表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/602

仮面④

「フィアーネ、レミア、フィリシアは不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)をやってくれ」


 アレンの言葉に三人は頷く。


「アルフィスは当初の予定通り俺と一緒に仮面だ。アディラとカタリナはそれぞれを支援してくれ」


 アレンの言葉にまたも三人は頷く。メリッサとエレナはアレンではなくアディラの護衛なので自分達でよりよい行動をとるだろう。アレンは指示を出して良い人かそうでないかの区別を自分なりに付けていたのだ。


 アディラは先程投げ捨てた弓を拾うと矢をつがえる。


 メリッサとエレナはアディラの背後と右隣につく。


 アディラは矢をつがえると仮面に放つ。流麗な動きから放たれる矢は真っ直ぐに仮面に向かう。


 矢が放たれると同時にアレンは仮面に向けて走り出す。そして同時にフィアーネ達も不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)に向け走り出した。


 先程、アディラの【爆発エクスプロージョン】で吹き飛ばした左腕はすでに再生している。また斬り裂かれた左目からも出血が止まっているところから再生したと思われる。


 吹き飛ばされた腕はニョキニョキと生えてきた。どうやら仮面の再生能力は欠損であっても修復可能という中々厄介な能力である事がわかった。


 アレンは間合いを詰めながら仮面の能力を分析する。


 巨大な剣を持ち敵を斬り伏せるパワーファイター…だが、豪快ではあるが繊細さに欠ける。


 再生能力があり欠損であっても修復できるというかなりやっかいな代物…


 そして、転移魔術によりこちらの背後に回り込む事が出来る…


 アレンは仮面の特徴についてどれにつけいる隙があるかを考えると、意外な事に気付く…。


(あれ?こいつの特徴って付けいる隙ばかりじゃないか?)


 アレンはその事に気付いた時に口元から嗤いしか出てこない。アルフィスもその事に気付いているのだろう。アレンと一緒に仮面に突っ込んでいないことが何よりの証拠だ。


(となると…俺が苦労するって役回りか…)


 アディラの放った矢が仮面の剣によりはたき落とされるのを見たときにアレンは剣を振るう。







 フィアーネ、レミア、フィリシアは不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)に向けて駆け出す。このような騎乗型のアンデッドはとにかく機動力を殺す事が寛容なのだ。


 フィアーネは走りながらボーラと呼ばれる狩猟用の道具を投擲する。これは紐の両端に重りをつけ周りながら獲物に向かい足を取るという狩猟道具だ。


 フィアーネは不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)が走り出す前にシスメルの形をした瘴気の塊の足下を狙って投擲したのだ。不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)はフィアーネの投擲したボーラを横に跳んで躱す。


 ところが不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)のシスメルが地面に着地した瞬間にシスメルが暴れ出す。アンデッドであるシスメルに痛覚はないため痛みによるものではない。


(よし!!かかった!!)


 フィアーネ達はニヤリと嗤うと不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)の駆除に入る。


 シスメルの後ろ足を土で出来た手が掴んでいたのだ。もちろんカタリナの土人形ゴーレムであり、先程リッチを斃したときに暴食の魚群(グラトニーフィッシュ)を召喚したが土人形ゴーレムも同時に召喚しており地中に潜ませていたのだ。


 フィアーネ達はそれを察し、不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)の機動力を封じるためにシスメルの足を掴んでもらう事にしたのである。


 実の所、仮面の足を取るつもりだったのだが、転移しアディラに向かって事で実現しなかったのだが結果として不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)を出し抜く結果となった。


「二人ともまずは私が!!」


 フィリシアは剣を一閃し、シスメルの首を斬り飛ばした。斬り飛ばされたシスメルの首は地面に落ちる僅かの間に塵となって消え失せる。騎乗している竜騎兵ドラグーンはフィリシアに視線を移すと背後から突き殺そうと槍を突こうとする。


