方が良いのだが、フィリシアがあえてそのセオリーを無視しようというのだ。


隠者ハーミットの目的はアレンさんと王太子殿下をからかう事だと思うのよ」


 フィリシアが持論を展開し始めるとアディラとレミアは黙って耳を傾ける。


「言い換えれば隠者ハーミットは決して私達の命を奪うことが目的じゃないのよ」

「そうか…」

「そういうことね」

「ええ、命の危険性が無い以上、少々セオリーを破っても問題ないわ。いっその事、私達でその隠者ハーミットを捕まえちゃわない?」


 フィリシアの言葉にアディラとレミアは頷く。


「おやおや…怖いお嬢さん方だな」


 突如掛けられた言葉に三人は振り返る。


 そこには一人の男が立っていた。



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