 だが、それよりも早くレミアの双剣が竜騎兵ドラグーンの首を刎ね飛ばし、同時にシスメルの心臓部分にもう一方の剣を突き立てる。


 シスメルの心臓部分に核があったのだろう。シスメルは瘴気の体を維持することは出来ずに塵となり消滅しあとにはシスメルの骨格だけが残される。


 残りの竜騎兵の心臓部分にフィアーネの投擲した鎖が突き刺さった。この鎖の先端には刃渡り20㎝弱の刃が付けられておりその部分が竜騎兵の心臓部分にある核を貫いたのだ。


 核を貫かれた竜騎兵も瘴気を維持することは出来ずに塵となって消え失せる。



「ふぅ…」


 アレン達と仮面との戦いを確認しようとフィアーネ達は振り向くとそこには仮面が腰の位置から真っ二つにされ転がった上半身にアレンが剣を突き立てているというかなりシュールな場面だった。


 フィアーネ達が不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)を斃している間にこちらも決着が付いていたのだ。





 アレンは仮面に向かって剣を上段から一気に振り下ろす。仮面は剣を横にしてアレンの斬撃を受け止めるとアレンと鍔迫り合いを展開した。


 すると仮面はふっと煙のように消える。転移魔術を展開したのだろう。


 アレンは今回はカタリナの方と思っていたが、振り向くと案の定だった。転移によりカタリナの背後に回り込んだ仮面が剣を振り上げている姿がアレンの目に写る。


 だが、アレンはまったく慌てていない。対処するのは自分でない事を認識していたからだ。


 そう、動いたのはアルフィスだった。


 アルフィスは一瞬で間合いを詰めると剣を横薙ぎに振るい仮面の腰から体を両断する。腰から両断された仮面はそのまま地面に落下した。


「よっ…」

 

 アレンは地面に落ちた仮面の心臓の位置に剣を突き立てた。


 アレンが心臓の位置に剣を突き立てた瞬間にアルフィスは倒れ込む仮面の頭部に正拳突きを叩き込む。アルフィスの拳は仮面を打った瞬間に素早く引いている。この打ち方だと衝撃が内面に入っていくのだ。


 アレンの心臓に突き刺した剣とアルフィスの頭部を突き抜けた拳の一撃により仮面は意識を手放す。


 そして、仮面はそのまま動くことはなくなったのだ。


 あまりにも呆気ない幕切れにアレンとアルフィス以外の者は呆然としていた。そして次の瞬間にはさらに驚くべき事態となる。


 仮面の体が崩壊し始めたのだ。まるで砂が崩れ去るように仮面の体は塵となり消え去っていく。ひょっとして仮面の男など存在していなかったのではないかという思いすら生まれるほどの儚さだった。


 だが、体が崩壊し塵となって消え失せた仮面の男であったが、あとに残った仮面がその存在の証拠となったのだ。


「う~ん…失敗したな」

「そうだな」


 アレンの言葉にアルフィスも同意を示す。アレンは仮面の男の死体だけでも持ち帰り何者かを調査するつもりだったのに体が消滅してしまってはもはや調べようがなかったのだ。


「ねぇ…」


 カタリナがアレンとアルフィスに話しかける。


「どうした?」

「あ、あの、とりあえず助けてくれてありがとう。でも疑問があるから聞いて良い?」


 カタリナのお礼の後に疑問を二人に聞いてきた。


「ああ、いいぞ」


 アレンはにこやかに答える。


「どうして仮面が私の後ろに転移した時にすぐに行動が出来たの?」


 もっともな疑問である。アルフィスは仮面が転移した瞬間にはすでに仮面に斬り込んでいたのだ。いくら何でも反応が早すぎるように思えたのだ。


「ああ、仮面はさ…転移するときに背後ばかりとってたろ…」

「うん」

「まずは俺、だけど俺はすぐに対処しただろ」

「うん」

「そして次はアディラ、だけどアディラも仮面の術にすぐに対処したな」

「うん」

「この段階で仮面は一対一の戦いでなく多対一の戦いのつもりだと言うことがわかった。ところが仮面の武器は剣であり、言わば近接戦闘特化だ」

「…」


 アレンの説明にカタリナだけでなくアディラ達もいつのまにか集まってきている。


「となると次に狙うのはカタリナと思ったんだ」

「なんで?」

「ああ、剣での間合いになればアディラの弓やカタリナのような魔術師なら簡単に斃せると考えてもそんなに不思議じゃない」

「なるほど…」

「しかも、カタリナは不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)の足をとるために意識をそこに向けていたから隙を突こうとすればカタリナから狙うと思ったんだ」


 アレンの言葉にアルフィスが同意する。


「まぁ、消去法でカタリナが狙われる可能性が一番高かったから仮面が転移した瞬間に動き出したんだよ」


 アルフィスの言葉を全員が黙って聞いている。


「もちろん少しずつカタリナとの距離を詰めて行ってたんだけど気付かなかった?」


 アルフィスの言葉にアレンも言葉を発する。


「俺はアルフィスが一緒に仮面に突っ込まなかったから、転移した瞬間をやるつもりだと言うことはすぐに分かったな」

「まぁお前なら気付くと思ってたさ。あんなに大げさに斬撃を繰り出しやがって笑い出しそうだったぞ」


 アレンとアルフィスの会話を全員が静かに聞いていた。


「でも、アレン様、お兄様、どうして仮面は再生しなかったんです?」


 アディラがもう一つの疑問を呈する。


 仮面は先程から傷を負わせても再生していたのに今回は再生もせずにそのまま息絶えたのがアディラには不思議だったのだ。


「ああ、考えられることは二つだ」

「二つ?」

「ああ、一つはすでに魔力が枯渇していて再生させることが出来なかった。もう一つは再生能力を発動する前に俺とアルフィスが仮面を殺した」


 思った以上に脳筋な話に全員が絶句する。


「まぁ、俺は『発動させる前に殺された』という方だと思うな」


 アルフィスが言う。


「どうしてです?」

「いや、あいつさ、腕を吹っ飛ばされてしばらくして再生を始めてたからさ。怪我を負ってから再生するまでに少々時間がかかると思ったんだ。ということは自分の意思で再生能力を発動させている可能性があるんだからさ。意識を刈り取ってしまえばそのまま死ぬと考えたわけだ」


 アディラの疑問にアルフィスはあっさりと答える。


 結局の所、仮面の能力は一見厄介そうに見えてもいくらでも付けいる隙があったのだ。転移魔術による背後をとるというのはそう何度もやるようなものではないのだ。特殊な能力は嵌まれば素晴らしい効果を発揮するが、対処法を考えつかれてはただのカモでしかないのだ。

 仮面は転移魔術をした際に常に背後をとってきた。と言うことは誰かの背後に回るのは想定しておくべき事だった。アレンは武器による相性でカタリナを考えたが、アルフィスは激しく動いていない者の背後を仮面はとろうとしたと考えてカタリナを気にかけていたのだ。


「う~ん…結局のところこの仮面の男ってなんだったのかしら?」


 フィアーネが疑問を口にする。


「さぁ、ま、面倒な相手だったけどみんな怪我がなくて何よりだ」


 アレンがあっさりというと他のメンバー達も苦笑する。アレン達ならばこそ無傷で退けることが出来たのだが他のものではこう簡単にいかないだろう。


「じゃあ、見回りを続けようか」


 アレンの言葉に全員が頷くと墓地の見回りを当たり前のようにアレン一行は続けることにする。アレン達にとって仮面の男など日常的な一コマに過ぎないのだ。


 アレン達はいつものように墓地の見回りを続けるのであった。

 結局、「仮面は何なのか?」と思うかも知れませんがそのうち出てきますので、今はこれだけで…。


 まぁ予想はついていると思いますがそこは触れないでください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